軽度の巻き爪の治療法
軽度の巻き爪の場合、主に爪部分切除で治療できます。■内服薬・外用薬
初期治療では、抗菌薬と鎮痛薬の内服と、外用の抗菌薬軟膏を併用します。投薬期間はおおむね2週間程度。副作用として、下痢、胃炎などの軽度の症状が見られることがありますが、休薬することで回復します。治療効果があれば、指先の痛み、腫れが軽快し、すぐにわかります。指先の浮腫を防ぐために運動、長時間の歩行を避けること、感染予防のため指先をよく洗うことの2点です。
■ 爪部分切除
浮腫→圧力→炎症のサイクルが進行している状態では、薬だけの治療で炎症を止めることは難しいので、爪の部分切除が必要。図の斜線部分のように充分な長さの爪を切除すると6ヶ月間は巻き爪の症状がなくなります。但し、この部分的な切除の場合は、6ヵ月後程度で再発の可能性が高いです。
治療は局所麻酔を使用。費用は3割負担の保険診療の場合8千円ほど。 順調にいけば1週間で炎症、肉芽腫が収まり、見た目もかなり正常になります。爪の部分切除はベテラン医師が行えば簡単な処置で、リスクは特にありませんが、慣れていない医師が不十分な切除を行うと1週間の経過でも改善しません。爪の切除を行っても痛み腫れが改善せず、1週間でかなり楽な状態にならない場合は、他の医療機関を選ぶことをお勧めします。
重度の巻き爪の治療法
主に4つの治療法があります。フェノール法、ワイヤー法、爪母部分切除法、爪母全切除法になります。ワイヤー法は保険の適応がなく、治療を行っている病院も限られるため、受診前に電話で確認が必要です。■フェノール法
腐食性の液体であるフェノールを使用して
爪を作る組織である爪母(そうぼ)を薬品で破壊する治療。爪母とは爪の根元の下に見える白い爪半月(つめはんげつ)と爪の手前の皮膚の下にある白い爪を作る組織の2つを合わせた組織のことです。
この治療の一番の特徴は治療自体が1回の外来で
終了すること。外来で行う病院と手術室で行う病院がありますが、外来で可能であればその日に治療は終了します。費用は1万円程度で、局所麻酔が必要。治療当日も仕事が可能です。痛みも少なく、鎮痛薬を1~2日内服で十分です。治療翌日から入浴、シャワーも可能。運動、長時間の歩行だけは2週間程度避けてください。
治療がうまくいけば巻き爪は完治しますが、フェノールで破壊する爪母の範囲をコントロールすることが難しいため、再発率が約30%程度と比較的高いのが唯一の欠点です。最初に行う重度の巻き爪の治療としては、この方法を選択することを推奨します。
■ワイヤー法
湾曲した爪にワイヤーを固定し、爪の形を平らにする
ことにより巻き爪を治療します。保険の適応がないので、費用については手術前に病院で確認を。治療期間は平均して半年間ほど。ワイヤーを除去した後に爪の形が平らに保てないと再発します。それ以外は特にリスクはありません。
ワイヤーの当て方にもいろいろな方法があり、再発率もばらつきがありますが、約20%程度。メスを使用しないので最近急速に普及してきた治療です。数年間治療して結局再発する方もいるので、私はお勧めしません。しかし、治療経験の豊富な医師で信頼できると判断されれば、この治療を検討してもよいのではと考えます。
■爪母部分切除法
フェノール法と違い、メスを使用して爪母を部分的に
切除する手術法。以前は「鬼塚法(おにつかほう)」という爪の横を大きく切開する術後の痛みも強い手術が主流でした。
手術終了時 傷の長さも長い
最近では、「尾郷法(おごうほう)」という爪の横を
5mm程度切開し、爪母を部分的に切除する方法が主流となってきました。治療費用は1万5千円程度で、 手術は予約となります。手術後の通院が2~3回必要です。治療期間は10日間程度。傷は最低限なので、治療当日も仕事が可能。痛みも少なく、鎮痛薬を1~2日内服で十分で、治療翌日から入浴、シャワーも可能ですが、運動、長時間の歩行だけは2週間程度避けて下さい。
この治療は再発率が5%以下と確実性が高くフェノール法で再発した場合の、第一選択の治療法と思います。
■爪母全切除法
爪の横を2ヵ所切開し、爪母をすべて切除する手術法。
この治療では爪は永遠に生えてこなくなります。他の治療法で再発した方、爪の変形が重度な方、下半身麻痺で確実な治療が望ましい方などが対象となります。治療費用は1万5千円程度で、手術は予約制。手術後の通院が2~3回必要です。治療期間は2~3週間程度。
傷は多少大きくなるので、2日間程度自宅安静が望ましいです。鎮痛薬を7日間内服します。治療翌日から入浴、シャワーは可能。運動、長時間の歩行は3週間程度避けてください。
爪が永遠になくなることに抵抗を感じる方が多いようですが、デメリットは全くありません。安心して下さい。
巻き爪の予防法
巻き爪は簡単に予防することが可能な病気です。その点を充分に理解していただくと、この悩みから解放されます。■深爪をしない
一番簡単で大切なことは、深爪をしないこと。
真横に爪を切る
指の先端より爪の長さを長くします。爪をまず真横に切り、角は少しだけ落とします。
角を少しけずる
この形になれば爪の先端で爪が皮膚にくいこむこともなくなり、巻き爪を予防できます。爪の厚み、強度が普通であれば爪切りを使用します。爪の薄い方はやすりを使用した方が爪が割れないのでよい場合があります。
■硬い靴、狭い靴、サンダルを避ける
硬い革靴や先の狭い靴、サンダルは爪のくいこみを増強するので避けてください。柔らかい靴、運動靴、柔らかくて大きなサンダルが好ましいです。皮膚をよく洗い、足先を清潔に保つことも大切。
■専門医を受診する
けがの場合に自分で治療しないで、形成外科、皮膚科を受診し、爪が変形しないように治療を行うことが大切。爪の水虫である爪白癬の場合、抗真菌薬の内服が必要となりますので、皮膚科専門医を受診して下さい。