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もしも白血球が「ゴレンジャー」だったら

白血球には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球があります。すごく強引な組み合わせですが、もし「白血球」が「秘密戦隊ゴレンジャー」だったら……と仮定して、その活躍ぶりを解説いたします。

今村 甲彦

執筆者:今村 甲彦

医師 / 胃腸科・内科の病気ガイド

「秘密戦隊ゴレンジャー」とは

ゴレンジャー

ゴレンジャー(photo by MykReeve、CC-BY-SA、Wikipediaより)

「秘密戦隊ゴレンジャー」といっても若い人には馴染みがないと思われますので、まず秘密戦隊ゴレンジャーについて解説しましょう。

1975年(昭和50年)4月5日から1977年(昭和52年)3月26日までテレビ朝日系列で放送され大人気を博した特撮テレビドラマです。「スーパー戦隊シリーズ」の第1作目にあたるもので、その後絶えることなく続編が作られています。最近のものでは「烈車戦隊トッキュウジャー」、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」などがあります。

変身ヒーロー作品に「戦隊」という要素を取り入れ、かつ、キャラが立つ5人のヒーロー(そのうち1人はヒロイン)が活躍します。これを白血球にあてはめるとどのようなヒーローにあてはまるでしょう? ものすごく強引な組み合わせですが、「白血球」と「ゴレンジャー」を対比して考えてみたいと思います。

「アカレンジャー」…率先して細菌を撃退するリーダー「好中球」

「アカレンジャー」はゴレンジャーのリーダー。秘密工作のスペシャリストで、優れた決断力と統率力を持つ義理人情に厚い熱血漢。格闘能力と指揮能力に秀でています。かつてサッカー部でエースストライカーだっただけに高い運動能力を誇り、ユーモアのセンスに富み、仲間内での会話では軽妙なやりとりも。正々堂々とした立ち振る舞いを好み、状況によっては敵にも情けをかける一方、騙し討ちなどの卑怯な手段を使う者に対しては激しい怒りを見せる面もあります。

「好中球」は、白血球全体の50~70%を占める白血球のリーダー的存在。細菌や真菌などの感染にはリーダー自ら率先して集結し戦うという正義感が強い熱血漢です。運動能力が高く、異物の方に向かって進む遊走能で素早く敵に立ち向かいます。強い貪食能で侵入した細菌を細胞内に取り込み、消化、殺菌、分解します。細菌類の捕食・殺菌のメインプレイヤーです。

「アオレンジャー」…免疫パトロールを行うサブリーダー「リンパ球」

「アオレンジャー」はゴレンジャーのサブリーダー。「総合能力ではアカレンジャーより上」との声も……。性格はクールな二枚目。過去にレーサーを目指していたこともあるほどメカの操作、各種乗り物の操縦に長けており、車両は言うに及ばず、船舶・航空機も動かせます。一見、キザな言動が目立つ等斜に構えた冷たい人間のようにみえますが、チームワークを大事にする大人な性格で、アカレンジャー不在のときはサブリーダーとしての見事な指揮をとることも多く、メンバーからの信望も厚い存在です。百発百中の精密度を誇る弓(ブルーチェリー)を用いて敵を攻撃します。

「リンパ球」は、白血球のうち20~40%ほどを占めるサブリーダー的存在。免疫システムの防衛基地「リンパ節」を巡回しながら、病原体の身体への侵入を免疫細胞としてクールに監視しています。敵と認識すると、ブルーチェリーの弓に匹敵する抗体などを用いて異物に攻撃をしかけます。ウイルスなどの小さな異物や腫瘍細胞に対しては、好中球などの顆粒球ではなく、リンパ球が中心となって対応します。B細胞、T細胞、NK細胞などいろいろなメカを駆使するなど多様な能力を持ち合わせています。総合能力ではアカレンジャーより上という意見があるのもうなずけます。

「キレンジャー」…大食漢なだけではなく器用な面も「単球」

カレーを食べている男性

キレンジャーは大食漢です!

「キレンジャー」は力自慢で“カレー好き”の九州男児。戦闘時は得意な柔道を駆使して相手を投げ飛ばすなど怪力を武器とした格闘戦を挑むのが得意です。性格的には純朴で女性や子供にも優しい面が強いがゆえに敵にそこを突かれて策略に嵌り捕獲されることも……。その一方、精密機械や通信関係のスペシャリストという面もあり、相手を撹乱する作戦ではその実力を発揮します。

「単球」は、キレンジャーなだけあって体格も白血球細胞の中で最大。大食細胞(マクロファージ)とも呼ばれます。アメーバ様運動で移動して細菌などの異物を細胞内に取り込み、細胞内酵素を使って消化する大食漢です。感染に対する免疫の開始にも重要な存在で、アオレンジャーである免疫細胞のリンパ球に敵の情報を細かに連絡するなどマメな点も。不要になった体細胞の処理などの雑用もこなし、骨髄において赤血球の育成を行うなどの面倒見の良さもあります。各種サイトカインの放出など様々な役割を器用にこなします。

「モモレンジャー」…桃色に染まる好酸性顆粒を持っている「好酸球」

「モモレンジャー」はゴレンジャーの紅一点。武器開発と爆発物処理のスペシャリスト。女性ながら格闘能力も一般イーグル隊員を凌駕しており、柔道の有段者でもあります。

「好酸球」は、普通染色でエオジン親和性の桃(ピンク)色に染まる好酸性顆粒を持ちます。寄生虫・寄生虫卵の処理や暴発すると危険なアレルギーという爆発物の処理も行っています。弱いながらも貪食殺菌作用をもち敵を攻撃したりもします。

「ミドレンジャー」…影の薄さは否めない「好塩基球」

「ミドレンジャー」はゴレンジャーの中ではマスコットキャラクター的な存在で、動物や自然をこよなく愛します。若さゆえに血気盛んな面が強い面もあります。その性格ゆえか「坊や」と呼ばれることも。格闘能力は高く、持ち味のスピードを駆使して闘います。

「好塩基球」は白血球5つの中で最も認知度が低く、「お前誰?」とも言われそうな存在です。白血球の中でも存在割合は1%以下と低く、生体の免疫機能に関与していると考えられていますがはっきりとした存在意義や能力は不明です。しかし、ミドレンジャーは戦闘能力が高いので、秘めたる能力があるかもしれません。


ゴレンジャーなら「5人揃っての必殺技『ゴレンジャーストーム』や『ゴレンジャーハリケーン』はないんかい?」などという突っ込みも入るかもしれません。しかし、未知なる小宇宙である体内のこと、思いもしない事実が今後解明される可能性も否定できません。


■参考サイト
Wikipedia(秘密戦隊ゴレンジャー)

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