遺伝子レベルからその人物を演じる魂
■窪田正孝(1988年生まれ)『ST 赤と白の捜査ファイル』『花子とアン』『Nのために』など2014年大躍進を見せる。
『ジョーカー 許されざる捜査官』で見せた 心神喪失を装い無罪となった無差別殺人犯を演じる窪田正孝の目に背中がヒヤッとしたことを覚えています。その一方で刑事や温かさにあふれる青年などを幅広く演じ、視聴者の心をとらえて離さない魅力に最近は驚くばかりです。『Nのために』では小さな言葉一つひとつに命が宿る成瀬慎司に涙した人も少ないはず。
彼のなかで様々な人物が様々な顔で増殖を続けていて、遺伝子ごとその人物が投影されているかのようで、それは窪田正孝、彼にしかできないように思います。彼はこんな俳優なのだという先入観を捨て、常にニュートラルな視点で彼をとらえないと、その演技には追いつけません。
私たちの想像をはるかに超えた“人間”もごくごく普通の“人間”も同じ力加減で演じてしまう窪田正孝、これからもますます私たちの心をとらえてしまうことでしょう。
”強さ”を静かに演じる俳優としての強さ
高橋一生(1980年生まれ)『ペテロの葬列』『軍師官兵衛』『信長協奏曲』などサスペンスから時代劇まで幅広く演じる。
背筋がスッと伸び、端正な顔立ちから放たれる静かなエネルギーに引き寄せられます。不思議な魅力を感じます。繊細な人、神経質な人、実直な人、ちゃらんぽらんな人、彼が演じるすべての人から、その人の人生そのものを感じ取ることができるのは、高橋一生がその役柄と絶妙な距離を維持することができるからではないでしょうか。
『池袋ウエストゲートパーク』や『相棒』では一癖もふた癖もある繊細な青年を見事に演じていましたが、2014年は『軍師官兵衛』や『信長協奏曲』では 骨太で実直な人間の強さを彼らしく表現しました。荒々しく声高に情熱的に訴えるということでなく、小さなしぐさや ふと見せる表情でその決意や信念を表現できる俳優です。そのキリリとした姿に美しさを感じるファンもいれば胸をキュンとさせるファンもいることでしょう。
個人的には社会派ドラマで彼の演技をもっと見たいと思っていますが、どのジャンルでも 静かに力強く、その存在感を発揮することでしょう。