簡単に手に入るものはすぐに出ていく
(C)「ラブ&ピース」製作委員会
未練や執着という言葉では片付けられない大事なことが人生にはあります。Lightly come, lightly go.ということわざがあるくらいで、安易に手に入るものは手放すのも簡単。なかなか手に入らない、でもあきらめきれないから価値がある……人生には簡単に捨てられないものがあるはず。
園子温監督のオリジナル最新作『ラブ&ピース』の舞台は2015年夏の東京。サラリーマン・鈴木良一(長谷川博己)はデパートの屋上で一匹のミドリガメと目が合い、運命的なものを感じます。
あきらめたロックミュージシャンへの道、まともに話せないけれど恋心を抱く寺島裕子(麻生久美子)への想い。彼の人生を取り戻すのに必要な最後の“かけら(ピース)”、それがミドリガメだったのです。ピカドンと名付けたミドリガメとの出会いが良一の転機となり、彼の人生は怒濤の展開を見せます。
物語の鍵を握るのは地下世界でおもちゃや動物と暮らす謎の老人(西田敏行)。良一、裕子、ピカドン、謎の老人、おもちゃたちが愛を奪い返そうとしたとき、巨大な怪獣「LOVE」が東京に姿を現すのですが……。
愛と人生を取り戻すために必要なこと
崩壊する東京の街に出現したのは、愛を背負ったかわいい怪獣。どんな話? と想像できないかもしれませんが、今までに見たことのないような、感じたことのないクライマックスが待ち受けています。大人のための甘さ控えめ、ほろ苦いおとぎ話。私はこの作品を観て改めて考えました。人生をリセットする、片付けの基本は捨てることですが、ただ捨てただけで幸せにはなれないと。大量のものに囲まれているのが豊かなことではないように、簡単に手放せる、あきらめがいいことを幸せだとは言いません。
良一は会社でぞんざいに扱われている存在ですが、周囲の人たちが笑っていても、裕子は彼の失敗を笑いません。片付け本の通りに捨てることで部屋や身の回りはスッキリしますが、自分の人生を他人の判断に任せて捨てたり、あきらめても幸せにはなれないはず。
(C)「ラブ&ピース」製作委員会