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アギーレ氏が日本代表新監督に選ばれた理由と疑問

ブラジル・ワールドカップの敗退からほぼ一か月が経過し、日本代表の新監督が決定した。メキシコ人のハビエル・アギーレ氏の就任が発表されたのだ。アギーレ氏はどのような人物で、どんなサッカーを目指すのか。そもそも、なぜアギーレ氏なのか。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

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選手、監督としてW杯を経験したアギーレ

ハビエル・アギーレが日本代表新監督に選ばれた理由を考える。

ハビエル・アギーレ氏が日本代表新監督に選ばれた理由を考える。

ハビエル・アギーレは1958年12月1日生まれの58歳で、現役時代はミッドフィールダーとして活躍した。1983年から92年にかけて代表チームに選出され、自国で開催された86年のワールドカップでは全5試合に先発出場している。

引退後はメキシコ国内のクラブで監督を務め、2002年の日韓ワールドカップでは代表チームを率いた。日本を舞台としたイタリア、クロアチア、エクアドルとのグループステージを、、アギーレのメキシコは2勝1分けの首位で通過する。しかし、決勝トーナメント1回戦でアメリカに敗れ、ベスト16に終わった。

日韓ワールドカップ後はリーガ・エスパニョーラ(スペイン)のオサスナの監督に就任する。ここでアギーレは、監督としての名声を高めた。

予算規模の大きくないクラブを1部に留まらせ、就任3シーズン目には国内カップで準優勝を果たす。翌05-06シーズンには、クラブ最高となるリーグ4位タイ──これは現在も破られていない──へオサスナを導いたのだった。

こうした実績を評価され、翌シーズンからはスペインの強豪アトレティコ・マドリードの監督となる。国内2強のレアル・マドリードとバルセロナの牙城を切り崩すことはできなかったが、在任中はリーグ上位をキープした。ちなみに、セレッソ大阪に在籍するディエゴ・フォルラン(35歳)は、当時のアトレティコの得点源である。

最終的にはアトレティコ・マドリードを解任されるが、アギーレを必要とするチームはすぐに現れる。南アフリカ・ワールドカップ予選で苦しむメキシコ代表が、再び彼を頼ってきたのだ。

チームを予選突破へ導いたアギーレは、本大会でも采配をふるった。

ホスト国の南アフリカ、前回準優勝のフランス、南米の古豪ウルグアイと同居したグループを、アギーレ率いるメキシコは2位で通過する。だが、決勝トーナメント1回戦でアルゼンチンに1対3と屈し、アギーレのワールドカップはまたしてもベスト16で幕を閉じた。大会後は選手選考と選手起用を批判され、メキシコ代表を去ることになる。

その後はイングランド・プレミアリーグのクラブへの興味を明らかにするが、オファーは届かなかった。南アフリカ・ワールドカップ後の4年間は馴染み深いスペインのクラブを率い、現在に至っている。


メキシコは日本の「優良なサンプル」

日本サッカー協会は、なぜアギーレに興味を抱いたのか? 大きな理由にあげられるのが、サッカーの共通点である。

メキシコ代表は、大型チームではない。ボクサーやプロレスラーでも、軽量級の選手が多い。近年は身体のサイズに恵まれたサッカー選手が増えているが、長身選手をズラリと並べたり、重量感のある選手を頼りにしたチーム作りはしてこなかった。ブラジル・ワールドカップに出場した23人を見ても、身長160センチ台の選手が4人、同170センチ台が11人と、チームの半分以上を占めている。

伝統的に高さや強さを強みとしないメキシコが、よりどころとしてきたのは個々が持つテクニックであり、攻守にわたる組織的なプレーである。日本代表との共通点は多い。メキシコがかねてから「日本サッカーの優良なサンプル」と見なされてきた理由である。

ブラジル・ワールドカップに出場した23人を、所属クラブから見てみる。ヨーロッパのクラブに在籍しているのは、3分の1以下の7人だ。国内でプレーする代表選手が多いのは、今回に限ったことではない。そうしたなかで、1990年から2014年まで6大会連続でワールドカップのグループステージを突破している。世界のベスト16の常連となっているのは、日本が大いに参考にするべきところだ。


ザックになくてアギーレにあるもの

アギーレ監督が2度のワールドカップを経験していることも、代表監督を選定する日本サッカー協会には魅力的に映ったはずだ。

アルベルト・ザッケローニ前監督は、クラブレベルでの実績が豊富な一方で代表監督を務めるのは初めてだった。当初は問題視されなかったザックの経歴は、最後の大一番でクローズアップされる。先のブラジル・ワールドカップにおける采配は、チームを苦境から救い出すには至らなかった。

ブラジル・ワールドカップのグループステージで日本が敗退した直後から、アギーレ監督は新指揮官の本命と言われてきた。それだけに、正式発表は規定路線のようにとらえられているが、そもそもアギーレこそが最適任者なのか?

アギーレと日本サッカーには、これまでほとんど接点がない。国内外での選手のチェックから始めなければならず、チーム作りには時間がかかる。結果が出なくても、「まだ選手を把握している時期だから」といったエクスキューズがまかりとおる。

アギーレには「悔しさ」もない。

ブラジル・ワールドカップで我々日本人が感じた悔しさ、歯がゆさ、痛みは、4年後のワールドカップへ向けたモチベーションの核となるものだ。

それだけに、日本人監督にチームを託すという選択肢があってもいいと、僕は感じていた。


日本人スタッフの入閣を!

日本サッカー協会とアギーレとの契約内容は、まだ明らかにされていない。これまでと同じなら、契約年数が公表されない可能性がある。次回のワールドカップまでの4年間を、無条件にアギーレに託すのは反対だ。1年おきに仕事ぶりを精査し、契約を更新していくべきである。

アギーレとともに発表されたコーチングスタッフに、日本人の名前はない。アギーレのファミリーで固められている。

アギーレの仕事ぶりに間近で触れる日本人がひとりもいないと、彼とともに過ごす日々が財産として残らない。入閣が噂されるU-21(21歳以下)日本代表の手倉森誠監督を、必ずスタッフに加えるべきだ。ロンドン五輪のアジア予選突破を目ざす手倉森監督にとっても、メキシコ人監督との交流は刺激になるはずである。

新監督の初陣は、9月6日のウルグアイ戦に決定した。4日後にはベネズエラとの一戦も組まれており、10月と11月にも2試合ずつが予定されている。

日本サッカー協会の決定を尊重しつつ、アギーレ監督の仕事を慎重に見定めていきたい。結果を問われないテストマッチにも、未来へのヒントは隠されているからだ。
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