部屋探し・家賃/賃貸物件の情報収集術

ずっと空いている物件……ネットの部屋探しでプロはここを見る!

インターネットに溢れる賃貸物件の募集広告。写真が増え、サイトだけでも十分な情報量。しかしよく見ると怪しげな空室広告もたくさんあります。ずっと空いてる物件は掘り出し物? それとも手を付けてはだめ? ネットの賃貸物件広告で騙されないための気を付けるべきポイントを紹介します。

上野 典行

執筆者:上野 典行

賃貸・部屋探しガイド

不動産屋の広告サイト

不動産屋の広告サイト

サイト広告の情報だけで、本当に十分?
インターネットには物件情報があふれ、写真もたくさん掲載されるようになりました。「もう、十分ネットで探したから、わざわざ現地を見学しなくてもいい。いろいろ見たけど、これが安くて一番」と、スマホ片手に不動産会社に契約を迫る人もいると聞きます。

国も、インターネットだけでの不動産取引について検討している昨今、売買契約はともかく、賃貸契約であればネットの情報だけでも十分かもしれない、と思ってもおかしくはありません。

一方で、私も不動産情報サイトを運営していた経験もありますが、物件広告の中には、「これはひどいな」と思われるような、入居希望者をひっかけるような広告も目にしてきました。

サイトの運営者としても取り締まりを強化し続けてきましたが、国交省や公取協も様々な規制強化をしています。その昔は、ありもしない物件広告を掲載して、入居希望者をひっかけて、なんとか来店させてからは「さっき決まってしまった」等と偽り、他の物件を薦めるような悪い不動産会社も存在しました。しかし、今は、そんな事をすると、ライバル店等からもすぐに公取協等に連絡が行き、国交省から営業停止処分等厳しい処分がくだされるようになりました。その結果、存在しない物件を広告する、いわゆる「オトリ広告」は激減しているのです。

しかし、その一方で、なんとか、店に呼びたい不動産会社は、ひどい物件をなんとか良さそうに見せかけようとする工夫も増えてきています。雨の日に撮影するよりも、晴れの日のほうが綺麗だから写真を撮り直す、というくらいなら「工夫」の範囲ですが、なかには、行き過ぎた工夫が散見されます。

そこで、ネット広告に騙されないための、見る側が気を付けるべきポイントについて、論じたいと思います。

 

空室部屋の写真が極端に少ない物件広告

広告

画像が少ない

不動産情報サイトでは、今、ひとつの物件当たりの写真の量が増えています。より写真が多い方が、入居希望者も自分がどんな暮らしが出来るのかイメージしやすく、反響を獲得しやすいからです。不動産会社の社員は、ライバル店舗よりもたくさん写真を載せる事を競い合っているともいえます。

にもかかわらず、あえて写真が少ないという物件は、なにか、見せたくない事実があるからでは?と考えたほうがよいかもしれません。

「現在入居中なので、部屋の中の写真が撮れない」「新築物件で建設中なので、写真が少ない」というケースはあるのですが、逆に築古でずっと空室なのに写真が3枚というのはおかしな話です。写真が少ないというのは、あまり写真を掲載したくない事情があるのかもしれません。実際にあったのは、桜が咲いて一見綺麗な外観ですが、室内の写真は一枚もないというもの。実はエントランスは真っ暗で、部屋の内部は壁が痛み、バストイレは一緒で不衛生。キッチンも錆びていた。だから、この物件は3枚しか写真を載せていなかったのです。

一方、写真の数だけ稼ぐために、ちょっとずつ角度を変えて、同じような外観写真を何枚も掲載しているような広告もあります。そんな姑息な手を使って物件広告での写真の数競争をしている会社は、信用できません。そうした会社には気を付けましょう。

・写真の数が少ない物件広告は、注意
※新築物件はしかたがないケースもある
※築古物件は、入居予定日が先の場合は室内が入居中で撮れないかも
・築古で即入居可なのに、写真の数が少ないのはおかしい
・同じような写真で、数を稼ぐような不動産会社は信用しない

物件写真は、いわば証拠写真。たくさんの写真が載っている広告を参考にしましょう。
 

募集住宅の写真が妙に、引いて撮影されている

物件広告では、部屋を出来る限り広く見せようと、広角レンズを使った撮影が多くなっています。まあ、広角レンズで撮影する事が、違法なわけではないのですが、左右が歪んでいる画像については、この広角レンズを使っていると考え、広さについては、平米数をしっかりとチェックしましょう。

ひいた写真の中には、なにかをアップでは撮影したくない為、わざと大きめに撮影しているというケースもあります。
引き気味の室内写真

引き気味の室内写真


上記の例では、室内写真が妙に引き気味でした。しかも、左下の写真がなぜかバストイレの写真として紹介されています。が、バストイレはよく見えません。
よく見ると実は和式トイレ

