戸籍の名前が本当の名前
名前は原則として一つしか持てない
A: 出生届にうその名前を書く、ということは矛盾しています。出生届に書かれ、戸籍に載せられた名前だけが本人の本当の名前です。
「一名主義」が基本のルール
よく戸籍と別の名前を作って「名前を変えました」「こちらが本当の名前です」と言う方がいます。少々堅苦しい話になりますが、基本のことですので申し上げますと、明治の初めに「名前は一つにしなさい」という布告が出されています。布告は今の法律と同じで、この布告は廃止されてはいませんので、私たちは原則として一つの名前しか持てません。その一つの名前を戸籍に登録するのですから、出生届に書き、戸籍に登録された名前だけが本人の本当の名前なのです。
戸籍と別の名前を「こっちが本当だ、本人がそう言ってるじゃないか」と言っても、本当の名前というのは戸籍という制度によって決まるので、個人が心で思ったことで決まるのではないのです。まして使用を禁止された字で名前を作っても、実名としては違法であって世の中に存在できませんので、それが本当の名前だという主張は残念ながら成り立ちません。
戸籍と別の名前を使うことは不可能ではない
このように「一名主義」というルールがある以上、私たちが戸籍以外の名前を作って使うことは、理屈の上ではできません。ただ明治時代の布告など今の人には知る機会もなく、戸籍と別の名前を作って使っても罰則も無いので野放しになっていますから、まさか違法だと思っていない人も多い、というだけのことです。ただし一名主義には例外規定があります。たとえば、作品を発表するためのペンネームや芸名、雅号などを作って名乗ることは、すでに明治の初めから例外として認められました。それは現在でも同じです。
実はこの作品の発表というのは、これで必ずお金を儲けて生計を立てなさい、という条件はありません。つまり趣味的なことでもいいわけです。今の時代は誰しも作品を発表することはよくあるわけで、実際は戸籍と別の名前を作って使うことは誰でもできる、ということにもなるのです。
また、作品の発表のための名前は戸籍法の適用を受けず、漢字の制限もありません。どんな漢字でもよいし、ローマ字でもかまわないのです。
ただしこれはあくまで例外規定の話であって、名前は勝手に作っていいのだ、と解釈しては本末転倒になります。戸籍と別の名前は作れない、というのが基本であり、そのルールがなぜあるのか、その趣旨を理解することが重要です。