南の字から音楽のイメージは浮かばない
Q. ある本に、音楽をイメージする名前として「みなみ」が挙がっていました。でも漢字を見ても音楽が連想できず、音楽と「みなみ」が結びつきません。なぜ「みなみ」という候補があるのでしょうか?A. 「南」という字は中国の音階の名に入っている字ですので、音楽に関係はあります。とはいえ、音、歌、響、琴、笙、鈴などの字ならいかにも音楽のイメージはありますが、音階の名というのは一般に知られていません。南の字を名前に入れても他人が音楽を連想することはないでしょう。
中国の音階は呼び方が難しい
私たちは音をあらわす言葉は、ド、レ、ミ……という言い方しか知りませんが、中国では古くから音階をあらわす難しい言葉が何種類もあります。その一つが「漢代の十二律」と呼ばれる、十二種類の言葉です。その十二種類の中には、人の名前に使えそうな漢字を含んでいる言葉があります。それを洋楽名と対比させてみますと、次のようなものです。変イ:大呂(たいりょ)
ニ:林鐘(りんしょう)=雅楽では平調(ひょうじょう)と呼ぶ
ホ:南呂(なんりょ)
変ホ:夷則(いそく)
これはよほど音楽に興味がないかぎり、私たちにはほとんど縁のない難しい言葉です。ただ、これらの音階の中にある「大」「呂」「林」「南」「則」「平」などの字は、人の名前にも使われます。これらの字を含む名前は、音楽に関係のある名前だ、と言っても間違いではないわけです。
とはいえ、こうした音階の名を知る人は少ないですから、これらの字を入れた名前、たとえば大貴、南美、航平、などの名前を見ても、「音楽に関係する名前だ」と思ってくれる人はまずいないでしょう。あくまで自分だけで納得するという、自己満足の範囲の話にはなってしまいます。
南の字は楽器という説もある
南のもとの絵は謎
ただ、象形文字が間違いなく楽器である、とは断定できません。ほかに建物を描いた絵だという説もありますが、それもまた疑問です。建物なら屋根は壁の外側に描くはずです。
南のもとの絵は容器と考えると、つじつまは合います。そして南は「いっぱいにつめる」という意味をもち、「日光が密度濃く来る方向」の意味で使われてきました。喃(口ごもりながらしゃべる)といった字も作られています。木をつけた楠という字も、「いっぱいに香る木」という意味ではないかと思われます。