歯周病

20代から進行する出っ歯「フレアーアウト」とは?

特に40代以降になると20代の頃より前歯が「出っ歯」になっている人がいるのをご存知ですか。変化がゆっくり起こるため自覚しにくくいのですが、昔より歯並びが悪くなったと感じるようであれば要注意です。その原因について解説します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

そもそも「フレアーアウト」とは?

フレアーアウト

歯がいつの間にかに前方に倒れていることがある

フレアーアウトとは、前歯の歯並びが前方に放射状に倒れていく現象です。それまできちんと並んでいたはずの歯並びが、年齢とともに徐々に前方に突き出るようになる「出っ歯」や歯と歯の間隔が次第に開いてくる「すきっ歯」になっていきます。

痛みもなく非常にゆっくりと進行するため、自分では気づかないことが多く、30~40代になってから、そういえば前歯の歯並びが昔と違う?と思うことが多いのです。噛み合わせなどが原因で起こる現象のため、就寝中に歯ぎしりを行っている場合だと、かなりの確率でフレアーアウトが起こっていると考えられます。


フレアーアウトの発生要因とは?

移動力の源は「噛み合わせ」の力
フレアーアウトになる歯を作る出す力の大元は噛むときに発生する咬合力です。実は普通の人で前歯で約15kg、奥歯で60kgの咬合力が発生しています。就寝時の歯ぎしりではそれ以上の力がかかります。この力とあごの動きが歯を前方へ押し出す力の源です。

長期で持続的な力の環境
歯は少しぐらい裏から押した程度では、簡単に移動することはありません。あくまで持続的な力を長期間にわたって受けた場合に移動が起こります。このため前後の噛み合わせのバランスが狂ってきたり、歯の形態があごの動きとマッチしなくなったりすると、常に同じ方向に許容を超えた力が加わり、歯の移動が起こってくるのです。毎日の就寝時に比較的長時間に渡って比較的強い力で歯がぶつかり合うことが多い「歯ぎしり」などは、大きなリスクとなります。

移動させないための力の減少
歯を保持している骨の減少する歯周病などが進行すると歯がぐらつくようになりわずかな力で歯が移動するようになります。歯周病が進行するとフレアーアウトが起こりやすくなりがちです。

歯の本数の減少
奥歯の上下の噛み合わせをペンチのようなものと例えると、前歯の噛み合わせはハサミのような物です。決して垂直方向に力がかからないため、噛めば噛むほどすれ違いが大きくなり横方向に力が発生します。正常な噛み合わせでは、ハサミが食い込みすぎるのを防止するために奥歯が垂直的にぶつかりあって前歯のすれ違いを制限しています。

噛み込みが深い前歯
前歯の噛み合わせで、下の前歯が上の前歯の根元(歯と歯茎の境目付近)にぶつかっている場合は噛み込みが深いと言えます。ハサミでいえば、すれ違い部分が広く幅の大きな状態です。食べ物をしっかり切ることができますが、それだけ歯ぎしりなどの動きに対して逃げ場がなくなりフレアーアウトが起こりやすい状況になりがちです。


フレアーアウトの治療について

あごの動きを中心に歯を考える
フレアーアウトはあごの動きから見ると、あごが動きたい方向にある邪魔な歯を押したり傾けたりしてあごが動きやすい状況を作っていることになります。歯は審美的な問題と起こしていきますが、あごの動きにとっては居心地が良い状態とも言えます。フレアーアウトの改善させるときは、このあごが心地よい状況はそのままで、あごの動きに調和した歯並び、歯の形態、噛み合わせにすることが大切になります。

審美的な回復が期待できる
前歯が出っ歯やすきっ歯になることが多いため、矯正を行い改善を目指す場合と、すでにかぶせ物になっている場合には、かぶせ物で審美的改善を行うことができます。

噛み合わせの調整は基本
上下の歯の形態を少し削って修正することで噛み合わせの力のかかるポイントが変更できるため、小さなフレアーアウトであれば、噛み合わせの調整で改善することがあります。

フレアーアウトでは顎の動きを範囲内で歯の形態や位置を考えていくため、治療後の歯の形態に特徴があります。かぶせ物で回復させる場合には、突き出た前歯を被せ物で元に戻すと、歯の上下の長さ(高さ)が短くなります。

前歯が突き出て伸びていればいるほど、かぶせた後の歯が小さく感じるようになるのです。これは前歯が出て気になっている人に対しては、メリットになりますが、それまで馴染んだ歯の大きさが小さくなるため、前歯の大きさが物足りないと感じることもあります。しかし顎の動きを無視して、審美的形態を優先させれば、いずれかぶせ物の一部が破損するか、再びフレアーアウトを繰り返すことになるので、注意が必要です。


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