競馬/一頭追っかけシリーズ

追っかけシリーズ第10回 ~高い「オープン」の壁~

G1レースなどが行なわれる最上級クラスの「オープン」まで、あと1勝と迫ったシャドウダンサー。12月27日、その大目標を目指してふたたびシャドウダンサーが出走しました。しかし、そこで見たのは「オープン」の高い壁だったのです……

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド

確証を期して挑んだ、年末の一戦

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年末の中山競馬場に登場したシャドウダンサーだったが……

昨年の12月27日(土)、シャドウダンサーは中山競馬場に現れました。年末年始の9連休初日に同馬が挑むのは、グレイトフルステークス(芝2200m/中山競馬場)。私はレース前にカツ丼を食べて、完全な胃モタレになりながらシャドウダンサーの登場を待ち構えました。

シャドウダンサーが所属する1600万下は、上から2番目のクラス。ここを勝てば、最上級クラスのオープン入りです。前走でいきなり1600万下のレースを2着と健闘した彼ですから、ここはまさに必勝の舞台。歓喜の瞬間が訪れることを期待しました。

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最上級クラスのオープンでは、G1~G3の「重賞レース」も行なわれます

しかし、不運にもこのレースには恐るべき強敵が出てきたのです。その馬の名はトーセンマタコイヤ。まずはユニークな名前に誰もが気を取られるでしょうが、この馬のすごさはそこではありません。トーセンマタコイヤは昨年2月のデビューから3戦3勝。途中で骨折による休養を挟みながらも、新馬→500万下→1000万下とノンストップで駆け上がってきたのです。

そのため、今回のレースで1番人気になったのはマタコイヤ君。シャドウダンサーは2番人気となりました。それでも私は、「トーセンマタコイヤには負けない! 今回は『また来いや!』なんていわせない」と息巻いたのです。イマイチうまいことは言えませんでしたが。

そんなことを思っていた私ですが、レース前のパドックに現れたシャドウダンサーを見た瞬間、その自信はもろくも崩れてしまいました。

一体どうしたんだ、シャドウダンサーよ……

このシリーズで何度も述べていますが、レース前のシャドウダンサーを見るときにチェックするのは歩様(歩き方)の柔らかさ。脚がスラッスラッと前に出るときはいいのですが、ゴトゴトと歩いているとこれはマイナスです。そして今回、私が見る限りでは久々に歩様の硬さが気になりました。ゴトゴトしていたんです。

ただ、それ以上に気になったことがありました。とにかくシャドウダンサーに落ち着きがないのです。頭を振ったり、飛び跳ねたり……。引いているスタッフが再三なだめていたほど。普段からこういうテンションでレースに臨む馬ならまだしも、シャドウダンサーがここまで荒れているのは初めて。気合が入っているというよりはイライラしている可能性が高く、そういう場合はレースでも力を発揮できません。競馬ではこの状態を「入れ込んでいる」、「チャカついている」なんていいます。

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とにかく落ち着きがないシャドウダンサー

今回、コンビを組むのは田中勝春騎手。彼が騎乗しても、シャドウダンサーの入れ込みは一向に収まりません。私は思いました。ただでさえマタコイヤ君がいるのに、この状態ではちょっと厳しいかもしれない――。

高校時代、実家の犬に本気で吠えられたあの日以来の複雑な心境。そんな心持ちで見守ったグレイトフルステークスの模様をご覧頂きましょう!

グレイトフルステークスのレース映像(シャドウダンサーはピンク帽の13番、トーセンマタコイヤは青帽の5番)

レースはスムーズに、アクシデントなく進んだシャドウダンサー。しかし、直線ではまったく見せ場を作れませんでした。勝ち馬から離された7着という、なかなかショッキングな大敗。戦前の入れ込みを考えれば、馬の気持ちがレースに向いていないことは明白でした。

競走馬には、こういうことが多々あります。人間とは違いますから、すべてのレースで馬が集中しているとはかぎりません。あえて救いを探すなら、この敗戦は決してシャドウダンサーの実力ではないこと。落ち着いて、集中して、そして歩様の柔らかい状態でレースに臨めれば、きっとこのクラスは勝ち負けできるはずです。

ちなみに、1番人気のトーセンマタコイヤは2着。初めての敗戦となりました。しかし同馬も、最終コーナーで進路が開かずうまくスパート出来なかったのが敗因。決して実力負けではありません。改めて、「競馬って難しいなあ」と感じた年末でした。

そしてシャドウダンサーは、前回のリベンジを誓ってまたも中山競馬場に現れました。それは1月18日(日)に行なわれた、初富士ステークス(芝1800m/中山競馬場)です。次ページでその模様をお伝えします。

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