よく見ると実は和式トイレ

そこで、この写真を拡大して、バストイレを拡大してみると、実はトイレが和式トイレなのです。和式トイレがいけないと言っているわけではないのですが、写真で和式トイレである事は、伝えたくなかったのでしよう。

なぜ、こんな事をするかというと、この物件はかなり周辺相場よりも安い物件なのです。そして反響を集め、店に来てもらう。そして、「この物件は和式トイレなんですよ。洋式がお望みなら、賃料はこのくらいが相場です。バストイレ別ならこのくらいですよ」と他の物件を案内する。こうした物件は、業界では「ツリ物件」といわれます。「おっ安い」と餌を撒いて、お客さんを釣る、というわけです。

その証拠に、安いにも関わらず、ずっと掲載されています。「ツリ物件」ですから、その物件はむしろ決めずに、広告を出し続けた方がいいというわけです。

こうした物件にひっかからない為には
・情報掲載日が古い物件はずっと空室→なのに安い
・バストイレの写真で、実物が見えないなど作為を感じる
・掲載されている写真は、すべて拡大して見る
とよいでしょう。
 

ある一部分だけのアップも注意

同様に、ある一部分だけがアップになっているような広告も注意しましょう。
 
広告写真一例

蛇口だけのアップの写真

この写真は、引いているのではなく、逆にアップの写真です。しかし、これで「洗面台」というのはすこし違和感があります。

この写真の物件は、実は洗面台に鏡がないのです。ハブラシやドライヤーを置く棚もなく、コンセントもありません。そういった情報を隠したいからこそ、蛇口のアップにしたのです。
同様なケースとしては、バスの写真と言ってシャワーヘッドの写真だけといったものも、見かけます。

不動産情報サイトでは、居室だけでなく、バス・キッチンの写真を掲載する事を推奨しています。そういった写真が載っていると「おススメ写真が揃っています」等とサイトで目立つようにしているところもあります。ユーザーが求める情報の掲載を不動産会社に呼びかけているのですから、それはよいことです。

ところが、見せたくない情報がある物件では、このように狡猾に、アップにしたり、引き気味にしたりして、あまり見せないようにしている事があるのです。

・バスやキッチン、洗面台の全体像が見えるか
・使いやすそうか

をしっかりと確認するようにしましょう。

物件の情報ではなく、不動産会社の宣伝だけ
キャッチ

キャッチ


物件について、なにも書かれていない広告もよくあります。せっかく物件を紹介してアピールする場所なのに、「○○市内全域の物件は、△△不動産におまかせください!! 店舗数○店舗の△△不動産は、皆さんにあった物件を必ず提案します」とだけ書いてあることも。この場合、物件の事をよく知らないので、他の不動産会社の物件を見てネット掲載しただけか、あるいは手を抜いたのか、あるいは本当になにも書く魅力がない物件だったのか。いずれにしても、これから住む入居者に、物件の良さを伝えることではなく、自分たちの会社の宣伝しかしていない。こういう広告には気を付けましょう。

なかには、「物件の動画ムービーつき」と紹介されているのに、動画を見たら、店舗の紹介だけをしていたり、たくさんの他の物件情報の貼り紙を写して、紹介しているようなひどいものもあります。こうしたやり方をする会社も、敬遠したほうがよいかと思います。

最近は、検索した一覧表から、いきなり問い合わせが出来るようなサイトも増えてきました。しかし、それは利便性だけを追求していて、利用者にとって大切な情報をちゃんと見て頂こうというサイトポリシーからは後退したユーザビリティかもしれません。物件情報の中身をよく見て、物件を選びましょう。

冒頭に述べたように、まだ前の入居者が住んでいるので、室内の写真がない、というケースもあります。その一方で、外観写真がないというのは、明らかに違和感があります。

たとえば、隣がラブホテルだからといった理由や、あまりにも建物が古くて載せたくないといった理由があるのかもしれません。こうして裏読みをすると、わざわざ外からの写真を載せないという物件は要注意です。

特に、安い物件には気を付けましょう。相場よりも妙に安いけれど、外観がない。2階と書いてあるけど、いったいどんな場所の2階なのか。外観を見せたくないのは、通常の住宅の2階というような、タコ部屋のようなところだからかも知れません。

間取り図を見ながら、外観写真を見ると、窓の位置が逆だったり、ベランダと書かれているけれど、目の前に他の建物があり、日当たりが全くないようなケースでも、外観写真を入れない場合があります。

外観写真と説明文には書いてあるのに、駐輪場の写真。実は、一階・二階は風俗店だったという物件も見た事があります。外観写真を載せていない物件広告にはなにかがあると思いましょう。
 

