肥満・メタボリックシンドローム

「ミラクルフード」に"効果"はあるのか…キヌア、チアシードなど

【管理栄養士が解説】キヌア、チアシード、ココナッツオイルなどを始めとする「ミラクルフード」。口コミや広告では「やせる」「腹持ちがよくダイエットに最適」「必要な栄養素がまかなえる」といった言葉も見られます。これらの話題の食品の効果と注意点、実際に効果が見込めるダイエット法と健康法について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

「○○だけを食べていれば健康になれる」は、疑え

スーパーフード

最近よく聞く「ミラクルフード」。ひとつの食材だけで本当に効果があるの? と思った人も多いはず。真相を探ります。


キヌア、チアシード、ココナッツオイルなどのいわゆる「ミラクルフード」。「世界的なセレブが愛用している」「ダイエット効果が高い」といった口コミで話題になり、一般的にも買いやすくなった食材だと思います。

では、実際にこれらの「ミラクルフード」は実際に健康効果が高い食材なのでしょうか? この質問に正確に回答するのはなかなか困難です。

しかし、もし食べるべきかどうか迷っているならば、「○○だけを食べていれば健康になれる」といった宣伝文句は疑うべきという点は押さえておくのがよいでしょう。

一つの食材だけを摂っていれば健康でいられ、美しい体型を保てるのだとしたら、どうして人間は雑食の道を選んだのでしょうか? 単一の食材だけを食べるより色々なものを食べた方が健康で長生きできるからですよね。

同じように疑うべきは「○○を食べれば血糖値が下がる」といった健康食品です。本当に血糖値が下がる高い効果があるのであれば、薬として医師が処方しているはずでしょう。血糖値を下げる効果がしっかりと証明されているものであれば、現代の医療が見過ごすはずがありません。

ただし、医療現場などで健康やダイエットのためにこれらを食べていると聞いても、わざわざ「食べないでください」とは言わない事例もあります。すでにこういった食材を愛用していて、食べることで実際に患者さんの気持ちが落ち着くという場合です。「プラセボ効果」と言って、効果のない薬でも「薬を飲んでいる」ことで心が落ち着き、症状が改善される場合があることは実験でも証明されています。

とはいえ、冒頭に挙げたようなミラクルフードは、いずれも決して安価ではありません。実際問題として、日常的にこれらばかりを食べ続けるのも飽きてしまうという問題もあるでしょう。味が好みであればたまに食べるのはいいと思いますが、食品に対して何らかの強い効果があると真剣に信じて、極端に食べ続けることは止めた方が無難だと思います。

それにしても、ミラクルフードの宣伝文句は魅力的です。体験談や口コミなどが掲載されていれば「私もこの方法で……!」と思う気持ちも分かります。特に挫折する人が多いダイエットや、治療が難しい病気などでは、「これを食べれば本当に奇跡が起こるかもしれない……!」と信じたい気持ちは痛いほど承知しています。ですが、残念ながら単一の食材だけで奇跡は起きるはずはないのです。
 

ダイエットも病気治療も……奇跡を目指すときでも「急げば回れ」が基本

単一の食材では奇跡は起きませんが、ダイエットでも病気治療でも、奇跡を起こす方法は1つだけ挙げられます。
バランスの取れた食事

もはや聞くのも飽き飽きしているかもしれませんが……いちばんの近道なのです。


耳タコで残念に思うかもしれませんが、もしダイエットしたいのであればバランスのとれた食事をしっかり食べ、適度に運動をするなどして、身体に負担をかけない生活を送ること。そして糖尿病・脂質異常などの治療効果を高めたいのであれば、医師の指示に従って食事や運動、薬の服用などをきちんと守ることです。

生活習慣の乱れを改善することで、身体だけでなく、心やお金の問題も改善できることは少なくありません。生活習慣の乱れを改善することは、最もお金のかからない手軽な方法ですが、あまりに身近すぎるため、改めて見直してみようと思うことも少ないようです。

しかし、それは本当にもったいない。ささいなことが1年後、10年後に大きな差となって現れるのですから。
 

ミラクルフードに頼らない! 基本の生活習慣改善法

健康的な食生活のコツは、目的や性別・年齢などによって様々ですが、ダイエットのための基本的な食事法として、見直すべきポイントは3つだけです。「タイミング」「質」「量」。ここに挙げた順に見直していくと上手くいきやすいです。

まずは「タイミング」。これは食べる時間です。食事の時間がバラバラであったり、夜遅い時間であったりと、ダイエットには不向きな食生活を送っている人が散見されます。はじめに、現在実際に行っている24時間のスケジュールを書いてみてください。シフト勤務の人はシフトの数だけスケジュールを書いてみましょう。面倒だとは思いますが、シフト勤務の人こそ、ここで手をぬいてはいけません。24時間のスケジュールを書き出したら、できるだけ食事のタイミングが一定になるように、かつ可能な限り寝る直前にならないように食事の時間を決めていきましょう。

そんなことはムダだと思われるかもしれませんが、患者様と一緒にやってみると、意外と食事を摂るためにちょうどいいタイミングが出てくるのです。この調整をするだけで痩せ始める方もいます。

次に「質」です。日本人の体質に合った食事は「定食」。「主食(ご飯、麺、パン)」「主菜(肉、魚、卵、豆腐)」「副菜(野菜、きのこ類、海藻)」の3皿が揃っていることが重要です。この3種類が揃っているかどうかを常に意識することが、すなわち「質」を考えるということになります。

最後に「量」ですが、これは個々人によって異なります。ただし、主食・主菜で満腹になろうと思ってはいけません。エネルギー過多になって太る原因になります。必ず「副菜」で満腹感を得るように料理を工夫して下さい。

本当の奇跡は日ごろの積み重ねで生まれるのです。話題のミラクルフードなどを試して、珍しい食を楽しむのもよいかもしれませんが、何らかの効果を過信して、極端な食生活にならないよう、バランスを取っていきましょう。
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