実感のある中央値では1052万円
平均貯蓄額が1798万円とは、どこの国の話だろうと思ってしまいます。総務省が毎年公表している家計調査のうち、「貯蓄・負債編」では、2人世帯を対象とした調査結果によると、全体では貯蓄増のひとつの要因として、賃上げで増えた一時金や毎月の給与からの預金が増えた、という見方を示していますが、とてもそれだけでは説明がつかないでしょう。保有している金融資産の内訳をみると、株式や債券などの有価証券が前年比4.6%増で平均251万円となっており、株高の影響で時価評価が高くなった結果ではないかと思われます。
全体のデータでは、一部の高額な資産を持っている世帯や、比較的資産の多い高齢者世帯のデータに引っ張られ数値が上ぶれするため、平均1798万円という驚きの数字になりますが、全体データから順に、金額の低い世帯から高い世帯を並べたときに、ちょうど真ん中にあたる数値を中央値といいますが、中央値でみると1052万円(前年比2.8%増)という結果になっています。
総務省データより「貯蓄現在高階級別世帯分布・二人以上の世帯」
逆の見方をすると、貯蓄が100万円未満の世帯は、全体の10.3%も占め、このことが中央値を引き下げているわけです。勤労者世帯に限れば、100万円未満の世帯は12.4%にもなります。
年齢別でみると、若年層の平均貯蓄額は相変わらず厳しい
こうしたデータはインパクトのある数値がニュースに取り上げられますが、実態をみるうえでは、詳細なデータを見る必要があります。そこで、2人世帯のうち勤労者世帯に絞り、年齢階級別にまとめたのが、次の表です。年齢階級別にまとめてみると、やはり40代以降でようやく1000万円を超えるという結果になっています。さらに、貯蓄から負債額を差し引いた純貯蓄額を試算してみると、プラスに転じるのは50代になってから。20代、30代のうちは、年収が増えず、貯蓄がなかなかできない状況で、マイホーム取得で負債があり、結果的には、純然たる貯蓄はマイナスという厳しい状況に変わりはありません。
とはいえ、年代が上がれば年収も上がるという時代は終わっています。データをみると、共働き率(世帯主の配偶者うち女性の有業率=つまり共働きと考えられます)は40代で50%を超えます。子育てが一段落して、再び女性が働くことが可能になり、それが世帯年収の引き上げにつながっているとも考えられます。
4月のベースアップ、夏のボーナス支給額が増額と、心地よいフレーズが並ぶ昨今ですが、やはり平均データはデータとして貯蓄目標の参考にしつつ、ひとりひとりが地に足を付けたマネープランを考えなければならないと肝に銘じましょう。
引き続き、詳細なデータを紐解きながら、年代別の家計収支、貯蓄プランの考え方をご紹介していくことにします。