住宅工法

多くの住宅メーカーが制震装置を導入している理由(2ページ目)

制震装置を導入するメーカーが増えています。以前は、オプション仕様として用意しているところが多かったのですが、最近では、標準仕様として施工する全ての住宅に採用している会社が目立ちます。それは、なぜなのか。最大の理由は東日本大震災の分析にありました。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド


「耐震」とは? 「免震」とは?

免震は「天才」、制震は「秀才」。違いはココ!でも説明しましたが、耐震、免震、制震について簡単におさらいしておきましょう。

「耐震」とは、地震の揺れに耐えることです。基礎や壁、柱、梁などを強化して地震の揺れに対抗します。建築基準法で定められている耐震基準があるので、これはどんな建物であっても守らなければなりません。

「免震」は地震のエネルギーを吸収し、揺れのを建物に伝えない装置のことです。基礎と建物の間に取り付けられ、条件にもよりますが、地震の揺れを数分の1までに軽減することができます。

コストパフォーマンスのよい制震

「制震」は、地震のエネルギーを受け止め、揺れの幅を軽減する装置のことです。変形や揺れによる建物の損傷を食い止め、人命の安全性を高めようとするのは免震と同じですが、揺れの軽減という点では、免震のほうが勝っています。

制震装置

ダンパーを用いた制震装置の一例。地震の揺れを幅を小さくします 写真/旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)

形状は製品によって異なり、ダンパーを用いたもの、高減衰ゴムや特殊鋼を使ったもの、アクリル樹脂を使ったものなどがあります。設置数は、住宅の規模やプランにもよりますが、1~数カ所ですむものがほとんどです。

また、軟弱地盤や液状化しやすい地盤の土地でも設置できるなど、免震に比べると、制約が少ないのも特長のひとつです。

免震と比較したとき、最もわかりやすくて、大きな特長は価格でしょう。制震装置は、製品や住宅の構造、規模やプランにもよりますが、免震装置の1/4から1/5の価格で設置できます。

余震による損傷の蓄積を防ぎ、住み続けられる家に

前ページで触れたように、東日本大震災では、本震の後にも大きな余震が繰り返し発生しました。建物が受けた力は相当なものです。最初の揺れには持ちこたえたとしても、度重なる余震によって、建物の損傷は蓄積され、構造などに問題が発生する可能性が高くなります。このことについては、大地震で残った家は大丈夫? ー阪神・淡路大震災編ーで、一例としてAさんの例を紹介しました。住宅のどこか一部に負荷がかかって問題が発生するのを防ぎ、地震の力を受けてもうまく受け流し、損傷を小さくしようというわけです。

そこで、住宅メーカーは、建物が倒壊しないだけでなく、繰り返される損傷の蓄積を防ぎ、住み続けられる家にするために、現実的な地震対策として、制震装置を採用するようになったのです。

制震装置を自社の住宅の標準仕様とすることで一定量の出荷が確保できるため、価格も抑えられます。さらに、制震装置が付いていることは他社との差別化もできるうえ、大きなアピールポイントになるでしょう。また、住宅性能表示制度で、耐震等級3を取得したり、長期優良住宅の認定を受ける際にも、制震装置は便利で都合のよい装置です。これらの理由から、制震装置を積極的に取り入れる住宅メーカーが増えたのだと思います。

これから家を建てる人は、制震装置などを採用することで耐震性を高めるとともに、耐火性にも留意して、たとえ、大地震があっても、長く住み続けられる家を建ててほしいと思います。

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