「冷え」とはいったい何なのでしょうか?
「冷え」=「悪」というイメージは当たり前になっていますが、実はあなたの不調は別のところに原因があるかもしれません
私が勤める院にご来院する女性のほとんどは、「冷えています」とおっしゃいます。実際に足を触り、脈をとり、舌を見ても冷えている症状はないものの、当の本人はそう感じているのです。また一方では、冷えているのに「冷えていない」という方もいらっしゃいます。本人の自覚症状を大切にするのか、それとも他覚症状を大切にするべきか……。
このように、「冷え」とはとてもあいまいなものなのです。
「冷え」に対して東洋医学はどうする?
東洋医学の「冷え」に対する治療方針は、単純に「温めれば良い」などとして決まるわけではありません。たとえば、赤ら顔で、血圧が高めで、太っていて、塩分や脂っこいものを良く食べている人。明らかに熱がこもっているタイプと診断できるため、本人が「冷えている」と言ったときであっても、「じゃあ温めましょう」ということにはなりません。むしろ、こういった方に熱を加えるような施術や食事、漢方薬を処方すると、熱があふれ、弱い場所から出血したり、血圧が上がる可能性もあります。
自然界に月と太陽(陰陽)があるように、人体にも陰陽があると考えられています。そして治療にも陰陽があり、「陰の病」であれば陽を補う処方、もしくは余分な陰自体を取り除く処方をし、「陽の病」であれば余分な陽自体を取り除く処方、もしくは陰自体を補う処方をします。
具体的には「冷えている」というのは、単純に体に寒さが多い(実寒)、温める力がない(虚熱)というふたつの考え方があります。また「熱い」というのも、単純にに熱が多い(実熱)、冷やす力がない(虚寒)という考え方があります。
同じ「冷えている」でも寒さを取り去るタイプと、温める力を高めなくてはいけないタイプがいます。寒さを取り去るなら清熱や瀉火、温める力を高めるには温陽などの方法を使います。
それと同じように、「熱い」でも熱を取り去るタイプと冷やす力を高めなくてはいけないタイプがいます。熱を取り去るなら清熱、温める力を高めるには温陽などの方法を用います。
冷えているのか、熱いのか、もしくは熱くも寒くもないのか、かつそれらがどのような状態にあるのか、判断をしなくては正確な治療をすることができません。そこで触診や視診、脈診や問診などにより、カラダに現れている変化をくまなく確認していく必要があります。
自分をしっかり見極めた生活スタイルを
最近、体に熱い反応が出ているにもかかわらず、さらに温めてしまっている方を多く拝見します。温かい上にさらに温めると、汗をかきすぎ、潤いが体から少なくなり、乾燥するようになるでしょう。結果、肌荒れや髪の毛の傷み・2枚爪・便秘・不眠・不妊・イライラ・ドライアイなどの症状が出ることが容易に想像できます。細かなチェックなしで、「とりあえず温めておけばいいでしょ!」という考え方は避けたほうが良いのは言うまでもありません。私の院では必ず自覚的、他覚的にくまなく体を調べ、そしてもっとも適したアドバイスを心がけるようにしています。
健康ブームの昨今、一面だけを見て勧められたやみくもな健康法ではなく、今の自分をしっかり見極めた生活スタイルを送ってほしいと思います。