マンションの形状の一つとして、それぞれの住戸をずらして配置するタイプのものがあります。雁(かり)が群れで飛ぶときの様子に見立てて「雁行(がんこう)型マンション」あるいは「雁行設計」などと呼ばれます。
雁行型マンションでは大半の住戸が角部屋に近い構造となるため、窓の配置を工夫することで採光や通風が良くなるほか、各住戸の独立性が高まりプライバシーを保ちやすいメリットが生まれるものとされています。一般的にみられる「羊羹型マンション」のような単調さがないのも大きな特長です。
形状が複雑で建築コストも高くなるために高層マンションではあまり採用されませんが、中低層マンションでは大規模なものを中心に、小規模でもときどき見られます。個性的な外観で注目されることも多いでしょう。
しかし、プライバシーを保ちやすいかどうかは設計にもよるほか、同じマンション内でも住戸によって条件が大きく異なる場合もあるので注意しなければなりません。窓やバルコニーの配置によっては、隣の住戸から覗かれやすいケースもあるのです。
隣の住人との関係が良好であれば、部屋の中から目が合ってもあまり気にならず、軽く会釈して挨拶を交わすことができるかもしれませんが、嫌な隣人の場合は気まずいことになるでしょう。隣の人が引っ越した後の新たな住人など、将来的なことも考えなければなりません。
また、隣の住戸が出っ張ることで日陰が生まれるなど、時間帯や季節によっては必ずしも採光面で優れているとはいえないでしょう。分譲主が雁行型マンションの設計に慣れているかどうかにより、居住性が変わってくる場合もあります。敷地形状などから「仕方なく雁行型にした」というような場合には、そのメリットが生かされていないこともあります。
中古として雁行型マンションを検討するときは、部屋の状態をしっかりと確認することでメリットとデメリットが分かりやすいでしょう。その一方で、未完成の新築マンションが雁行型の場合には、図面や模型などを見ながら十分に想像力を働かせることも欠かせません。新築マンションの分譲主に雁行型の供給実績があるのかどうかも確認しておきましょう。
さらに、雁行型マンションは大規模修繕工事の費用が割高になりやすいことも理解しておくべきです。その規模や形状、階数などによっても異なるため一概にどれくらい割高だとはいえませんが、工事の施工面積(外壁の表面積)が広いだけでなく、工事のための足場が組みにくくなることも工事費用がかさむ要因です。
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