落ち着きを取り戻すことが最大のポイント
前走でシャドウダンサーが見せた激しい入れ込み。これは年末年始の私を不安にさせました。なぜなら、シャドウダンサーの母ダンスインザムードは、現役時代かなり気難しい性格で、レース前に激しく入れ込むケースがあったのです。そしてダンスインザムードは、そういった精神面の影響からか、長い間スランプに陥ってしまったのでした。もしかするとシャドウダンサーも、前走を境にスランプへと突入してしまうかもしれない。グレイトフルステークスで見せた入れ込みは、一過性ではないのかも。あの入れ込みは、気難しさのスタートなのではないか。お正月はそればかり考えていました。
しかし、初富士ステークスのレース前、パドックに現れたシャドウダンサーを見て、その不安は一掃されます。前走とは見違えるほどの落ち着き、そして伸びやかな柔らかい歩様を取り戻していました。まさに「集中」という雰囲気で、前走のようなイライラ感がありません。これなら力を出し切れると思ったのです。
ただし、ここにも強敵が参戦してきました。そのライバルの名は、ラングレー。シャドウダンサーと同期で、こちらもデビュー前から素質馬として大変な注目を集めた逸材。ダービーへの出走はかないませんでしたが、成長とともに着々とレースぶりが安定してきた1頭です。まさにシャドウダンサーと似た背景を持つライバルでした。
ライバルとの攻防、軍配が上がったのは……
レース前、私にはもう一つ、大きな不安がありました。それは「芝1800m/中山競馬場」というレース条件。昨秋から3戦続けて2200m戦に出てきたシャドウダンサーにとって、距離の短くなる芝1800m、しかもタイトなコーナー四つの中山競馬場を1周するこのレースは、決してプラス条件とは思えなかったのです。その理由は、常々いってきたシャドウダンサーのスタート。シャドウダンサーはあまりスタートが得意ではなく、他馬より一歩遅れることもしばしば。ただ、2200mならペースもゆったりになるため、その出遅れをリカバーできます。しかし、中山の1800mは距離が短く小回りな分、スタートから激しい攻防。つまり、出遅れが大きく響くのです。
実はシャドウダンサー、本当は同時期に行なわれるもっと長い距離のレースにエントリーしていたのですが、出走を希望する馬が多過ぎて出られなかったのです。そこでこちらに回ってきたという形。ですからレース選択としてはやむを得ないのですが、1800mという距離は気がかりでした。
そんななかで始まった初富士ステークス。勝てばオープン入りのこの一戦。それではレースの模様を見て頂きましょう!
初富士ステークスのレース映像(シャドウダンサーはオレンジ帽の10番、ラングレーはピンク帽の13番)
一歩目のスタート、懸念していた出遅れが現実に……。それにより、ライバルのラングレーに比べるとかなり後方からレースを進める形になりました。
先頭の馬が飛ばすなか、ラングレーは中団、そしてシャドウダンサーは後方から最後のコーナーで外を回していきます。昨春までシャドウダンサーとコンビを組み、今回久しぶりに騎乗した戸崎騎手は、レース後、「外を回る形になってしまいました」と悔しそうに語りました。外を回る分、どうしてもコースロスが出来て不利になるためです。
もちろん、圧倒的に力が抜けていればそのロスも問題ありません。しかし今回は相手のラングレーが強かった。ソツのないレースで、問題なく快勝。このライバルに勝つには、スタートやコース取りでシャドウダンサーは後手に回ってしまったといえます。
1800mの距離がダメというわけではないかもしれませんが、現状のシャドウダンサーはゆったり運べる2200m以上くらいの方がより良い気がします。まだまだ未完成。そんなことを思った2着敗戦でした。
さらにいえば、シャドウダンサーは一瞬の瞬発力よりも、ロングスパートでしぶとさを活かしたい馬。となると、初富士ステークスのように直線だけで一気に交わすレースは厳しいと感じます。可能ならば、もっと早めにラングレーに迫ってプレッシャーをかけたかった。しかし出遅れなども相まって、そういう形ができなかったのかもしれません。
それにしても、オープンの壁とはいかに高いものか。1600万下のクラスには、ラングレーやトーセンマタコイヤのような素質馬がゴロゴロいるのですから。G1レースを勝つ馬がすごいのはもちろんですが、オープンクラスに入るだけでも大変なことだと改めて痛感しました。
とはいえ、暖かくなる頃にはオープン入りしてほしいのが本音。一つひとつ課題をクリアして、今度こそ勝利を期待します!
(リンク)
シャドウダンサー|netkeiba.com
グレイトフルステークス|レース結果|netkeiba.com
初富士ステークス|レース結果|netkeiba.com