医師がおススメしない検査 その1……「腫瘍マーカー」
「腫瘍マーカー」は「早期がん」で増加することはなく、良性疾患でも上昇することがあります。腫瘍マーカーの本来の目的は、「抗がん剤治療や放射線治療での効果判定」や「腫瘍マーカーの高いがんの術後の経過観察」です。腫瘍マーカーは、臓器特異性が高い「前立腺がんの腫瘍マーカー(PSA)」を除いては健康診断としての意味はありません。医師がおススメしない検査 その2……「脳ドック」
「脳ドック」はあまりおススメできません
脳は「悪性腫瘍」ができにくい部位であり、他の検査のように悪性腫瘍が見つかることは非常にまれです。
無症状の「未破裂動脈瘤」が発見されても、年間破裂率はわずか0.05%という報告があります。その場合、20年たっても破裂率は1%になります。無症状の「未破裂動脈瘤」治療はリスクが高いので、手術するかどうかは十分相談して決めなければなりません。
脳梗塞に関しても、無症状の脳梗塞が見つかったって、特にどうこうすることはありません。何の症状もない高齢の方で脳の検査をすれば、小さい脳梗塞ぐらいはたいてい見つかるものなのです。
「PET検査」も過信は禁物!
「PET検査」といえば、がんの早期発見に期待されている検査です。悪性腫瘍が糖を多く取り込むという原理を利用して、ブドウ糖に近い成分の薬剤の放射性物質を体内に注射し、撮影することでがんを発見します。PET検査だけで10万円近くしますが、いまだに人気は衰えてないようです。PET検査は、もともと「がんの転移を含めたがん病巣の広がり」や「がんの再発を見るため」の検査で、がん検診は本来の使用法ではありません。世界的にみると、日本のPET検診は特異なPETの利用法です。欧米諸国ではPETを用いたがん検診は行われていません。
「すべてのがんが見つかる」といったような過剰広告がありますが、PETの専門医を中心に構成する日本核医学会でも、「効果に関する誇張広告は慎むべき」と、身内に抑制を求めています。
例えば「数ミリのがんが発見されることがある」と宣伝する際には、大きさだけがPETでのがん描出を決める因子ではなく「数センチのがんでも発見されないことがある」と付記すべきとしています。
食道や胃、大腸、肝臓などの早期がんの発見が難しいという欠点もあります。PETだけを過信せず、欠点を補える内視鏡検査も別に行った方がいいでしょう
人間ドックでおススメする「検査」
内容はよく吟味して
人間ドックでおススメの検査は、通常の「身体検査」+「血液検査」+「尿検査」+「胸部レントゲン」+「心電図」に、「腹部超音波検査」+「上部消化管内視鏡検査」+「大腸内視鏡検査」を加えたものです。初めから大腸内視鏡検査を受けることに抵抗があるなら、大腸内視鏡検査でなく、「便潜血検査」という選択肢もあります。
他に追加の検査としては、女性ならば、「マンモグラフィー」「子宮頸がん検査」、男性ならば、「前立腺がん腫瘍マーカー(PSA)」がいいでしょう。
「ピロリ菌」の検査をしたことがなければ、ピロリ菌は「胃がん」の主要因とされているので、一度検査しておくといいと思われます。血液検査でも確認できます。
人間ドック「オプション検査」料金の目安
「腹部超音波検査」や「上部消化管内視鏡検査」などは、オプションでなくセットの中にあらかじめ組み込まれていることがあります。検査のセット内容は施設によって異なるので、内容をよく吟味して選択しましょう。料金は病院によって異なるのですが、おススメの検査を加えても、6万~8万円ぐらいに収まるでしょう。
<オプション検査の目安>
- 腹部超音波検査 約5000~7000円
- 上部消化管内視鏡検査 約5000~10000円
- 大腸内視鏡検査 約20000~30000円
- 血中ピロリ菌 約1500~2500円
- マンモグラフィー 約4500~5500円
- 子宮頸がん検査 約3500~4500円
- 前立腺がん腫瘍マーカー(PSA)約 2000~2500円