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江ノ島周辺穴場コース 梅の咲く常立寺から海まで散策

滝のようにしだれる梅の花に、会いに行ってみませんか。江ノ島近くの常立寺には、見事な枝振りの紅白のしだれ梅があります。龍口寺の仏舎利塔に登って、海や江ノ島を見晴して。江ノ電通りをそぞろ歩き、満福寺では源義経の腰越状を拝見できます。最後に浜辺を訪れる、江ノ島~腰越界隈の穴場散策コースをご紹介します。

村田 江里子

執筆者:村田 江里子

鎌倉・江ノ島ガイド

2月中旬おすすめ散策コース ~江ノ島に梅をたずね腰越へ

常立寺の山門

常立寺の参道を歩き山門をくぐって


2月中旬ごろ、梅の花をたずねて歩きたいと思ったら、江ノ島の常立寺はおすすめの穴場スポットです。日当たりが良い常立寺のウメは、鎌倉界隈のほかの場所より、少し早めに花が咲きます。

ここから龍口寺を経て江ノ電通りを歩き、腰越の海に出るのんびり散歩を楽しんでみましょう。

ご紹介するコースの地図

ご紹介するコースの地図

 

常立寺~紅白のしだれ梅は圧巻

江ノ電江ノ島駅から出発しましょう。踏切を渡り、そのまま北方向へ進みます。モノレールの階段下を右手に見ながら通り過ぎ、5分ほど行くと、常立寺があります。梅の花が彩る山門をくぐりましょう。
見事な枝振りの常立寺のしだれウメ

常立寺のしだれ梅
 

境内に入ると、滝のようにしだれ落ちる、見事な枝ぶりのしだれ梅が出迎えてくれます。見ごろは2月中旬ごろ。日当たりが良いので、鎌倉・江ノ島界隈では早めの時期に満開になります。

片瀬の龍口寺のあるところは元刑場で、首をはねられた者のなきがらを埋葬して供養したのがこの常立寺のところだといわれています。常立寺は、龍口寺輪番八カ寺のひとつ。龍口寺は、日蓮上人の法難の地に建てられた、大切な霊場です。そこで龍口寺には住職を置かず、近くの8つのお寺「輪番八カ寺」が順番に龍口寺を守りました。

本堂向かって左手に、青い布をまとった石塔が見えます。これは元使塚(げんしづか)。日本に降伏を迫って訪れた元(現在のモンゴル)の国の使者が、徹底抗戦を期した北条時宗により処刑され、その魂をまつった塚と伝えられています。
青い布が巻かれた元使塚

青い布が巻かれた元使塚


はかなく異国の地に散った人々の思いをしのび、モンゴルの大統領や、モンゴル出身の横綱をはじめとする力士たちが、この塚にお参りに訪れてきました。そうした方々の想いにより、英雄を表すものとされる青い布が巻かれてきました。

鐘楼の横を通り、お寺を後にしましょう。駐車場脇を通る出口付近に、冬なら白い木の実がたわわになっています。これはセンダンの実。葉が落ちた枝に鈴なりになっている様子が、珍しく印象的です。
センダンの実

センダンの実

「センダンは双葉(ふたば)より芳し(かんばし)」(=優れた人は、幼少期からその頭角を現す)などといわれますが、ことわざではビャクダンのことを指すそうで、この木とは別物。センダンの木には香りはありません。目を引く白い実ですが、食べると毒なので注意してくださいね。

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■常立寺
住所:藤沢市片瀬3-14-3
TEL:0466-26-1911
YAHOO!地図


えのしま道の道標

常立寺を出たら、少し江ノ島駅方面に戻ります。最初のY字路の別れ道の端に、「従是右江島道 左龍口道」と彫られた石碑が立っています。
江ノ島と龍口寺の方向を示す江戸時代の道標

江ノ島と龍口寺の方向を示す江戸時代の道標

右に進むと江ノ島、左に進むと龍口寺であることを教えてくれる道標で、江戸時代につくられたもの。歴史の風格ある石碑です。道標に従い、左の龍口寺方面に進みましょう。


龍口寺 ~ヤブツバキを愛で海や江ノ島を見晴らす

Y字路を左手に進み、そのまま道なりに行くと、龍口寺に着きます。道を渡ってすぐ、入口から境内に入ると、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」と曼荼羅(まんだら)の書かれた、大きな碑が建っています。
日蓮上人法難の地である刑場跡

