芦部憲法をどう使うか
大切なことは芦部憲法の使い方だと思います。人それぞれによって使い方が異なると思うので分けて説明します。■大学や予備校で憲法を勉強した人
大学や予備校で憲法を一通り勉強した人ならば「辞書的に使う」方法を推奨します。これは芦部憲法を通読するのではなく、わからない知識や理解を深めたい知識についてだけ、芦部憲法を読んで確認する方法です。これならば時間はかかりません。もっとも推奨される使用方法です。
■予備校に通わずに憲法を勉強した人
また、憲法を一通り勉強をした人に対して、「種本対策で使う」方法をご説明します。一種の「やまはり」として芦部憲法を使用する方法ですが、予備校に通っている方にはお勧めしません。なぜなら予備校がそれを代替しているからです。ですから大学で憲法を学んだが予備校は利用していない人が対象と言えます。
最低でも5年間、欲を言えば新試験制度になってからの平成18年以降の本試験問題について、出題箇所を芦部憲法の該当部分に書き込みましょう(出題年度も記載しておきましょう)。
そうすると出題分野の偏りに気付くと思います。さらに、出題年度の記載から過去問を前提にその周辺知識が新しく出題されるという関係性にも気付くはずです。
では次に周辺知識とはどこまで勉強すればいいか気になると思います。芦部憲法の目次は、章、漢数字(款)、アラビア数字(項)で構成されていますが、周辺知識とは、過去問を含む「款」が一つの目安です。例えば、1項で出題された数年後に、2項から出題されていたりします。明らかに過去問を前提に出題されている箇所があります。
周辺知識を吸収する際は、ただ読むのではなく、過去問を検討しながら試験にどう出題されるかを考えて読んでください。そうしないと時間だけが過ぎてしまいます。
■独学で勉強する人
さらに、芦部憲法を「基本書として使う」方法もあります。大学で憲法を学んでおらず、予備校も一切使わずに、独学で勉強をしようとする人が対象の説明になります。まず芦部憲法の弱点を補強するために判例百選を購入した方がいいと思います。
基本書として使う以上、芦部憲法を読み込まなければいけません。ではどこをどのくらい読み込めばいいのでしょうか。芦部憲法は、条文、その条文の歴史的背景・制度趣旨、その条文の問題点、問題点に関する判例、判例の評価、判例のない問題点と評価(学説)が記載されています。
中でも条文と判例の知識は必須です。判例について言及しておきます。芦部憲法には判例の概略が多数掲載されていますが、その取捨選択は例百選に掲載されているか否かです。百選掲載判例を押さえれば十分だと思います。
近年、学説問題も見られますが、「試験委員のためらい」も見え隠れします。現在の段階では、学説問題は問題の所在を押さえる程度でいいと思います。例えば平成26年問題7選択肢5は、学説の詳細ではなく、その出発点である問題の所在、芦部先生の問題意識が出題されています。
学説に深入りするのはやめましょう。何説があって根拠はこれでとのレベルまでは必要なく、なぜその論点が生ずるのか、芦部先生の問題意識の程度で留めるぐらいでいいと思います。このようにすれば、読み込む場所を大幅に削ることが可能です。
最後に
芦部憲法は紛れもなく名著です。今回は行政書士試験での使用方法を述べましたが、合格したあかつきには是非精読をしてみてください。戦後憲法の到達点のひとつを知ることができると思います。