交通:環状2号線、三環状線の整備に
ホームドア設置、勝どき駅利便性アップなど施策目白押し
2020年の東京五輪をにらみ、交通面の利便性アップは急務。そのため、交通面での施策は数多い。五輪直結という意味ではまず、挙げられるのが環状二号線。2014年に虎の門ヒルズ開業、新虎通り開通が話題になったが、工事はまだ続いており、今後、築地、勝どき、晴海を経て有明に達する予定である。
東京五輪のための整備では首都高速でも晴海線の整備が進んでいる。これはすでにある東雲ジャンクションから豊洲出入口までのルートを延伸、晴海に出入口を作るという計画で平成29年度完成予定。
このルートができると晴海の利便性がアップするのみならず、東京臨海部からの交通需要を都心環状線ではなく、湾岸線に誘導できるため、都心環状線および都心部と湾岸線を結ぶ深川線、台場線の混雑を緩和するバイパスとして機能することになる。
湾岸部の交通ではこのほか、都心と臨海副都心を結ぶBRT(bus rapid transit バスを基盤とした大量輸送システム。震災後の気仙沼線、大船渡線の例が分かりやすい)、路線バスの充実などが検討されている。
首都圏全体の利便性につながるのが首都圏三環状道路の完成。これは都心から半径約8キロ圏域を連絡する中央環状線(首都高速中央環状線)、半径約15キロ圏域を連絡する外環道(東京外かく環状道路)、及び半径約40~60キロ圏域を連絡する圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の総称で、中央環状線は2015年3月に完成することになっており、残すところは外側の二環状。
外環道では東京都の葛飾区区間約0.9キロを含む、三郷南ICから京葉道路、東関東自動車道までを結ぶ約16キロの整備も進められており、平成27年度開通予定。全線が開通すれば都心部の渋滞が緩和されるとともに、各高速道路間の移動も容易になるはずだ。
圏央道は首都圏外側の都市、空港、港をつなぐ役割を持つ。写真は横浜港
続いて鉄道。大きく変わるのは湾岸エリアの窓口となっている都営地下鉄大江戸線勝どき駅。2013年度で勝どき駅の1日平均乗降客数は約4万5,000人で開業当初に都が予測したのは2万8,000人。当然、非常に混雑をしており、現在ホームの増設など大規模な改良工事が進行中。供用開始予定は2018年度。湾岸の足回りが改善されることになる。
新駅設置が予定されているのは虎の門地区。東京メトロ日比谷線霞ケ関駅と神谷町駅の間、虎の門ヒルズのすぐ脇の桜田通り沿いに新設されることになっており、周辺にはバスターミナル、地下通路なども整備される予定だ。
主要駅周辺の整備も進められる予定で、具体的には2027年度を目標に浜松町駅周辺のバスターミナル等の再編、強化、JR、東京モノレール、都営地下鉄の乗り換え改善、2024年度を目標に八重洲地区の東側、北側にバスターミナルが整備されるなどの計画が盛り込まれている。
また、駅の整備に関しては街や交通機関相互のつながりを重視して進める旨が記載されており、例として現在進行中のJR中央線国分寺駅北口の再開発、都営新宿線一之江駅の鉄道、バスの乗り換え改善事業などが挙げられている。
乗降客の転落防止のために役立つホームドア。全体としてみればまだまだ設置されていない駅が多い
こうした動きに伴い、東急線は2020年度までに東横線・田園都市線・大井町線の全64駅にホームドアを設置することを発表しており、他の私鉄にこの動きが波及すれば、全駅にホームドアが設置される日も意外に近いのかもしれない。
そのほか、自転車で快適に走れる空間を整備する、臨海エリアなどで広域的なシェアサイクルが利用できるようにするなどの施策も盛り込まれており、各種の交通が変わりそうである。
都市開発:東京、新宿、渋谷、品川に、
目玉は北青山の都営住宅建替え
都心部では駅周辺の整備、再開発が進む。早いところでいえば新宿駅南口の基盤整備が2015年度に完成を予定しており、続いて2017年度には東京駅の丸の内駅前広場の整備が終わる。2018年度には渋谷駅近くを流れる渋谷川の再生が完了する計画となっており、その後は2020年度に新宿駅の東西自由通路の整備、山手線の品川駅~田町駅間の新駅暫定開業が予定されている。
