新しくなったスイスの交通割引パス
鉄道、バス、湖船がカバーするネットワークは、スイス全土2万キロに及ぶ
鉄道、バス、湖船、登山電車など各種の交通機関が全国隅々まで張り巡らされているスイス。スイスは個人旅行をする人に最適な国と言われますが、この高度に発達した交通ネットワークが重要な役割を果たしています。スイス国鉄を中心とするスイス全土に張り巡らされたこのネットワークは、「スイストラベルシステム」と呼ばれています。
海外で鉄道を利用する時、まず心配になるのが切符の購入ではないでしょうか? 現地の窓口では行き先に加え、人数、座席の等級(1等か2等から)、片道か往復か、など間違いのないように伝える必要があります。これを英語、または現地の言葉でとなるとそれだけで気が重くなりそうです。
でもスイスではそのような心配は必要ありません。鉄道はもちろん、バスや湖船などを一枚のパスで利用できる交通割引パスが用意されています。数種類の違うタイプのパスがあるので、移動のパターンに応じて最適なパスを選ぶことができます。
2015年よりこの数種類のパスの内容と名称が大幅に変更になりました。ここでは新しくなったスイストラベルシステムのパスの特徴を紹介。なるべく便利で経済的に賢く旅行するための参考にしていただければと思います。
なお、スイストラベルシステムのパスは、スイス国外からの旅行者向けのパスのため、スイスとリヒテンシュタインの居住者は購入できません。
スイストラベルパス: 連続した毎日、たくさん列車に乗る人に
まず交通割引パスの代表格となるのが、スイストラベルパス。2014年までは、単にスイスパスと呼ばれていたものです。スイストラベルパスは以下のような種類があります。利用できる日数: 3日間、4日間、8日間、15日間
等級: 1等、2等
子供(6~15才)とユース(16~25才)用の割引料金あり。
このパスを持っていれば、スイス国鉄の全ての路線に加え、多くの私鉄、バス、湖船、スイス75都市の市電や市バスが無料になります。また、多くの登山鉄道、ケーブルカー、ロープウェイなど山岳交通機関が原則50%(一部25%)の割引になる他、スイス全国480以上の美術館や博物館入場が無料になります。
パスの有効範囲マップ>>
スイスの鉄道は改札がありませんが、車掌による検札があります。このパスがあれば、切符の窓口に並ぶこともなく、そのまま列車に乗って検札時にパスを見せればOK。慣れてくればあっけなく思えるほど便利で簡単。氷河特急やベルニナ特急などの特別列車も有効範囲ですが、座席予約料金や車内でのランチ手配料金は別途かかります。
以下に記号を使って利用のイメージを図にしてみました。左から右まで30の記号がありますが、1~30日のカレンダーを表しています。
<スイストラベルパス4日間の利用イメージ:●=有効日>
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スイストラベルパスの特徴は、連続した毎日が有効という点。4日間や8日間など、毎日たくさん列車を利用する人に最適のパスと言えるでしょう。通用路線は原則としてスイス国内ですが、シャモニ・モンブラン~マルティニー間、ブリーク~ドモドッソーラ~ロカルノ間など、フランスやイタリア領内でも部分的に有効となる区間もあります。
スイストラベルパス・フレックス: 現地で臨機応変に予定を変えたい場合などに
全有効期間1カ月の中で、自由に選んだ日に使えるのがスイストラベルパス・フレックスです。スイストラベルパス・フレックスには以下のような種類があります。利用できる日数: 1カ月の中で、3日間、4日間、8日間、15日間
等級: 1等、2等
子供(6~15才)とユース(16~25才)用の割引料金あり。
<スイストラベルパス・フレックス4日間の利用イメージ:●=有効日>
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天候や体調など状況に応じて現地で臨機応変にスケジュールを組みたいという場合にお勧めのパスです。もちろん予定が決まっていても、例えばいくつかの山岳リゾート地で2~3泊、都市間の移動日は何日かあるという場合もこのパスが最適です。図のようにランダムに選んだ日(●印部分)に有効です。有効区間は、スイストラベルパスと同じですが、利用日以外の日の割引はありません。
