開放的な空間が生まれる吹き抜けプラン
吹き抜けとすることでリビング階段も空間のひとつのポイントに。手すりも含め、デザイン性を考慮して取り入れたい。[アルミインテリア建材 オープンリビング階段 レイスルー手すり] YKK AP
吹き抜けとは、多層階の建物で、2層以上の高さにまたがって設けられる空間やスペースのこと。一般的な住宅で多くみられるのは、1階の玄関ホールや階段、リビングなどに設けるプランでしょう。また、2階リビングでも屋根形状を利用して高さを確保し、吹き抜けとするケースもあります。プランニングや条件にもよりますが、吹き抜けとすることで、光や風を取り込み、開放的な空間となることが大きな魅力でしょう。
メリット:開放感と明るさ。家族の気配を感じることも
■広々とした空間が実現する周辺環境や敷地条件、住まい全体のプランニングによりますが、一般的に、リビングに吹き抜けを設けるメリットとしては、なによりも広々とした開放的な空間が実現すること。天井が高くなることで、縦方向に広がりが生まれ、ゆったりとした心地よさを感じることができるでしょう。また、屋根形状を生かしたり、梁や小屋組みなどをみせることで、変化を持たせた空間づくりも考えられます。
■上部の窓から光を取り込める
吹き抜けの場合、ハイサイドライトやトップライトなど、上部に窓を設けることができるので、上からの太陽光をたっぷりと取り込むことが可能。南面の隣家が迫っているなど、敷地条件の良くない1階のリビングでも、明るい空間が実現できます。また、上部からは、光だけでなく、風を取り入れることも期待できるので、夏場でも快適に過ごすことが可能でしょう。
■上下階の空間につながりが生まれる
吹き抜けを通して、上下階の空間につながりが生まれるため、家族の気配を感じることができるのも大きな魅力。たとえば、吹き抜けのLDK空間に、2階の子供部屋が面している場合、キッチン作業をしながらでも子供の様子を感じることも。子供からも親の姿が確認できるので、安心感を得ることができるでしょう。
高い位置には、高所用の換気窓を設置しても。ボールチェーンの高窓用オペレーターとリモコンによる操作で開閉することが可能。[プラマード3 ナチュラルモダン 高所用換気窓+引違い窓(テラスタイプ)+スクエアFIX窓] YKK AP
デメリット:冷暖房の効率が悪いこと、高所のお手入れがしにくいこと
■暖房や冷房の効率が悪い空間のプランニングや住まいの基本的な性能にもよりますが、吹き抜けリビングのデメリットとして挙げられるのは、暖房や冷房などの空調プランの難しさ。冬場の寒さや夏場の暑さなどに不安を持つ方も多いようです。大きな空間を温めたり冷やしたりするには、エネルギーを多く使うことになり、光熱費がアップしてしまうケースもみられます。
■テレビなどの生活音が気になることも
吹き抜けによって、上下階につながりがあることで、生活音が聞こえてしまうというケースも。たとえば、1階のテレビやキッチンの音が吹き抜けを通して、2階の寝室や子供部屋に届いてしまい、うるさく感じることもあるようです。また、音だけでなく、キッチンでの料理のにおいが上階まで回ってしまうということもあります。
■高所に設ける機器などの操作、掃除が難しい
高所に設ける窓やカーテンには、適した商品や機能を持つアイテムを選ばないと、操作がしにくく使い勝手が悪い場合も。また、高い位置の窓、天井や壁面などの掃除に手間がかかるケースもみられます。
■照明計画の難しさ
高さのある空間なので、空間の使い方に適する照明プランには、充分な配慮が必要でしょう。また、照明器具の電球交換が大変なケースもみられます。
吹き抜けを取り入れる際のプランニングの注意点
■採光や通風、操作性を考慮した窓プランを住まいに適した断熱性能を持つ窓サッシを選ぶことは基本ですが、上部からの採光や通風を考慮することがポイント。季節に合わせた光や風を取り入れることができる配置や形状を選ぶようにしましょう。また、開閉のしやすさ、掃除のしやすさなども配慮するようことが重要です。チェーンで操作できたり、リモコンで開閉できる高所用のタイプもあるので、日々の使い勝手や使う人を考えて選ぶようにしましょう。
