競馬/一頭追っかけシリーズ

追っかけシリーズ第11回 ~遂にやってきたこの瞬間~(2ページ目)

日本の競馬において、最上級クラスに当たる「オープン」。そこまであと1勝と迫りながらも、足踏みが続くシャドウダンサー。ですが、ついに、ついにオープン入りを決める瞬間がやってきました。その模様をお送りします。

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド


最高のデキで、いよいよオープン入りへ


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前走時(写真)よりも、グッとよくなっていたシャドウダンサー

1600万下のクラスになってから、2着→7着→2着→8着という成績をたどってきたシャドウダンサー。好走と凡走を繰り返すその姿に、インターネット上では、「いつ走るのか分からない」というファンの声が散見されました。

そんな中、今度こそのオープン入りをかけて出走した、4月11日の湾岸ステークス(芝2200m/中山競馬場)。4戦連続の“中山入り”となったシャドウダンサーがパドックに現れたとき、私は確信しました。「今日は勝てるぞ」と。

というのも、レースを間近に控えたシャドウダンサーの状態が素晴らしかったのです。歩様はなめらかで、スイスイ歩く。顔つきも集中していて、テンションが高いのではなく、気合十分という状態。「この状態で勝てなければ仕方ない」という印象でした。

前走で取り沙汰された距離についても、今回は2200m戦。過去にこの距離で白星を挙げていますから、心配いりません。

一つ不安があるとしたら、シャドウダンサーの陣営が、「集中して走らない面がある」と指摘していること。場面によって集中力が切れたり、真面目に走らなかったりというケースがあるようです。それが、7着・8着という凡走を生んだのかもしれません。

いつも仕事に集中できず悩んでいる私としては、なんだか親しみの湧く話。とはいえ、そのままでは出世できなくなってしまいます。

しかし、今回コンビを組むジョッキーは、戸崎圭太騎手。何人かのジョッキーがシャドウダンサーとコンビを組んできましたが、戸崎騎手はその中でも最多の6回目。競馬では、その馬とメインでコンビを組む騎手を「主戦騎手」といいますが、シャドウダンサーの主戦騎手は、現時点で戸崎騎手です。シャドウダンサーをよく知る彼なら、性格面もうまくカバーしてくれるでしょう!

さあ、それでは深呼吸をして見守りましょう。シャドウダンサーの一戦を!

湾岸ステークスのレース映像(シャドウダンサーは赤帽の4番)


手に汗握る大接戦。
そして見えてきた、シャドウダンサーの性格

やりました! やりました! なんとも力の入るゴール前。粘るマイネルアイザックと並んでゴールインしたこのレースは、写真判定の末、わずか「ハナ」の差で、シャドウダンサーに軍配が上がったのです。

スローペースを4番手から追走したシャドウダンサー。どの馬も体力を温存する中、シャドウダンサーは、残り600mくらいからスーッと先頭に迫っていきます。

シャドウダンサーは、瞬発力をベースにした「切れ味」よりも、持久力を使ったロングスパートの方が得意なタイプ。戸崎騎手もそれが頭にあったのでしょうか、早めのタイミングで積極的に自分から仕掛けて、ロングスパート勝負へと持ち込みます。

そして直線。戸崎騎手の完璧な仕掛けに、私は「もらった」とバンザイしていました。しかし、甘くはありません。内のマイネルアイザックが粘る粘る。交わしたと思ったら、内でもうひと伸びするのです。

戸崎騎手は、レース後に「(シャドウダンサーは)先頭に立ってから気を抜いているところもありましたし、まだ上積みがあると思います」とコメントしました。「先頭に立ってから気を抜く」とは、なんという困らせっぷり。接戦だというのにヒヤヒヤさせます。

なお、先頭に立つと気を抜く馬は珍しくなく、その状態を「ソラを使う」「遊ぶ」といいます。ジョッキーが、「先頭に立ったらソラを使ってしまって(遊んでしまって)」というコメントは、競馬を見ているとよく聞かれます。

この一面を見ると、先ほど言及したシャドウダンサーの性格面「集中して走らない面がある」につながってくるかもしれません。真面目なようでちょっと不真面目。シャドウダンサーは、いつの間にかそんな性格になってきました。

とにもかくにも、これでオープン入り。性格面も、これから直していけばいい……と喜びたいところなのですが、どうも素直に喜べません。お祝いのシャンパンを開ける気にならず、今日も第3のビールで我慢してしまいます。

これはなぜでしょうか。第3のビールのクオリティが高いからではありません。いや、確かに第3のビールは、本物のビールと間違えるほどおいしいのですが、決してそういう問題ではないのです。

理由はわかっています。シャドウダンサーは、これで「1600万下」のクラスを卒業し、オープンとなりました。それなのに、次のレースではまた「1600万下」に逆戻りしている可能性が濃厚だからです。

ややこしい話なのですが、これについては少し説明が必要なので、次回に持ち越すこととしましょう。これからその説明をするほど、私も集中力が続きません。

とはいえ、シャドウダンサーが貴重な白星を挙げたことは素直に喜びたい。ですから、最後にこう言わせてください。

久しぶりの白星、おめでとうシャドウダンサー!



(リンク)
シャドウダンサー|netkeiba.com
湾岸ステークス|レース結果|netkeiba.com
サンシャインステークス|レース結果|netkeiba.com


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