スイストラベルパス・フレックス+ハーフフェアカードコンビ
スイストラベルパス・フレックスにハーフフェアカードを組み合わせたパスです。ハーフフェアとは英語で「半額」の意味。スイストラベルパス・フレックスの利用開始日から利用最終日までの間で利用しない日に、鉄道、バス、登山電車などを半額で利用できます。利用できる日数: 1カ月の中で、3日間、4日間、8日間、15日間
等級: 1等、2等
ユース(16~25才)用の割引料金あり。
<スイストラベルパス・フレックス4日間+ハーフフェアカードコンビの利用イメージ:●=有効日 △=半額適用日>
●△△△△●△△△△△△△△●△△△△△△△△△△△△△△●
このパスを持っていれば、空港と滞在地の往復や、都市間の移動に利用できます。こちらもランダムに選んだ日(●印部分)が有効で、利用日以外の△印の日も原則半額となります。日本人旅行者の多くの移動パターンに最も合ったパスかもしれません。
スイストランスファーチケット: 一ヶ所滞在型の旅行におすすめ
国境駅または空港駅から滞在地までの最初の移動日と、最後の滞在地から国境駅までは空港駅に戻る最後の移動日の2日間が有効になるパスです。有効期間は1か月。国境駅や空港駅の往復は列車を利用するけれども、あとはスキーやハイキングなどで一ヶ所にじっくり滞在といった旅行にお勧めです。滞在地では、ユングフラウパスなど地域限定のパスを購入すると良いでしょう。
国境駅(空港駅)~滞在地間の移動は、最短ルートを選ばなければなりません。迂回するルートでは使えないので注意が必要です。最短ルート上でその日のうちの移動なら途中下車もできます。
なお、最後に移動日に向かう国境駅(空港駅)は、最初の移動日で出発した国境駅(空港駅)と別の駅でも大丈夫です。例えば最初の移動日はチューリヒ空港駅から出発。グリンデルワルトに数日間滞在した後、最後はジュネーヴ空港駅に抜けるといた場合も利用できます。
利用できる日数: 1カ月の中で2日間
等級: 1等、2等
子供(6~15才)用の割引料金あり。
<スイストランスファーチケットの利用イメージ:●=有効日>
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極端に言えば図のように、1カ月以内であれば1日と30日のようにどれだけ離れた2日を選んでも有効です。
スイストランスファーチケット+ハーフフェアカードコンビ
スイストランスファーチケットにハーフフェアカードを組み合わせたパスです。このパスを持っていれば、最初の移動日と最後の移動日の間の日(下図△印)に、列車やバスなどが半額になります。2014年まで「スイスカード」と呼ばれていたパスと同じ機能を持ったパスになります。利用できる日数: 1カ月の中で2日間
等級: 1等、2等
<スイストランスファーチケット+ハーフフェアカードコンビの利用イメージ:●=有効日 △=半額適用日>
●△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△●
滞在地に適当な地域限定パスがない場合や、滞在地は数カ所あるので長距離の移動日が何日からある場合などにお勧めです。
スイスファミリーカード
いままでご紹介したパスの多くには子供割引が設定されていますが、家族旅行の場合、あわてて子供の分のパスまで購入しないようにしましょう。ご両親またはどちらか片方の親が子供と一緒に旅行する場合、スイスファミリーカードがあれば子供は無料になります。親はスイストラベルシステムのパスを購入することが条件です。車掌が検札に来た時に、親が持っているパスと一緒にファミリーカードも提示します。
ただし子供は15才以下が対象。子供の人数に制限はありません。もしご旅行開始の時点で16才になっている場合は、ユースまたは大人のパス料金になります。スイストラベルシステムのパスを購入時にスイスファミリーカードをリクエストすれば、無料で入手できます。
ユングフラウパス/ユングフラウVIPパス
ユングフラウ地方では、夏季、2種類の地域限定パスを発売しています。■ユングフラウパス(6日間)