集合住宅の一階が写っていない

 
一階が見えない写真

                                                               一階が見えない写真


外観は写っていても、一階が写っていないというケースも気になります。例えば一階が、パチンコ屋さんやカラオケ店でうるさそうだから、といった理由で、わざわざ写真を切っているという事も考えられます。一階がパチンコ屋さんやカラオケ店だからダメだと言っているわけではありません。ちゃんと防音対策をしている物件もあるでしょう。ただ、「写さない部分は見せたくない」という意図がありそうだと考えた方がよいということです。

時折、「一階がライバルの不動産会社だから」等というケースもあります。こうした物件では、問い合わせの際に、「外観写真の下方が写っていませんが、お店か何かですか?」と聞いてみましょう。無駄足を運ばない為にも、物件についての疑問を問い合わせ欄に書くのが大切です。
 

掘り出し物はありません

ネットで、もっと安い物件、もっと条件の良い物件がないかと探す方もいらっしゃると思います。しかし、掘り出し物はないのです。大家さんとしては、できれば少しでも高い家賃で貸したい。しかし、相場より高ければ借り手はつかない。そういう状況で広告をしています。

「殺傷事件があった」「お墓や火葬場の目の前」といった「事故物件」も存在します。そうした物件を探すのであれば、より安いものを探すのもいいですが、そうでないなら、間取りや広さ、設備や駅からの距離等で、相場並みの物件がほとんどです。
物件広告一例

物件広告一例

「トイレ流し台付きで首都圏で2.8万円」。たしかに安い物件です。外観は古そうですが、住めば都かもしれません。このように、明らかに「古いから」「駅から遠いから」「北向きだから」と、安い理由が明確な物件は、よいかもしれません。古くて駅から遠くて北向きでも、「バイクで通う仕事で、夜は寝るだけだから日当たりなんか関係ないや」と考えるなら、文字通り掘り出し物でしょう。(ちなみにこの物件はお風呂はありませんので、近くに銭湯があるかは大切な確認事項です)

しかし、「安い理由がよくわからない」時は、よく物件広告を見るようにしましょう。
定借家広告一例

定期借家


一番上の物件だけが、1.8万円と安い。同じ物件で、2.8万円と3万円と格差があります。どうして、この物件だけが1.8万円なのでしょう。「エレベーターが遠いから」「極端に狭いから」「この部屋だけリフォームしていないから」等、明らかな理由がないのは不自然です。このケースでは、1.8万円の物件は、定期借家での契約。3カ月間だけの期間限定の契約でした。4ヶ月目からは、3万円にして通常契約にしようという不動産会社の戦略だったのです。これも違法ではありません。
 

募集物件情報をよく見ましょう

このほかにも、物件広告を裏読みすると、仲介や管理する不動産会社の体質も見えてきます。

たとえば
■築1年で空室が多い
新築は人気。築1年なら、まだ新しい……でも、逆にいえば、1年で退去したか、1年間埋まらなかった物件……。妙に空室が多い物件は、なにか問題があるのではないでしょうか?そして、その状況を、管理する不動産会社は放置していたという事になります。そういう管理会社の管理では、他の物件でも入居後の対応が後手後手だったり、機敏性に欠けたりするかもしれません。

■新築ではないのに、写真がパース
建設前であれば、パースといわれるイメージ写真が使われる事もありますが、すでに完成しているのに、ずっとパースなのはおかしな話です。こういうきめの細かい所に手が回らない不動産会社では、契約時や契約後も配慮不足が心配です。建設するハウスメーカーとの連携も出来ていない証拠かもしれません。

■賃料が安いのに、管理費が高い
結局合計金額を払うのが入居者です。アンバランスなのは、検索されやすくしたいがための作戦かもしれません。「賃料を下げて、管理費を上げて、なんとか入居者を集めよう」という姿勢の大家さんや不動産会社という事は、入居後の対応もイマイチかもしれません。

■交通の便が、妙に長距離
「東横線白楽駅から徒歩3分」「東横線渋谷駅からバス50分」「東横線自由が丘駅から自動車で30分」。こんな物件広告もあります。近隣の駅からの時間を記入するならともかく、とんでもない遠い駅からの時間を入れて、あたかも通えるかのように書いた物件広告。これが違法かどうかの前に、こういう広告で反響を集めようという姿勢で、本当に入居者の希望にあった物件を探したり、新生活の提案をしてくれるとは考えにくいものです。

物件広告に騙されない目を持つだけでなく、あまりにもひどい物件広告を掲載している不動産会社に対しては、警戒する視点をもって、ネット広告を見るようにしましょう。

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