このうち、大きく周辺を巻き込んだ変化となりそうなのは、やはり品川駅周辺。山手線新駅、リニア新駅と大きく交通事情を変える計画があるだけに、東京都でも周辺に4つの優先整備地区を設け、公民協働で開発を推進していきたい考え。スケール、影響の大きな開発になるだけに、近隣の住宅事情なども変わりそうだ。
市街地の再開発としては竹芝地区、渋谷地区(都営宮下町アパート)、東京五輪後の選手村の利用などが挙げられている。選手村は五輪後に超高層タワー2棟、商業棟を建設した上で、民間に売却するとされており、総戸数は6,000戸。都内の住宅事情が変わりそうな規模だ。
また、2005年前後から噂だけが出ていた都営青山北町アパートの建替えがいよいよ進む。ここは国道246号のすぐ脇に約4haと広い敷地を擁する団地で、高層・集約化することで創出される用地を生かした街づくりを進めるという。具体案は2015年度に公表、2020年度までに建て替えを完了する予定。団地と246号の間には古いURの建物もあり、そのあたりの動向も気になるところだ。
移転予定の築地市場。都心近くの広大な土地だけに跡地利用の動向には関心が集まる
住宅:多摩ニュータウンの建替え、耐震促進、
既存住宅取得率向上が目標に
住宅関連では多摩ニュータウンの建替えが目立つところ。すでに2013年10月には多摩ニュータウンの中でも最初に入居が始まった諏訪二丁目住宅が民間事業者の手によってマンションに建替えられており、今後も昭和40年代に建設した約3,900戸の都営住宅を計画的に建替え、バリアフリー化などを実施していくという予定だ。同建替え物件が大きく関心を集め、1200戸超という規模にも関わらず、短期間で完売したことを考えると、次回以降の建替えにも注目しておきたい。
住宅の質の向上という意味では新築住宅における長期優良住宅の割合を2009年度の3.8%から2020年度には20%にという目標も掲げられており、市場の整備が期待される。同様に既存住宅取得率も2008年度35.1%から2020年度50%が目標になっている。また、住宅セーフティネット機能の強化なども盛り込まれている。
住宅も含め、すべての建物に関しては耐震促進が挙げられている。これについては数値は目標とはされていないが、住宅はもちろん、避難場所として予定される公共施設、小中学校などの耐震化率を優先してあげて行っていただきたいと思う。
子育て:2017年度には待機児童解消、
学童クラブ登録児童数も1万2,000人増が目標
子育てでは多様な保育サービスを拡充し、2017年度末までには待機児童を解消となっており、期待される。ただ、目標とする時期までに残された時間はわずか。絵に描いた餅にならぬよう、しっかり施策を実行していただきたいものだ。
保育に関しては都立、公社病院における病児・病後児保育事業の実施も謳われており、2015年度以降順次実施していくとされている。地域は限られるが、病児・病後児保育は不足の目立つ分野。拡充が期待される。
放課後の小学生の居場所作りも盛り込まれている。具体的には2014年5月時点で8万9,327人となっている学童クラブ登録児童数を2019年度末までに1万2,000人増やし、2013年度に1,062校区に設置されている放課後子ども教室を同時期までに全小学校区にまで増やすとしている。
子ども関連ではすべての拘置る小学校通学路に防犯カメラを設置するという施策もある。通学路以外にも街灯防犯カメラの設置が予定されており、子どもを狙う犯罪減少に寄与することになればよいと思う。
子育て支援策を気にして街を選ぶ人もいる昨今。どのような政策を打ち出すかは自治体の将来に関わる
以上、東京で暮らす人にとって直接関係がありそうな点のみをピックアップした。実際には8つの都市戦略と25の政策指針、約360項目の政策目標が盛り込まれており、全体の事業費は15~17年度で3兆7,400億円という巨大な計画である。ざっとしか紹介できていないので、関心がある人は都庁内の都民情報ルームで長期ビジョンの解説書が売られているので、読んでみるのもよいのではないか。