新しい『相棒』への舵を切った『相棒』
『ダークナイト』というタイトルだけで『相棒』らしくない印象。甲斐亨(成宮寛貴)の作品からの卒業も重なって、視聴者の期待値が最高潮となっていたこともあり、放送終了後はネット上で様々な思いがつづられ、『相棒』への注目度の高さを改めて感じました。しかし、今回は疑問を投げかける感想が多かったことも事実です。確かに甲斐亨はあさはかであり、その心情は掘り下げきれていません。わかりにくさと言っていいでしょう。ただ、彼の“若気の至り”では説明のつかない“やってしまったコト”に対する 杉下右京(水谷豊)、甲斐峯秋(石坂浩二)、角田課長(山西惇)、大河内監察官(神保悟志)の言動には『相棒』の原点を感じます。
前代未聞の事態に対しあたふたすることなく、毅然とした姿勢を貫いたところや、正義を優先させながら甲斐亨に寄り添おうとするところは、まさに『相棒』。何よりも息子・甲斐亨の真実にたどり着こうとする甲斐峯秋が、杉下右京に畳みかける鋭利な言葉はズキズキと心に響きました。
今後、杉下右京がどう復帰するかも実に興味深く、そう意味では、この最終回は成功したと言えるのかもしれません。
作品のテーマを提示し視聴者をグッとひきつけた
『ウロボロス~この愛こそ、正義。』
最終回に作品のテーマを明らかにするパターンは先述の通りです。そしてテーマが浮き彫りになったと同時に、登場人物が封印してきた切なさが溢れ出すのも最終回と言えます。『ウロボロス~この愛こそ、正義。』では、抱え続けた切なさがどこに向かうのか、抱えたまま帰結するのか、ずっと気になるところでした。主人公の龍崎イクオ(生田斗真)と段野竜也(小栗旬)がまっとうしようとした生き方を最後に「もういいよ」と押し殺す。そこに”正義”の奥深さが見えます。しかし切ない。
視聴者が切なさに心を震わせたまま終えるには、脚本、演出、そして俳優陣の哀しみを演じるチカラ、すべてが必要になります。謎解きにとどめなかった作品の力量は予想外を成立させた最終回だと言えるでしょう。
すべての視聴者が満足する最終回をつくることは非常に難しいことです。予想通りの最終回に「やっぱりな」と冷ややかな感想を持つ人もいれば、あっと驚く予想外の最終回に「無理がある」と分析する人もいます。
予想通りの安堵感をよしとするのか、後味の悪い予想外を突きつけるか、つくり手にとっては悩ましい問題です。しかし、この二者択一をさらに越えた新しいカタチの最終回に挑む作品も見てみたいと思います。