春の風物詩である「春濁り」

寒い冬が終わり、ポカポカ陽気の春はお出かけには絶好の季節。冬の間ダイビングから遠ざかっていた人も「そろそろ海へ」と考える時期ですが、この時期のダイビングで注意したいのが「春濁り」。海の中にも四季がある日本では「春の風物詩」として、海の透明度が下がる「春濁り」と呼ばれる現象が起こります。釣り人の間では「春の濁り潮」などと呼ばれるこの現象、なぜ起こるのでしょうか?

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浮遊物が多く、水の色も緑がかって見える「春濁り」の海


「春濁り」はなぜ起こる?

陸上と同様、冬になると海水も温度が下がります。この時期に海の上層と下層の水が循環され、栄養塩類を豊富に含んだ海水が海の上層にも供給されたところで、春になって水温が上昇することで、植物プランクトンが一気に増殖。さらに、海藻類が水温の上昇と共に溶け出すことで、海の中に浮遊物が多く発生します。

また、地域によってはこの時期に中国大陸から飛んでくる「黄砂」に含まれる栄養分が海に溶け出し、海藻類が活発に育つ原因となっているという説も。これが「春濁り」発生のメカニズムといわれており、年によってある程度のずれはありますが、伊豆半島周辺の海などでは毎年3月中旬頃から発生します。

「春濁り」の海を潜る注意点

「春濁り」が激しいときは、水中の視界がわずか数メートルということもあります。安全にダイビングを楽しむためにも、以下のポイントをきちんと押さえておきましょう。

1.バディやグループとはぐれないように
透明度の悪い海の中でまず注意したいのが、バディやグループとはぐれないこと。生きものの観察や水中撮影に集中していると「ふと気がつくと周りに誰もいない……」なんてことも。透明度のいい海なら多少離れてもすぐに見つけられますが、透明度の悪い海では、少し離れると見えなくなってしまいます。常にバディやグループが見える範囲で行動することを心がけましょう。ダイビング前に、どのようなコースで潜るのかをきちんと確認しておくことも大切です。

2.浮力のコントロールをしっかりと
ただでさえ透明度の悪い「春濁り」の海。きちんと浮力コントロールをして泳がないと、海底の砂を巻き上げるなどして、さらに透明度を悪くしてしまいます。また、濁っていて見えない状態で海底に接触すると、岩などでケガをしたり、生きものを傷つけてしまう危険があります。透明度の高い海に比べて、自分が泳いでいる位置の感覚をつかむのが難しいのですが、水底に接触しないように中性浮力をキープして泳ぎましょう。

3.水中ライトがあると便利
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濁った海の中では水中ライトが大活躍。自分の位置を知らせるのにも役立ちます


透明度の悪い海の中では、水中ライトがあると便利。生きものを観察するときはもちろん、透明度の悪い海でもライトの光はよく通るので、自分の居場所を知らせるのにも大いに役立ちます。ライトを使ったサインの出し方もダイビング前に確認しておくといいでしょう。

4.深度や残圧をこまめにチェック
濁っている海の中では、透明度のいい海を潜っているときと比べて深度の感覚がつかみにくいので注意が必要。こまめに深度をチェックして、計画よりも深い深度に行かないように気をつけましょう。また、周囲が見えにくいことでストレスがかかり、普段よりも空気の消費量が増えていることがあります。残圧計もこまめにチェックすることをおすすめします。

5.防寒対策も万全に
春とはいえ、海水温はまだまだ低い時期。冬の時期と同様、ドライスーツを着用したり、フードを使用するなどの防寒対策が必要です(参考記事「冬のダイビングの注意点」)。とはいえ気温が高い日は、ドライスーツや厚手のインナーを着たままで陸上で過ごしていると、逆に熱中症や脱水症状などの危険もありますので、上手にコントロールすることを心がけましょう。

ダイバーにとっては悩ましい「春濁り」ですが、これにより植物プランクトンが増えることで動物プランクトンも増え、それらをエサとする小魚が増え、さらには小魚をエサとする大型の魚が増える、といったように、海の生態系を形作る大切な存在。夏~秋に海の中を賑わす魚たちの群れが見られるのも、この「春濁り」があってこそといえます。

また、栄養分の豊富な春の海は、生きものたちにとって恰好の繁殖シーズンで、求愛・交尾・産卵・ふ化など、さまざまな生態シーンをじっくりと観察するのにもおすすめです。皆さんもぜひ、そんな視点で春の海を楽しんでみてくださいね。

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