■空間に合わせた空調プラン。シーリングファンなどを設置しても
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また、冬場、エアコンで暖房した場合、どうしても上部に暖かい空気が溜まってしまいがちなので、シーリングファン(部屋の空気を撹拌する天井などに設置するファン)などを設置するのもひとつの方法でしょう。もちろん、空気を循環させ、快適さを実現するには、住まい全体の断熱性を確保しておくことが基本なのは言うまでもありません。
■空間の使い方を明確にして、照明計画は早めに検討を
照明計画も空調と同様に設計担当者からの提案があるでしょう。電気配線は早めに決定しなければならないので、間取りプランの中で新しい暮らしをイメージすることが重要です。
基本は、リビング空間の使い方を明確にしてプランニングすること。リビングでどのように過ごすのか、テレビを見るのか、読書をするのか、子供が宿題をするのかなど、ソファやテーブルの配置を含めて検討を。ダウンライトを複数灯並べたり、ペンダントを下げたり、梁などに照明器具を設置するプランも考えられますし、調光器でさまざまなシーンに適した灯りプランを実現することも可能です。
また、電球の交換など、自分でできるのか、電気屋さんにお願いするのか、メンテナンス方法を事前に確認しておくこと。ペンダントは、昇降機能のついたタイプを選んでもいいでしょう。
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吹き抜けのリビング内に、上階への階段を設けるケースもみられます。リビング階段は、2階に子供部屋を設けた場合、帰宅時や外出時に家族のいる1階リビングを必ず通るため、コミュニケーションが取りやすいということで人気があるプランです。
プランニングにもよりますが、使い勝手だけでなく、デザイン性の高い階段とすることで、空間のポイントとなる場合も。建材メーカーからは、木質建材やアルミと組み合わせたモダンなデザインなどが揃い、オブジェのように印象的なデザイン、開放感のある手すりを組み合わせることができるタイプなどもみられます。内装材や建具などとのコーディネートも可能なものタイプもあるので、プランニングもしやすいでしょう。
■生活音を考慮して。室内窓などを設けても
音に関しては、ライフスタイルや家族構成によっては、上下階とのつながりを開放的にしすぎない、扉や室内窓である程度の音を遮断できるプランとする、などの工夫も必要かもしれません。二世帯住宅の場合などでは特に注意が必要でしょう。
たとえば、吹き抜けリビングに面した子供室や寝室に、室内窓を設ければ、家族のコミュニケーションをはかりつつ、必要な時には、独立性を高めることも可能です。家族の気配を感じる、というメリットとどちらに重点をおくか、充分に検討することが大切でしょう。
吹き抜けに面して採光が可能な室内窓を設けることで、開放感を確保しつつ、ある程度の独立性も生まれる。[アルミインテリア建材 スクリーンパーティション 採光ユニット 開き窓/スクリーンパーティション 採光ユニット 引違い窓] YKK AP
あたり前のことですが、リビングの吹き抜けには一長一短があるものです。建築する敷地の条件、周辺環境などによってもプランニングは変わってきますし、家族構成やライフスタイルによっても住み心地は異なるでしょう。
吹き抜けという、ひとつの手法だけを取り上げてその良し悪しを言うのは、難しい面もありますし、間取り全体で考えることが重要なのはもちろんのことです。吹き抜けを希望する場合は、メリットを生かし、デメリットをどのように解消、改善させることができるかを、設計担当者としっかりと検討すること。間取りはもちろん、設備や建材なども上手に組み合わせて、平面だけでなく立体的に考えることが大切でしょう。
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