親との関係に固執しない
父親との関係が良好だという現状と、未婚女性が増えているという現状を結びつけたがるのは無謀だと思う。ただ、あまりに父親との関係や、自分が生まれ育った環境からくる家族観に執着しすぎると、確かに結婚はしづらくなるかもしれない。理想は自分が育った家庭
カヨさん(29歳)はため息をもらす。
「私の理想は、自分が育った家庭だったんです。いつもみんな仲良くて、両親は優しくて。だから自分もそういう家族を作りたかった。だけど夫は家族にめいっぱい愛情を注ぐというより、自分が仕事に邁進するタイプ。ありがたいけど、ときどき寂しくなります」
親たちが若かったころと現在とでは、経済状況も社会のシステムも異なっている。カヨさんの夫は30代にして子会社に出向させられている。ここで成果を上げれば本社に、しかも出世して戻れるのだという。夫にとっては今後が決まる正念場だ。家庭に目が向かなくなってもしかたがないのかもしれない。
「わかりますけど、週末もうちはいつも母と子だけで過ごしてる。だからついつい実家にばかり帰ってしまうんですよね。あそこには私のすべてがあるから……。たまに夫に言われます。実家に固執しすぎだって」
夫も心のどこかで悪いなと思っているのだろう。自分が「家族」に対して、妻が望むような愛情を注げないことに忸怩たるものがあるのかもしれない。
「実家にばかり帰っているから、夫は親離れしていない幼稚な妻だと思っているようです。でも、今になると思うんですよね。私もお父さんのような人と結婚すればよかった、って……」
目の前の人と、どうやっていい家庭を築いていこうかと価値観やら習慣やらをすりあわせながらやっていくのが結婚だと思うが、カヨさんは「できあがった男性」である父親に固執する。
仲の悪い家族より、仲のいい家族に囲まれて育ったほうがいいに決まっている。だが、育った家庭では、あくまでも自分は「子どもの立場」だったのだ。今度は自分が男性と対等の立場での「恋人」であり、結婚後は「妻」であり、「母」という立場。父から愛される娘、という立場からスイッチを切り替えられないままだと、つらいのは本人なのではないだろうか。
※アンケート調査出典
・カルピス(株)「20代独身OLのひなまつりに関する意識と実態」調査
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