ひな人形の本来の意味は、子供の健やかな成長を願うお守りです。イベントとして楽しむだけではなく、和の作法や風習を受け継いでいく場でもあります。子供の頃に触れた布の感触は、ずっと覚えているもの。できれば、上質なものを選んで贈ってあげたいですね
江戸時代初期から人形づくりが盛んなのは、埼玉県さいたま市の岩槻。人形の産地は他にも幾つかありますが、最も古い歴史を持ち、現代でも節句人形・ひな人形の出荷金額全国一は岩槻のある埼玉県です(平成24年経済産業省「工業統計調査」より)。岩槻人形優良店会の会長で株式会社工房天祥 代表取締役の齊藤大司さんに、現代おひなさま事情と、ひな人形の後悔しない選び方を教えていただきました。
いつから飾る? おひなさま
まずは、おひなさまを飾る時期。いつから飾るのが正しいのでしょう? 「基本的には節分が終わってから飾りますが、ご祖父母様が遠方に住んでいると3家族が集まれる機会が少ないので、初節句については全員の都合が合いやすいお正月や、1月や2月の連休の際に行う家庭も増えています」とのこと。ひな人形の予算はどれくらい?
ひな人形を買うとなれば気になるのは予算ですよね。ご祖父母様からのお祝い金がある場合、15万円~20万円が主流だとか。「ひな人形も五月人形も母方のご祖父母様が用意されるのが普通ですが、来客に対して恥ずかしくないものを、ということで、父方からと両親を含めて3家族で資金を出し合うことも少なくありません。ご両親が単独で購入される場合は、ケース入りのお手頃な価格のものも人気があります」。ひな人形の値段の違いって?
親王飾りという、お内裏様とお雛様のセットで、屏風やぼんぼりなどをつけて30万円前後のひな人形。身頃の部分もきっちり縫ってあり、これは本物の十二単衣の縫い方とほぼ同じ。後ろの部分は上に別の布がかぶさって見えないところですが、本物度は極めて高い! ここまでこだわっているものは少なく、多くは布をボンドで貼り合わせた簡単な作りになっているのだとか
ひな人形選びの視点
素材は気にせず全体的な雰囲気で決める場合、道具が気に入って段飾りを買い求める場合など、選び方はさまざま。「ひな人形は、もともとは子供の健やかな成長を祈願するお守りですから、ご両親やご祖父母様の気持ちが重要です。最近は、小さなお子さんが将来の嫁入り道具として持っていけるもの、という視点で選ばれる方もいらっしゃいます」。どこで買う? おひなさま
かつては人形店や百貨店で購入する人がほとんどでしたが、最近はかなり様子が違うそうです。「初節句を迎える小さなお子様を抱えながらの外出が難しいとか、実物のひな人形を見られるお人形屋さんが近くにない、といったお客様のご事情で、インターネットで購入される方が大半を占めるようになりました。工房天祥では、Amazon.co.jpなどのECサイトに出品しています」。ちょっと意外ですね。さて、ひな人形は何度も買うものではありませんから、買って初めて気付くことがあるそうで。次のページで、見落としがちなポイントをご紹介します。