少年とオジサンの共存
小顔、細身といったイマ風に相反するピエール瀧のルックスは昭和風、オジサンの王道です。仏頂面、強面、福笑い、愛想笑い、人間の微妙で複雑な感情を可笑しみを含ませながら演じる姿はオジサンたちが日々を生きる術に通じるものがあります。一方、『あまちゃん』で演じた寿司屋の大将・梅頭の聞き耳を立てながら静かにニヤリニヤリとするさまは好奇心旺盛な少年のようでもありました。野球少年であり音楽少年だったピエール瀧はそのころのワクワクした気持ちを、オジサンを極めたかのような風貌のなかに持続させているのでしょう。運動場から高層ビルまで、どの風景にも溶け込む風貌は俳優ピエール瀧の強みと言えそうです。
演じるのではなくその人物に変化してしまう
とびきりの笑顔がないのに、優しさをにじませる。声高に恫喝していないのに冷酷で残忍な人間と感じさせる。ピエール瀧は、演じるのではなく、その人物に変化してしまうかのようです。どんなカタチにも変形するスライムのようですし、環境によって色を変えるカメレオンのようでもあります。変化することを恐れないピエール瀧は、ミュージシャン、声優、俳優、などマルチに活動する自分の立ち位置を理解しています。俳優としてこうあるべき、自分はこういう俳優なのだというこだわりや決めつけをしていないようです。その自由度の高さが七変化を可能にしているのでしょう。
変化を支える一番の要因は心の若さにあるのかもしれません。電気クルーヴでのパフォーマンスがそうであるように、柔軟に時代を受け入れ、時代を楽しむ姿勢が俳優としての幅を固定せずしなやかに広げているのでしょう。