老後を考えたら、
家の中だけでなく街にも注意が必要

子どもたちの姿
一般に住宅購入のきっかけになるのは子どもということが多い。そのため、子育ての環境として街を見ることが多いが、実際には子どもが巣立った後の人生のほうが長いのである
私たちは生涯で何度か、住宅について考えます。親の世帯から独立する時、結婚する時、子どもの誕生あるいは入学する時、そして長い時間が経って体が不自由になった時が代表的なところでしょう。そして、多くの場合、問題は目の前のことしか考えずに住宅を選んでしまいがちだということです。結婚のために住まいを選び、その後、すぐに子どもができ、家が手狭になった、環境が子育て向きでないといった失敗や、子どもの誕生と共に購入した住まいが成長とともに狭くなるといった話はよく聞くところ。同様に、若い時代に買った住まいが老後に向かないことも当然ながらあり得るのです。

マンションのバスルーム
体を支えるため、立ち上がるためとバスルームには2ヶ所の手すりが設置されることが多い
住宅そのものはここ数年で大きく進化しています。新築を中心にバリアフリーを謳う住宅は一般的になっていますし、トイレ、バスルームの手すりはあって当然。スイッチやコンセントの位置、廊下の手すり設置用下地などにも配慮が見られます。住宅内においての高齢化対応はここ何年かで確実に進んでいるのです。

その一方でなおざりにされているのが街です。暮らしは住宅の中だけでは成り立ちませんから、高齢者にとって住みやすい街かどうかは将来に向けて大きな問題になるはずですが、そうした観点からの街選びはあまりされていないのが現実ではなかろうかと思うのです。実際、何年か前から、郊外の不便な場所に、同じ年代ばかりを集めて開発された多摩ニュータウンの失敗が指摘されていますが、それ以降も同じような郊外大規模物件は開発され続けています。もちろん、多摩ニュータウンの失敗には立地、入居者の家族構成以外にも要因がありますが、郊外の大規模物件はそうした失敗に学んでいない、老後に配慮のない住まいとしか言えません。

徒歩圏に生活に必要な施設が揃う、
自分の足で歩ける街が理想

商店街
日常の買い物が徒歩圏で、かつ会話をしながら買い物できる場所があれば、心、体の健康は保たれやすい。心と体の健康はどちらも大事
では、老後にも安心な街とはどんな街でしょうか。いろいろな考えがあるでしょうが、私は住まいの徒歩圏に生活に必要な施設が揃っている、どこへでも自分の足で行ける、『ウォーカブルタウン』ではないかと考えています。この、ウォーカブルという概念に最初に接したのは1990年代のことで、ボルチモアのウォーターフロントに関する取材の中でした。当時、アメリカ、ヨーロッパでは中心市街地の空洞化が問題になっており、その解消のためにウォーターフロントを含め、市街地活性化の各種施策が行われていました。

そのため、この時のウォーカブルには、老後のためのというよりも、安心して歩ける街を取り戻すことでスラム化した中心市街地を活性化させるという意味合いが強かったと思います。ですから、その時の意味そのままではありませんが、それから約20年近く後の高齢化社会日本で高齢になっても安全に暮らせる街を考えた時にこの単語を思い出したのです。それは政府の打ち出す、中心市街地活性化の方向とも重なります。

続いて次のページではこれからの都市作りがどのような方向に行くのか、買ってはいけない家の条件を見ていきましょう。