介護

介護離職をしないために備えておきたい知識と意識

親の介護を理由とした離職者が増加しています。転職先でも正社員として仕事を続けているのは男性で3人に1人、女性で5人に1人。働き盛り・子育てが一段落し再び仕事がしやすくなる40代後半から50代前半に「介護離職」を経験する割合が多くなっています(2014年調査)。家計や老後の生活に大打撃を与えるかもしれない親の介護について「知恵」を蓄えておくだけではなく日頃から「親の介護を予防する」意識も重要です。

執筆者:中山 奈保子

介護と仕事の両立

介護と仕事の両立が困難となり、離職または転職をする人が年々増加する傾向にあります。

総務省が2012年に行った「就業構造基本調査」によると、親の介護をしながら仕事をする人の数は全国で218万人にのぼり、今後もさらに増加する可能性が高いと言われています。

男女ともに親が75歳前後に達する40代~50代にかけて、介護を理由に離職を余儀なくされるケースが多く、転職が叶っても正社員として働き続ける人の割合も低い傾向にあります。介護離職は、家計や老後の生活に大きな不安を残す深刻な問題です。


勤務先に頼るだけでは不安が大きい

介護離職は、熟練した人材を失うことになるため、企業にとっても大きな痛手となります。こうした現状を踏まえ、厚生労働省などの関係省庁は企業に対して「介護と仕事を両立しやすい環境づくり」に取り組むよう指針を示しています。

具体的には、介護休暇や在宅勤務制度、社内介護セミナーの実施、相談窓口の設置などが挙げられますが、まだまだ整備が不十分であり、それらのチャンスを活かすことなく離職に至るケースも少なくないのが現状です。


介護離職を回避するために、親を支える若い世代が出来ることは?

    介護と仕事の両立

    家族の介護は大変な仕事です。一人で抱えこなまいよう知識とネットワークを準備しておくことはもちろんのこと、家族が要介護状態に陥らないよう予防していくことも大切です。

  1. 介護を一人で抱え込まないためのネットワークづくり
  2. 毎日の生活から「要介護サイン」を逃さずキャッチする

介護と仕事を両立するためのキーワードは「介護を一人で抱えない」こと。親がどんな介護を望むか知っておくことはもちろん、親の介護に備え在宅・施設介護に関する「知識」を蓄え、いざとなったら助け合うことのできる「ネットワーク」を広げておくことが重要です。勤務先の制度を確認する他、親が住む地域の現状や地域包括支援センターの所在を把握し、兄弟・親戚との役割分担を相談しておくのも良いでしょう。

そして、もう一つ。親が要介護状態に陥らないよう、可能な限りその原因を寄せ付けないことが挙げられます。どんなことが要介護状態を引き起こす原因となるのか、支える側の家族は日頃から意識して接することが大切です。


自然災害や友人との離別が要介護状態の原因となることも

加齢にともない罹患する確率の高い脳卒中や高血圧性疾患、認知症、骨折などは、要介護状態を引き起こす直接的な原因としてよく知られています。これらの原因は、生活習慣の改善により罹患または重症化を予防することができますので、本人だけではなく家族ぐるみで見守っていくことが大切です。

ただ、ここで注意しておきたいのは、要介護状態は病気やケガの他にも思わぬ出来事が原因で急速に進行する可能性があるということです。

最も身近な例として、地震などの自然災害による避難生活が挙げられます。自然災害はいつどんな形で襲ってくるかわかりません。高齢になればなるほど急な環境変化に適応するのが難しくなってくることから、ふだん健康で活動的な人でも、ショックのあまりに歩けなくなってしまったり、物忘れが酷くなるといったケースも珍しくないのです。引越しや水回りのリフォームなど、ちょっとした環境変化にも要注意です。

また、同年代の大切な友人を亡くしたことから外出をしなくなったり、急にTVのニュースに関心を示さなくなったり、長年習慣づいていた日課を維持できなくなるといった変化も現れます。もちろん個人差はありますが、たとえ離れて過ごす時間が多くても「最近どう?」「何か変わったことはあった?」などと、たった一言近況を伺うだけでも、要介護状態の予兆(サイン)をいちはやくキャッチすることができます。


要介護状態に陥る前に出来ることはたくさんある

要介護状態を引き起こす原因といえば、病気や持病の悪化、加齢による心身機能の低下、不慮の事故による怪我がよく知られていますが、その他にも様々な要因が要介護状態を引き起こします。

親が要介護状態に陥る前にできることはたくさんあります。単に健康面だけを気にするのだけではなく、毎日の暮らしに現れる兆候:「要介護サイン」を逃さずキャッチし、要介護状態をつくらない・可能な限り遅らせることも、若い世代が介護離職に至らないための予防策となります。

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