同じ地域をまわり続けているうちに気付いた家の変化
朽ち果てそうなシャッターは危険なので声を掛けたことも。
いつも美しく手入れされた庭、落ち葉ひとつ無いほど掃き清められた玄関もあれば、無造作にゴミ袋が積み上げられた家、シャッターボックスが朽ちて今にも崩れ落ちそうな危険な家もありました。
ちなみにシャッターボックスはそのままではかなり危険なので、声を掛けたのですが、どうも家には興味が無いようで、そんなお金があったら車を買いかえるとの答えが返ってきました。
車庫にあるのはかなりの高級車で、家の荒れ具合とアンバランスではありましたが、お金の使い道に対する価値観は人それぞれ。家に興味が無い人にとっては雨風がしのげればいいという方も少なくありません。
その後何年もシャッターはそのままで、最後は崩れ落ちましたが、幸いけが人などは出なかったようです。
そんな家と人を眺めながら、同じ地域を歩き続けるうちに、様子が徐々に変化していく家があることに気付きました。そしてその変わりようが、実は家族関係の変化の兆しだったのです。
だんだんと荒れていく庭、その後離婚へ
よく手入れがされた美しい庭がだんだんと荒れていくのがよくわかった。
奥さんはいつも庭にいて、私が声を掛けると明るい声であいさつを返してくれていました。
ところがある時から、奥さんの姿を見掛ける回数が減り、庭はだんだんと荒れ、1年後くらいにはあんなに美しかった庭が元の面影もなく、荒れ野のようになってしまっていました。
もしかして、体調不良で庭の手入れが大変になったのかなと思い、たまたま玄関先に出ていた奥さんに、お手入れが楽な庭にする方法もあると声を掛けたのですが、もう庭には興味が無くなったとのこと。そしてその後ほどなくして離婚、奥さんはお子さんを連れて出ていきました。
庭の変化が離婚の予兆だったケースが少なくない
自分の幸せな未来を感じない家には興味はわかないもの。
リフォームの依頼を受ける家はたいてい円満な家です。当たり前のようですが、家を美しく維持したい、もっと快適な家にしたいという思いが湧くのは、その家での幸せな未来の暮らしを確信しているからです。幸せだからこそ、その巣である住まいに目が向きます。
しかしそこに未来を感じなければ、家には目が向かないことでしょう。自分の幸せな未来が感じられない家の手入れをしようなんて誰も思わないのです。
家の中に離婚の兆しが表れていたケースも
美しく片付いていた家にいつの間にか本が積み上がって散らかるように。
奥さんは片付けがしたかったそうです。でも旦那さんが非協力的でなかなかできない、リフォームの打ち合わせも最初はご夫婦で揃っていたのが、最後のほうは奥さんだけになっていました。旦那さんは明らかに住まいというものに興味を失っているようでした。
離婚後しばらくして、奥さんはその家の全面リフォームを行いました。奥さんの好きな物だけでまとめられたそのリフォームには、これから新しい暮らしを始めようとする勢いと希望が感じられました。
家が散らかってきたと感じたら家族関係を見直してみて
住まいは人の暮らしや心を映す鏡です。私自身、雑誌が積み上がり、衣類があちこちに溢れて家の中が片付かない時期があり、やはり自分の住まいに目が向いていませんでした。住まいに目が向かないのは、自分の幸せな未来がそこに見えなくなっているからです。家が散らかってきたと感じたら、一回立ち止まって、家族と向き合ってみるのもいいかもしれません。
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