明らかな間違いもグレーゾーンも存在する
辞典にない読み方は間違い
A:情報の質について確かめるのは大変立派なことです。杏華の読み方は「きょうか」が正しく、その他は間違いです。翔の字も本来は「と」とは読まないのですが、「とぶ」と読む字だと思われることも多く、最近は「大翔」でヒロトと読む名前も大流行しています。
法律上決められたものではない
漢字の読み方には、音、訓、名乗りの3通りがあります。名乗りというのは人名に限って使える読み方で、たとえば美の字は名前の中ではほとんど「ミ」と読まれますが、このミという読み方は音でも訓でもなく、名乗りです。漢字の読み方は、常用漢字の場合は常用漢字表によって音と訓が公式に示されてはいます。ただ翔のように常用漢字でないものは、公式に読み方は決められてはいません。辞典を作る際は過去に使われてきた実績、頻度というもので読み方が決められますが、それでも辞典によってそれほど大きな違いが出ることはありません。ただしある時代に大流行した読み方があれば、それが次第に市民権を得て社会的に認定されてくる、ということは起き得ます。
翔は本来「とぶ」という読み方は無かったのですが、過去には「かもめが翔んだ日」という歌や、「翔んでる寅次郎」という映画が作られ、「翔ぶが如く」という小説が大河ドラマにもなり、翔が「とぶ」と読む字だと思う人も増えて、最近は翔を「と」と読ませる名前も流行しています。事実、翔の字に「とぶ」の読み方を載せている辞典もあり、一部とはいえ辞典に載せられたら、全くの間違いとも言えなくなるわけです。
法律や役所の事務は基準にならない
もちろんいかなる辞典にも載っていないふりがなの名前は、はっきり間違いということになります。ただし読み方については役所に審査義務は無いため、多くの場合出生届は受理されているようです。ただ何のために名前をつけるかという基本に立ち返れば、名前の読み方というのは辞典とか役所の事務だけで考えるものではなく、常識で読めるかどうかが一番大切であることは言うまでもないことです。どの辞典にも載っている正しいふりがなであっても、誰にもわからないような読み方の名前は、社会で名前としての役目を果たさなくなります。ましてや漢字の読み方を勝手に決めて人に強要する権利は誰にもありませんから、間違ったふりがなの名前は、他人がどう読んでも文句は言えなくなります。
ただし杏華をホノカにしたために誰にもわからず、あまりに不便でしたら、キョウカという正しい読み方にするのは簡単です。字を変えないなら改名の手続きは必要ありません。