トライアンフ スクランブラーは「時代の寵児とともに生まれたスタイル」
イギリスのモーターサイクルメーカー『トライアンフ』のスクランブラー。“スクランブラー”とはカスタムスタイルのひとつで、1960年代のアメリカで、「悪路を走りきれるオートバイを」と生み出された、現代のオフロードバイクのご先祖さまです。当時は今ほど多種多様なスタイルがなく、いわゆるネイキッドバイクのみの時代。“遊び方に合わせてバイクをカスタムする”というのは、今以上にポピュラーな頃です。スクランブラーの語源はそのとおり『スクランブル』、つまり、どんな道でも走れてしまう万能型であること。舗装されていない広大な荒野にオートバイを持ち込んで、土煙をあげながら道なき道を走りまくる……。そんなスクランブラーでのバイク遊びを広めたのが、往年の名優スティーブ・マックイーンで、彼が愛したオートバイが、この英国メーカー トライアンフのモデルでした。
映画『大脱走』でもっとも有名なのは、マックイーンがトライアンフで金網を飛び越えるシーン。そして『ON ANY SUNDAY ~栄光のライダー~』でも、マックイーンがスクランブラー化したトライアンフで荒野を駆け抜けるシーンがあります。今で言えば、ブラッド・ピットのようなアメリカのシンボル的存在だったスティーブ・マックイーン。彼がオートバイを自在に操りながら走る姿は当時の若者の憧れでもあり、同時にこのスクランブラーというスタイルをブランド化したのです。現代スクランブラーの源流を辿ると、トライアンフというメーカーに行き着くというわけです。
見た目とは裏腹に実物は結構デカい
そんな現代版スクランブラーは、以前ご紹介したトライアンフ ボンネビルT100をベースにサイズアップしたモデルとなっています。フロントフォークとリアショックをやや伸ばし、ヘッドライトをコンパクトにして、専用のハンドルとエキゾーストを備えた、というのが大まかな内容。エンジンは排気量865ccのバーチカルツイン。やはりブリティッシュモーターサイクルを語るうえで、このバーチカルツインエンジンは無視できませんね。いわゆるダートトラックレーサーなスクランブラー、実はトライアンフ正規ディーラーで話を聞くと、結構女性からの注目度が高いのだそうです。「スタイルが可愛い」ということらしいですが、しかしながら実物の大きさに驚き、そして実際にまたがってみて「足が着かない。大きすぎる」と断念、ボンネビルへと移られるのがほとんどだとか。
ベースとなっているボンネビルは決して大きくはないのですが、スクランブラーはそのスタイルを生むために前後の足(フロントフォークとリアショック)を伸ばしているため、身長160cmぐらいの女性だとちょっと辛いよう。身長174cmの私でも、またがってみたら両足のカカトが浮きます。オフロードバイクとしての要素も求められているスタイルなので、前後アップは致し方ないところ。どんなオートバイにも向き不向きがあるのですが、排気量865ccエンジンに205kgという乾燥重量を考えると、かなり男性向けのビッグオフという感じですね。軽くて取り回しやすい同スタイルを求めるなら、ドゥカティ スクランブラーを検討してみるのもアリでしょう。
それでは次ページにて、このトライアンフ スクランブラーの試乗インプレッションをお届けします!