食と健康/生活習慣病を防ぐ食事・レシピ

生か加熱、どっちが良い?野菜の「調理」の意味とは(3ページ目)

近年は「生食」や「ローフード」などがよく取り上げられるようになり、巷では「生」か「加熱」のどちらがよいのかを決めたがる傾向があります。今回は改めて「調理」することの意味を考えてみたいと思います。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

加熱することで量も摂取しやすい

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生のままででは吸収しにくい栄養成分も、調理することで吸収率が高まります。

サラダのように生野菜を食べるよりも、加熱したほうが量も摂りやすいという面もあります。

厚生労働省が推進する健康づくり運動「健康日本21」で1日の野菜の摂取量の目標量は350g以上としていますが、日本人の現在の野菜摂取量は、不足しがちです。

野菜をもっと食べなければ……ということはわかってはいるけれど、忙しいとどうしても調理する時間がないし、面倒になるという方もおられますよね。

そんな時には、市販の野菜ジュースや野菜スープ、トマトソース類などの加工品も活用しましょう。野菜ジュースでも糖分を加えていないものなど、最近は野菜本来の素材感や栄養を活かしたこだわりの製品も出回っています。

またリコピンなどの場合は、一般のトマトよりもトマトジュースやトマトケチャップの原料となる加工用トマトのほうがリコピン濃度が高い品種を使用しています。またリコピンは、脂溶性なので油脂類と合わせると吸収が良くなります。トマトソースは、オリーブオイルで煮込むので理にかなった組み合わせです。

リスクを減らす

加熱するメリットには、衛生面でのリスクを減らす、という面もあります。洗うだけでは殺菌できない食中毒の原因となる微生物を、加熱調理することで減菌・殺菌することもできます。

食中毒の原因となる微生物は、虫などと違って目には見えません。食中毒というと生肉や魚などのイメージが強く、野菜の方が食中毒菌に汚染されている確率は低いのですが、リスクはゼロではありません*3。家庭で他の食材や調理器具を経由して接する場合もあります。

これからの季節は暖かくなり、また日本の夏は湿度が高いので、様々なリスクを避けるためにも、生のまま食べる料理に偏らないことも大切です。

生か加熱、どっちが良い?

幅広い栄養成分をとるためには、昔から日本料理や中国や韓国の料理でも五味を揃える、という考え方があります。生か加熱か、どちらの方が優れているということではなく、味付けや調理も偏らずにバランスを取った方がよいということです。

こうした考え方で献立を考えると、幅広い食品を摂りやすくなります。「健康や美容によい」と話題になったからと言って、何か一つの食品や食べ方、調理に偏らないこと。そのことが、栄養バランスをとりやすくし、またリスクを回避することにもつながります。


参考/
・*1 Gartner et al., Am.j.Clin. Nutr.,66(1997)
・*2 Eur J Nutr.,42:338-345(2003)
・野菜の細胞壁と調理 (日本調理科学会誌Vol.28 No.4(1995)
・ビタミンC解説(健康食品の安全性・有効性情報)
・調理損失を考慮したビタミン・ミネラル摂取量の評価について(大妻女子大学家政系研究紀要)
・カロテノイドの多様な生理作用(食品・臨床栄養,2,*-*,2007)
カロテノイドの吸収と体内動態(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
*3 平成25年度食品の食中毒菌汚染実対調査の結果について(厚生労働省)
・その他

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