切羽詰った状況の助けになる制度
これからの生活、どうしよう…
2015年4月から「生活困窮者自立支援制度」が始まります。生活保護を受けるしかなくなるより前の段階で、自立した生活が出来るように支援する制度です。経済的な問題だけでなく、コミュニケーションが苦手で就職に不安がある場合の支援、子どもの学習支援など、様々な問題をトータルで考えて支援してくれるということです。
このような制度についての情報は、実際にこの制度を必要とする人にはなかなか届かないものです。PCもスマホも無い人もいれば、ネットカフェに住んでいても自治体のサイトを見る機会など無い人もいるし、社会とのつながりが薄れてしまっていている人もいるでしょう。もしもあなたの近くに生活に困っている人がいたら、ぜひこういった制度のことを教えてあげて欲しいと思います。
「生活困窮者自立支援制度」の内容
「生活困窮者自立支援制度」の内容は、以下のようになっています。(具体的なことは、都道府県や市にお問い合わせください)■あなただけの支援プランを作ります(自立相談支援)
「生活に困りごとや不安を抱えている場合は、まずは地域の相談窓口にご相談ください。支援員が相談を受けて、どのような支援が必要かを相談者と一緒に考え、具体的な支援プランを作成し、寄り添いながら自立に向けた支援を行います」
……生活困窮者が抱える問題は、経済的なことだけでなく、様々なことが複合的に絡み合っていることが多いものです。それらをトータルで相談できるところが、この制度の特長です。実際に制度が始まって、生活を根本から立て直せる人がたくさん出るよう望みます。
■社会、就労への第一歩(就労準備支援)
「社会との関わりに不安がある、他の人とコミュニケーションがうまくとれないなど、直ちに就労が困難な方に6カ月から1年の間、プログラムにそって、一般就労に向けた基礎能力を養いながら就労に向けた支援や就労機会の提供を行います」
……ひきこもってしまっている場合、働きたいという気持ちはあっても、外に出てみるきっかけがつかめない、自信がないということもあるでしょう。そういった人のための支援です。
■柔軟な働き方による就労の場の提供(就労訓練支援)
「直ちに一般就労することが難しい方のために、その方に合った作業機会を提供しながら、個別の就労支援プログラムに基づき、一般就労に向けた支援を中・長期的に実施する、就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)もあります」
■住居のない方に衣食住を提供します(一時生活支援)
「住居をもたない方、またはネットカフェ等の不安定な住居形態にある方に、一定期間、宿泊場所や衣食を提供します。退所後の生活に向けて、就労支援などの自立支援も行います」
……現状から早く脱出できるための支援があるという点に期待したいですね。
■家賃相当額を支給します(住居確保給付金の支給)
「離職などにより住居を失った方、または失うおそれの高い方には、就職に向けた活動をするなどを条件に、一定期間、家賃相当額を支給します。生活の土台となる住居を整えた上で、就職に向けた支援を行います」
……住居を失ってしまうと、働きたくても就職活動が困難になってしまいます。できれば、住居を失う前に相談に行き、就職活動に集中できるようにしたいものです。
■家賃相当額を支給します(家計相談支援)
「家計状況の「見える化」と根本的な課題を把握し、相談者が自ら家計を管理できるように、状況に応じた支援計画の作成、相談支援、関係機関へのつなぎ、必要に応じて貸付のあっせん等を行い、早期の生活再生を支援します」
……支援金の支給だけでは、一時的な効果はあるものの、生活そのものの立て直しには結び付きにくいかもしれません。根本からの生活立て直しのために、こういう支援がうまく機能するといいですね。
■子どもの明るい未来をサポート(生活困窮世帯の子どもの学習支援)
「子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、仲間と出会い活動ができる居場所づくり、進学に関する支援、高校進学者の中退防止に関する支援等、子どもと保護者の双方に必要な支援を行います」
……親の貧困が子どもの学習に与える影響は、進学費用の問題だけではありません。たとえば、親が低賃金の長時間労働に追われ、時間も気持ちも余裕がなくなり、家の中に物が散乱するなど生活環境が乱れていきます。親子が関わる時間も減っていきます。そのような中で暮らす子どもの生活習慣も乱れ、それが学習意欲の低下、学力の低下につながることがあります。貧困世帯の子どもが将来、自分も貧困に陥ってしまう(貧困の連鎖)ことを防ぐために、子どもの学習支援は重要なことです。
早い段階で、生活の立て直しを
頑張って、次の仕事を探すぞ!
この生活困窮者自立支援制度によって、ますます生活保護が受給しにくくなるのではないか、自立ありきの支援によって、自立が難しい人たちが保護からも支援からもこぼれおちてしまうのではないかなど、懸念する声もあります。すぐにでも働ける職場を探そうとすると、簡単に見つけられる仕事の中には劣悪な労働環境と言わざるを得ない職場もあり、それが本当の自立した健康的な生活を阻んでいるという現状もあります。またこの制度自体も、利用者の相談を受ける相談員の力量や、利用者と相談員の相性などによって、成果が大きく異なるようにも思われます。
さまざまな課題もありそうですが、まずはこういう制度があるということを知って、必要な時に活用できることが大切です。制度があるということを頭の隅においておき、友達が生活に困っていたら、自治体に相談してみてはどうかと教えてあげてください。