サムイル(ヴァイオリン)、ランコヴァ(ピアノ) 『ロシアのヴァイオリンとピアノ、パリで出会う』
アスリートの世界と同じく、ロシアは世界に通用する凄腕音楽家を続々生んできた国! そして帝政時代や革命期いらい、異国暮らしの天才ロシア人も枚挙に暇がありません 。ブリュッセルの名門モネ劇場で首席を長くつとめたサムイルが奏でる弦音は、張りがあるのに繊細、実に極上! ソリストとしても活躍中のランコヴァとは、音楽に求めるものがぴたりと合うとのことで、絶妙の室内楽的呼吸を愉しめます。名曲続々、ジャケットも瀟洒♪
■ガイド大塚の感想
ヒップな上演で世界的に知られるモネ劇場の元首席ヴァイオリンということもあるのか全体的にお洒落。クライスラーの使ったストラディヴァリウスを用い『前奏曲とアレグロ』ではたっぷりと弾き、『愛の喜び』ではくどすぎないポルタメントを忍ばせ、その後は古き良き時代へ誘われるようなワルツを。『カルメン幻想曲』ではがっちり受け止めるピアノとの色気ある絡みなど、1曲1曲の表情がはっきりしている。折に触れて聴きたくなるだろう素敵な1枚。
水谷上総(ファゴット) 『ファゴッティーノ ~フランス近代作品集~』
NHK交響楽団首席ファゴット奏者として活躍する水谷上総のソロ・アルバム第3弾は、サン=サーンス、デュクロ、ピエルネなどフランス人作曲家の作品集です。難曲の数々を軽やかに奏でるテクニック、そして美しい旋律を歌い上げる豊かな音色に唖然とさせられることでしょう。またプーランクの小品はファゴット版にアレンジして演奏しており、ファゴットとピアノの音色が交わる甘美な響きがお楽しみいただけます。
■ガイド大塚の感想
温かな午後の日差しのような穏やかな響きから、低音の深い味わい、象が踊るようなユーモラスなパッセージまで、ファゴットの魅力に満ちたアルバム。選曲もリラックスできるものが多く休日のBGMにも良さそう。ここまで心地良く音楽を演奏することはすごいことだと改めて驚く。
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佐藤久成(ヴァイオリン) 『HISAYA 魔界のヴァイオリンII』
音楽評論家・宇野功芳氏がいのちを賭けて推薦する、天才ヴァイオリニスト佐藤久成、待望の新譜「HISAYA 魔界のヴァイオリンII」が登場!第2弾もHISAYAが愛奏する珠玉のヴァイオリン名曲を収録。仰天の「愛のあいさつ」、怒涛の「ツィガーヌ」など聴きどころ満載。HISAYA、唯一無二の表現で、あっと驚かされる演奏を披露しております。今回も192khz・24bitの高品位録音で、前回同様に高いオーディオ評が期待できます。なお、録音はALTUSが担当しました。HISAYAの世界をご堪能ください!!
■ガイド大塚の感想
超個性的な演奏。表現がとにかく濃厚で、揺れるリズム、激しい弓使いなど、我が道を行く。好きな人はどうしようもなく好きだが、好きじゃない人はどうにも好きになれない、そういった演奏だ。「普通の演奏は物足りない」という人にオススメ。
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ソコロフ(ピアノ) 『ザルツブルク・リサイタル2008』
1966年、16歳でチャイコフスキー国際コンクール優勝という経歴のソコロフ。しかし、スタジオ録音を嫌い、近年は欧州諸国に限定した活動を行っているため、現代最高のピアニストと絶賛されながらも、わが国では『幻』のピアニストとして知る人ぞ知る最後の大物とされてきました。2008年のザルツブルク音楽祭のライヴ録音の当盤により、遂にその実体が明らかになります!
■ガイド大塚の感想
「こんなにも高度で圧倒的パワーの巨匠演奏家が今もいたなんて……」と知られざるパフォーマンスに驚かされる。本人は“ロシア・ピアニズム”といったざっくりとしたくくられ方を好まないようだが、繊細な表現の中に、現代失われかかっているロシア独特の強烈なヴィルティオジティが表出する。特にショパン前奏曲集の5、8、14、16番あたりの突然のパワフルな超絶技巧は驚かされる。モーツァルトの粒の揃ったキラキラした響きも印象的。ラモーによる、オペラ『優雅なインドの国々』にも使われた『未開人』などのアンコールも嬉しい。
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アームストロング(ピアノ) 『プレイズ・バッハ、リゲティ、アームストロング』
1992年ロサンゼルス生まれのピアニスト・作曲家、キット・アームストロング。巨匠アルフレート・ブレンデルが「私が出会った最高の才能」と賛辞を惜しまない凄いピアニストです。13歳でブレンデルに師事、さらに数学でも学位を持つという驚異的に明晰な頭脳を持ち、ヨーロッパ中のメジャー・オケや名指揮者たちと共演、数多くの音楽祭などに出演し絶賛を浴びています。ソニー・クラシカルへのデビュー盤となる当アルバムのテーマは「バッハと21世紀の邂逅」。バッハとリゲティという二人の作曲家の多様な側面を探求しつつ、自作でバッハへのオマージュを捧げるという練り上げられた構成には瞠目させられます。
■ガイド大塚の感想
5歳で既に作曲をはじめ、9歳から大学で生物学、物理学、数学を学んだという神童。となると分析的で冷たい演奏か?という疑念も湧くが、真逆で、とても優しく温かく美しいピアノ。発音もそうだが、響きがとても意識されていて心地良い。作品を深く理解し俯瞰し、またそれを表現できる技術を持っている。
バッハはきらきら光る水晶の煌めきのよう。自作曲の瞑想的でありながらな情熱的でもあるバッハへのオマージュ曲も弾き継がれていくであろう魅力に溢れた曲。現代音楽作曲家リゲティ亡命前作品の切れ味鋭くもヒューマンな演奏にも驚かされる。2月末から3月頭にかけて来日公演あり。
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西澤安澄(ピアノ) アルベニス:組曲『イベリア』(全4編)
スペイン近代の作曲家アルベニスは、天才ガウディがサグラダ・ファミリア大聖堂を設計した頃のバルセロナで活躍。祖国を音で描いた『イベリア』は壮絶な超絶技巧も必要とされる難曲で、そのうえスペインの土の気配と、俗っぽさに流されない「スペイン流の気高さ」を知らないと、紋切型の安大道芸に堕しかねない……アンダルシアに暮らす西澤さんの音は、世界の他の演奏家たちとも一線を画した「ほんもの」の空気が息づいています。
■ガイド大塚の感想
難曲として知られるがそれを感じさせない自然な音楽に仕上げている。乾いた土地に生き生きとみずみずしいピアノがさらりと流れ、目を閉じればイベリアの各土地のイメージが思い浮かぶような空気感が強くある。
終曲エリターニャも細かなリズムが巧みにリアルに表現され、まばゆい明るく酒場の喧騒を描くが、どこかアルベニスの郷愁、憧憬、諦念が感じられる気もし、聴く度に味わい深さがある。