連続する6日間のパスで、ユングフラウ鉄道がカバーする展望台へ、無料または割引料金で行くことができます。発売は5月から10月中旬まで。ユングフラウヨッホへ上がる登山電車は通年運行ですが、それ以外の展望台へ上がるゴンドラなどは、5月のシーズン初めや10月のシーズン終わりの時期は運行を停止していることがあるので、事前に時刻表を確認しましょう。
ユングフラウ地方に一週間ほど滞在し、その間観光やハイキングなどで毎日のように展望台に上がる場合は、このパスの購入がお勧め。現地でその都度切符を購入する手間も大幅に省くことができます。
<利用可能区間>
インターラーケン ~ グリンデルワルド ~ クライネシャイデック (登山電車)
インターラーケン ~ ラウターブルネン ~ クライネシャイデック (登山電車)
クライネシャイデック ~ アイガーグレッチャー (登山電車)
ヴィルダースヴィル ~ シーニゲプラッテ(登山電車)
グリンデルワルド ~ フィルスト (ゴンドラ)
インターラーケン ~ ハーダークルム (ケーブルカー)
ウェンゲン ~ メンリッヒェン(ロープウェイ)
グリンデルワルト ~ メンリッヒェン (ゴンドラ)
グリンデルワルド周辺のバス路線
ラウターブルンネン ~ ミューレン (ロープウェイ/山岳鉄道)
グリンデルワルド ~ フィングシュテック(ロープウェイ)
<50%割引区間>
アイガーグレッチャー ~ ユングフラウヨッホ (登山電車)
スイストラベルパスまたはハーフフェアカードを同時に購入する場合は、パスの割引料金が適用されます。
■ユングフラウVIPパス(3日間)
有効期間は3日間と短くなりますが、ユングフラウヨッホまで追加料金なしで上がることができます。3日間でユングフラウヨッホに加え、シーニゲプラッテやフィルストなど合計3ヶ所以上の展望台に上がる場合は、このパスがお勧めです。
<利用可能区間>
インターラーケン ~ グリンデルワルド ~ クライネシャイデック (登山電車)
インターラーケン ~ ラウターブルネン ~ クライネシャイデック (登山電車)
クライネシャイデック ~ ユングフラウヨッホ(登山電車)1往復分のみ
ヴィルダースヴィル ~ シーニゲプラッテ(登山電車)
グリンデルワルド ~ フィルスト (ゴンドラ)
インターラーケン ~ ハーダークルム (ケーブルカー)
ラウターブルンネン ~ ミューレン (ロープウェイ/山岳鉄道)
スイストラベルパスまたはハーフフェアカードを同時に購入する場合は、パスの割引料金が適用されます。
結局どのパスが一番割安?
これまでご紹介したようにいくつもの種類のパスがあるため、どのパスを選べば良いのか迷う場合もあるでしょう。「結局どのパスを選べば一番良いの?」と聞きたいかもしれません。各々のパスの特徴をよく把握した上で、最後は自分で選ぶことになります。正確に比較検討したい場合はパスの料金に加え、山岳交通機関の割引後の料金など現地でかかる費用を計算することになります。山岳交通機関の割引後の料金は、スイス国鉄や私鉄各社のホームページで調べることも可能です。
パスの購入方法
パスの購入は、日本の取扱い旅行会社で可能です。オンラインでも購入可能。「スイストラベルパス」で検索してみましょう。パスの料金は旅行会社によって微妙に異なりますが、あまり大きな差はないようです。毎月為替レートの変動に応じて、日本円での販売価格も変わります。複数のサイトを比較検討するなどして、購入手続きを進めましょう。今年から旅行会社によっては、eチケットでの発券も可能になっています。
パスのヴァリデート
パスは実際に使用を開始する前に、ヴァリデートと呼ばれる手続きが必要です。「手続き」というと面倒に感じますが、とても簡単。現地の駅の窓口でパスとパスポートを提示。係員は名前を確認した後、パスにスタンプを押して戻してくれます。国際列車でスイスに入る場合は、車掌がヴァリデートの手続きをしてくれます。現地でのヴァリデートがそれでも不安な場合は、日本での購入先でその手続きを代行している所もあります。ただし一度ヴァリデートしたパスは、万一旅行がキャンセルになった場合でも払い戻しができないので注意が必要です。