W杯予選を見据えて31人でスタート
23人で構成されるのが通例の代表チームにおいて、31人を招集した理由とは?
フィールドプレーヤー20人とゴールキーパー3人の23人にすれば、紅白戦をやる場合も無駄がない。ワールドカップのような国際大会も、1チーム23人で構成される。
就任後初のテストマッチに、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督(62歳)は31人の選手を招集した。なぜ彼は、かくも多くの選手を呼び寄せるのか。
ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の指揮官は、日本人選手について十分な情報を持っていないからである。彼自身も「本来であれば、もっと多くのこと知ってから代表のリストを作るべき」と話しており、アルベルト・ザッケローニ元監督当時からお馴染みのメンバーが顔を揃えている。
それも当然の判断だ。
日本代表が次に集合するのは、6月のロシアW杯アジア予選である。つまり、公式戦だ。組み合わせは4月に決まり、シード国の日本がいきなり強敵と当たることはないものの、確実に勝点をつかまなければいけないゲームである。ドラスティックなまでにメンバーを入れ替える時間的余裕はないのだ。
同時に、これまでのチームを基本的に踏襲しても、2018年のロシアW杯を見据えることはできる、という計算も立つ。35歳の遠藤保仁(ガンバ大阪)が落選したのは、2018年もいまと同じレベルを保てるか、国際舞台でチームに貢献できるか、との判断に基づいている。
ケガ人を招集した真意は?
そのうえで31人を選んだのは、チームのコンセプトを多くの選手と共有するためだ。3月27日にチュニジア、同31日にウズベキスタンと対戦する今回のテストマッチに23人で臨み、そのなかの数人を6月のW杯予選に招集できなくなると、チームのコンセプトに触れていない選手を新たに呼ばなければならなくなる。真剣勝負を戦うにあたって、不要なリスクを抱え込んでしまう。
膝に問題を抱えているDF内田篤人(26歳・シャルケ/ドイツ)、ケガで実戦から遠ざかっているDF長友佑都(28歳・インテル/イタリア)、MF今野泰幸(32歳・ガンバ大阪)をあえて招集したのも、「彼らがどんな状態なのかを知りたい。我々の目的を彼らに知ってもらいたい」(ハリルホジッチ監督)との狙いからだ。
実績や経験よりも「いま」を重視
今回のメンバー発表では、ハリルホジッチ監督らしい特徴的な手法がもうひとつあった。31人のメンバーがケガをした場合に備えて、12人のバックアップメンバーをあらかじめ発表したのである。「グループは大きいというメッセージだ」と、ハリルホジッチ監督は説明する。「欧州でプレーする選手にも、Jリーグでプレーする選手にも、色々な可能性がある。リストに入っていない選手に対しても、準備をしておいてほしいというメッセージだ。これから競争が始まることを、すべての選手に心得てほしい」
ザッケローニ元監督も、ハビエル・アギーレ前監督も、「すべての選手に代表入りの可能性はある」とか、「代表の扉はつねにオープンだ」と話した。だが、実際はメンバーが固定されていた。
ハリルホジッチ監督は、ポジション争いがあることをはっきりと明言した。
「私が期待したいのは、各ポジションで競争があること。あらかじめ決まっているベストメンバーはない。良いプレーをしていれば、私は呼ぶ。スター選手にとって代わる選手に期待しているし、私はグループとして勝つことを期待している」
横一線からのスタートが始まる、というメッセージである。実績と名前にとらわれない選手起用を、ハリルホジッチ監督には期待したい。
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