優良ストック住宅推進協議会は2008年7月、大手ハウスメーカー10社および流通グループで結成された団体。「安心して中古住宅が買える世の中にすべく、適正な基準をもとに「スムストック査定」を行い、良質な中古住宅の流通促進を行っています。

ハウスメーカー10社で7年前に結成

シンポジウム

大勢の業界関係者が集ったシンポジウム

どちらかというと、これまで新築をメインに事業を行ってきた大手ハウスメーカーがなぜ?と疑問に思う人も多いかもしれません。主たる理由は急速な少子高齢化。人口減に伴い空家も増え、新築から中古へ軸足を移行していく国の住宅政策に呼応する形で、縮小する新築市場からストック市場へと、民間産業のほうも変化しているのです。

シンポジウムでは、坂根工博・国土交通省住宅局住宅政策課長から、人口変化と高齢者世帯の増加、無居住化地域の拡大、一次取得層である30代が年収が下がっていて相対的に住居費が占める割合が増えていることなどの実態が紹介されました。

パネルディスカッション

専門家を交えて議論されたパネルディスカッション

このほか、各専門家を交えたパネルディスカッションも行われましたが、ガイドが興味深いと思ったのは、中川雅之・日本大学経済学部教授の話です。中川教授は現在の日本の空家を、仮に日本人全員が住んでいけば、現在「ウサギ小屋」という狭い家に住まわざるを得ない日本人の一人当たり床面積は、計算上、イギリスの41平方メートル/人、ドイツの43平方メートル/人を抜いて、47平方メートル/人という世界でも屈指の広い住空間を享受できる国となるそうです。

ただし計算上はそうなりますが、実際には東京と地方の離れた空家を物理的にくっつけることは当然難しいので、実際は複数の拠点に複数の住宅をもつ形になるであろうということです。複数の住宅を持つことで日本人のライフスタイルはどう変わるでしょうか?

相続で3住宅をもつガイドの私見

ここからガイドの私見。このシンポジウム、私は自身のことを重ねあわせて聞いていました。実は私たち夫婦は3つの住宅を所有しています。そもそもそんなに所有しようとなど全く思っておらず、相続で自然と増えていきました。

都市の家

都市の家は仕事と子どもの教育の拠点(写真はイメージ)

1戸目は20代の時に夫と購入した当時新築の持家マンション。2戸目は、夫がそこで育ち亡き母が住んでいた築40年郊外マンション。そして3戸目は、私が生まれ育った地方の注文戸建(築50年)です。2戸目、3戸目は自然な成り行きで私たちが相続して所有者になりました。

相続後売却という選択肢も当然あったのですが、私たち夫婦にとって2戸目も3戸目も生まれ育った思い出深い家。築年数も経っていますから戸建の場合は当然スクラップされるでしょう。それが分かっていた私たちは、税金や維持する手間などが増えるかもしれませんが売却はせずに当面所有しておこうということになりました。

複数の家で生活にメリハリも

複数の住宅を持つことで手間や面倒がどれほど増えるかと戦々恐々としていましたが、実際にはメリハリの効いた生活になりました。まず東京のマンションは夫婦にとって仕事に行き来しやすい利便性、子どもにとってはより良い学問を受けるための教育の場として必要な場所。しかし、3LDKマンションのため部屋数や収納が限られてしまいます。都市の利便性と広さはどうしてもトレードオフの関係になります。

そこで、電車で1時間ほどのところにある義母のマンションを活用。不要になったけど捨てられない子どもの学用品や図工作品、本、おもちゃなどはそこに収納しています。子どもにとっては捨てられるよりは「おばあちゃんの家に置いてある」ことでかなり心のよりどころになっているようです。

空地

売却して空地にすれば生まれ育った思い出も消えてしまう?(写真は空き地イメージ)

また3戸目の地方の戸建は50年前、当時のハウスメーカーで建てた家。躯体はまだもちそうだという大工さんと相談し、屋根と開口部をリフォームし、最低限雨風をしのげるように手入れしました。私ははからずも、建築当初に長年持つスケルトン躯体にしておく重要性を身を持って体感しました。

そこでは親たちが眠るお墓にお彼岸にお参りする時や、東京の都市生活から気分を替えたい時、また子どもや姪っ子甥っ子が夏休みに集まって「いとこたちが落ち会って土や自然に親しむ場」としてセカンドハウス的に利用しています。

いかがでしょうか。築数十年経っていますから売却すれば二束三文にしかならない住宅資産も、保有している間は資産性は持続し、かつ子どもや孫たちに家族の履歴を残す場としての価値も生まれます。長く続いた「1家族1住宅」時代が終わり、「1人2-3住宅所有」の時代が到来する日も近いですが、金銭的価値だけでなく、こうした情緒的価値をもっと訴えていく必要があるのかもしれません。
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