笑いと音楽 異色のタレント「とんねるず」
1980年のデビューから30年以上の長きにわたって芸能界の第一線を走り続けているとんねるず。彼らの本領はお笑いに違いないが、歌手としても数多くの作品を持ち、かつ時代の変化を敏感にキャッチしながら数々のヒット曲を生み出している異色のタレントだ。
彼らがこれほどまでに音楽方面で評価されてきた理由はなんだろうか。とんねるずとして活動していた時期はもちろん、野猿、矢島美容室などのユニット期、そして『憲三郎&ジョージ山本』などの企画モノも含め順を追って解説していきたい。
デビュー曲は横浜銀蝿提供の……?
とんねるずのデビューシングルは1981年の『ピョン吉・ロックンロール』。ノリのいい歌謡ロックンロール調のナンバーだが、なるほど作詞、作曲は当時人気絶頂の横浜銀蝿(※作詞は翔)。
アニメ『新・ど根性ガエル』(日本テレビ)のオープニング曲で、B面の『夢行きチケット』も同番組のエンディング曲だった。
とんねるず自体まだまだ一般的には『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ)の常連挑戦者というくらいの認識しかなかった時期と言うこともあり、あくまでアニメソングの枠を超える広がりはなかったようだ。
その後もなんとも前衛的なテクノ・コミックソング『ヤバシびっちな女(め)デイト・ナイト』(1982年)をリリースしたが大きな反響は無し。
世間の音楽的な流行にふりまわされている感もあるが、これはこれで面白いとんねるず音楽の黎明期といえるだろう。
『一気!』でつかんだ時代の波
テレビへの露出が増え、お笑いタレントとして一定の地位を築き始めた1984年。とんねるずはその音楽活動において大きなターニングポイントになる曲をリリースした。その名は『一気!』。
作詞を担当したのはとんねるずと時を同じくして放送作家、作詞家として急速に頭角をあらわしてきていた秋元康。
「飲まぬ下戸には ヤキ入れて……一気!一気!一気」
すさまじい内容だが、この曲はとんねるずが持つ"高卒キャラ"、"イケイケの1980年代感"といった魅力を余すところなく表現しており、かつ迫真すぎるオネエネタで木梨憲武の芸達者さを、そして『オールナイトフジ』(フジテレビ)で歌唱した際にテレビカメラを転倒させたことで石橋貴明の破天荒な破壊性を世に広く知らしめることに成功した。
オリコンランキングでは駆け出しのお笑い芸人としては快挙と言える週間19位を獲得。
この曲なくして以後のとんねるずの大躍進はなかった……というのは大げさに過ぎるかもしれないが、大きなプラスになったことは間違いない。
現在、本人たちは公にこの曲を自らの“デビューシングル”とみなしている。