伝統を損なわず、オンロード性能を極めた
そもそもレンジローバー・スポーツそのものに対する筆者の評価は高かった。第2世代となって、オールアルミニウムモノコックボディを採用し、兄貴分のレンジローバーとの縁が随分と濃くなっていたからだ。ほとんど双子の兄弟と言っていい。
当然、パフォーマンスはレンジローバーに負けず、一級品。スタイリングはルーフがリアエンドに向かって下がっており、その名のとおりスポーティ。それでいて兄貴より、かなりリーズナブル。これは買わない手はない、と、ドイツ製SUV乗りからの買い換え相談には、自信をもって推してきた。
そんなレンジローバー・スポーツをベースに、ジャガー・ランドローバー・スペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が手がけた、究極のパフォーマンスSUVがレンジローバー・スポーツSVRというわけだ。
SVOが手がけた“ジャガー史上で最速かつ最もパワフル”なFタイプ プロジェクト7。2013年のプロジェクト7コンセプトをデザインテーマに、生産台数最大250台の限定モデルとされ、日本でも3台(2132.2万円)が販売された
SVOというのは、ジャガー&ランドローバーの“特別車両部門”である。ドイツブランドと同様に、高性能モデルや超豪華仕様車、特別仕様、特注仕様などを企画、開発する。レンジローバー・スポーツSVRのほかには、すでにSVオートグラフィ、ジャガーEタイプライトウェイト復刻版、そしてジャガーFタイププロジェクト7を生み出した。近い将来には、よりオフローダーに特化したSVXも用意するらしい。
SVオートグラフィがレンジローバーロングホイールベースを元に贅を極めたモデルであるのに対して、SVRはオンロード性能を極めたレンジローバースポーツベースのモデルである。しかも、それは、冒頭にあるとおり、レンジローバー伝統のオフ走破性を全く損なうことなく、高性能化されていた。
心臓部には、ジャガーFタイプRと同じ5L V8スーパーチャージドが積まれており、550ps/680Nmのパワー&トルクスペックを誇っている。0→100km/h加速性能はわずかに4.7秒で、SUV界のスポーツカーであるポルシェカイエンターボにやや劣る程度。いやはや、オソロシイパフォーマンスである。
何がそんなに凄いか。その凄さは、アメリカで開催された国際試乗会の冒頭で、いきなり明らかにされたのだった。