「天然素材」とは
「天然食材」は体にいいというイメージがあります。自然の食材はまさに神からの恵みです。では、加工食品は体に悪いのでしょうか? どのように食材を選べばよいかを考えてみます。
- 人の力が加えられていないこと。自然のままであること
- 本来の姿であること。生まれながらにして持っているもの。天性
- 意図しないでそうなること
「素材」は
- もとになる材料。原料
- 芸術作品の題材となる自然や人事
- 伐採し,適当に切断しただけの木材。原木
そうなると、この二つの言葉を組み合わせた「天然素材」は「自然のまま人の手が加えられていない原材料」ということになるでしょうか。
食品では畑から取れたばかりの野菜や海からあがったばかりで何も手を加えていない魚を「天然素材」と呼ぶことがあります。また、同じ種類の魚でも、海で回遊していた魚を天然魚と呼び、生簀(いけす)で育った魚を養殖と呼び分けたりします。
そこで今回はこの2つの視点から「天然素材」が体に与える影響を考えてみることにします。
食品を加工することはよいこと? 悪いこと?
まずは「畑から取れたばかりの野菜や海からあがったばかりの魚」などの天然素材が体にいいのかというところから考えてみます。結論から先に言うと私は「体にいい」と考えています。宗教がかった言い方は語弊があるかもしれませんが、これらの食材は人の手を加えていない自然の恵みです。自然の恵みは万物の基礎ですから、これが体に悪いようでは人間は太刀打ちできません。
しかし、人間は自然の恵みに手を加え「加工」を施します。食品を加工するのにはいくつかの理由があります。
- 食品の保存性を高める
- 食品を食べやすく消化しやすく栄養価の高いものにする
- 味や食感を良くして一般の人々の嗜好に合うようにする
- 骨など捨ててしまう部分を上手に利用する
日本には古くから「漬物」の文化がありますが、これは旬の時期に採れた野菜を毎日同じものばかりでは飽きるし、食べきれないので塩漬けにして季節はずれの時期まで保存しようとしたもの。味噌ももともとは大豆を塩漬けにして保存したところ、調味料としておいしくなったことが始まり。しょうゆは中国から伝わったものと言われていますが、「たまりしょうゆ」は味噌の上澄みが美味しいと気づいた職人たちが作り出しました。
食品は「手をかけない」これがおいしさを生み出す
日本人の食卓に欠かせないのはなんと言っても和食でしょう。和食にはたくさんの特徴がありますが、その最たるは、素材の持ち味を生かすことです。「魯山人の食卓(グルメ文庫、角川春樹事務所)」によれば北大路魯山人は「原料の原味を殺すな」と説いています。「小芋の味ひとつにしたって、人の力ではどうにもできない」とも記しており、「生きたよい材料を扱う」ことを重んじました。これが「和食の心」であり「日本料理の粋」です。ユネスコの無形文化遺産に登録された理由のひとつも「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」でした。
このように、昔から日本人は「新鮮な食材の美味しさ」を知っていました。江戸から明治、大正、昭和、平成と時代は流れましたが、日本人の遺伝子は新鮮な食材の美味しさを忘れたわけではありません。ファストフードや洋食の多用が体に合わない人が多いのが何よりの証拠です。
天然物と養殖物はどう違うのか?
漁業関係者の方は、天然物と養殖物は明確に見分けることができるそうです。
漁業関係のお仕事をされている方が見ると、その違いは一目瞭然。例えば、尾びれ。天然物はどこかとぶつかることがないのでキレイなラインを描きますが、養殖物は他の魚や壁等にぶつかるため尾がギザギザしていたり丸まったりしています。カレイや鰻は腹の色が違うなど、天然物と養殖物は明確に見分けることができます。
とはいえ、先述のとおり天然物は数が減っており、とうてい需要をまかないきれるほどの量が手に入りません。養殖業者も安全で安心な魚を提供できるよう日々、研鑽を積んでいます。天然物と養殖物の一長一短は裏表。TPOに合わせて、予算に合わせて選ぶのが良いのではないでしょうか。
「ムリしない」これが一番「天然」で体にいい
私たちの暮らしは日々、忙しくなってきています。世間では「女性活用」と叫ばれ、専業主婦をしている女性はごく少数になってきています。そんな働く女性たちに「昔と同じように天然食材だけを使って食事を自宅で用意するように!」と言うのは酷と言うものです。むろん、男性に「天然食材で食事を用意してください」というのはさらに酷でしょう。ムリをして、3日間だけ完璧な食事を摂ったとしても、体は急には変わりません。むしろ、ムリがたたってストレスになってしまったら逆効果です。とはいえ、何もしないで手をこまねいているのはもったいないです。できる限り天然食材を使うことを意識しながらも、時にはスーパーの惣菜や弁当、外食なども上手に利用して、ストレスなく、体にも心にも優しい天然素材生活を送ってください。
それが一番「体にいい」のです。