ここが日蓮上人法難の地、日蓮宗の聖地です


ここは、日蓮上人が法難から免れた聖地。災害や戦乱が続くのは、幕府が邪宗を信じているためであるなどと説く立正安国論を書いた日蓮上人は、捉えられ、この地の刑場で処刑されることとなりました。首切り役人が刀を振り上げた瞬間、空に光るものが飛び、役人は目がくらんで切ることができなかったといいます。そうして日蓮上人は、処刑を免れることができました。
龍口寺の大本堂

堂々とした龍口寺の大本堂


階段を上ると、堂々とした、青銅屋根の大本堂に迎えられます。龍口寺の名にふさわしく、江戸時代につくられた、龍などの見事な彫刻が施されています。中に入り、ご本尊の日蓮上人像にお参りを。

お参りがすんだら、本堂裏の山へ登っていきましょう。途中には、五重の塔があります。明治43年(1910)につくられたもので、古典的な建築様式が用いられ、関東大震災の折も倒れることはありませんでした。 
五重の塔

五重の塔


周囲の山道には、紅色のヤブツバキがあちこちに咲いています。鎌倉・江ノ島辺りでは、12月から3月ごろまで長く咲く花。メジロやヒヨドリなど、鳥に花粉を運んでもらうんですよ。
ヤブツバキの花

江ノ島・鎌倉界隈の森に自生するヤブツバキ


いよいよ山頂へ到着。視界が開け、目の前に、白亜の塔がそびえ立ちます。
仏舎利塔

天に向かってそびえる仏舎利塔

昭和45年に建てられた仏舎利塔(ぶっしゃりとう)で、インド・ネルー首相より拝受した仏舎利が収められています。

階段を上ると、江ノ島や相模湾を望む見晴しが開け、空気の澄んだ日には富士山や丹沢山塊も見えます。ゆるやかにカーブを描く海や雪をかぶった山々、海辺の街並み……のびやかな景色に、心も晴れ晴れ。
仏舎利塔から望む富士山や相模湾

仏舎利塔から望む富士山や相模湾
 

江ノ島と向かい合うようにそびえる龍口寺の山。「龍」の字が地名につくこの辺りには、龍にまつわる伝説があります。昔、この付近に、5つの頭をもつ龍「五頭龍(ごずりゅう)」がすんでおり、人の子どもを食べるなど悪さを繰り返していました。

あるとき、雷鳴とともに海の上に江ノ島が現れ、美しい江ノ島弁財天が天から舞い降りてきました。その姿に龍は結婚を申し込みますが、「あなたのような悪事をする人とは結婚できません」と断られてしまいました。

それから龍は改心し、津波を押し戻したり、台風を吹き飛ばしたりして人々のために尽くしたといいます。しかし、そのたびに、龍は衰えていきました。そして、「私はもう力尽きました。これからは、山となって人々をお守りしたいと思います」と言うと横たわり、龍の体は山になったということです。

この口に当たる部分が、龍口(たつのくち)となったといわれています。今でも残る、緑の森と、海を挟んで向かい合う江ノ島。龍と弁財天の恋の伝説を、ほうふつとさせる豊かな自然が、今もこの地に残っています。

空気の澄んだ日には、南の正面に大島が見えることも。
仏舎利塔より望む大島

仏舎利塔より望む大島


たっぷり眺めを堪能したら、山を下りましょう。日蓮上人が、最初に開いた千葉県のお寺・中山法華経寺から寄贈されたという、延寿の鐘をぜひ突いて。ゴーン……深く、お腹の底に響くような鐘の音に包まれると、本当に長生きのご利益がありそう。
延寿の鐘

延寿の鐘


本堂から降りる際、右手の山際を行くと、日蓮上人が、処刑される前に閉じ込められていたという土牢もあります。

<DATA>
■龍口寺
住所:藤沢市片瀬3-13-37
TEL:0466-25-7357
ホームページ:http://ryukoji.jp


扇屋 ~レトロな味わいの江ノ電もなか

龍口寺を後にしましょう。カンカン……と鳴る踏切の音。道を渡って少し海寄りに進んだ左手にある「扇屋(おうぎや)」で、江ノ電もなかをお土産に購入するのもいいですね。まるごと、江ノ電の車体がはめこまれた店構え。
江ノ電の車体がはめこまれた扇屋のお店

江ノ電の車体がはめこまれた扇屋のお店


箱が江ノ電をかたどっていて、子どもがいる方へのお土産にも喜ばれそう。老舗らしい、昔ながらの味わいです。
江ノ電のパッケージがかわいい江ノ電もなか

江ノ電のパッケージがかわいい江ノ電もなか


<DATA>
■扇屋
住所:藤沢市片瀬海岸1-6-7
TEL:0466-22-3430
YAHOO! 地図

江ノ電もなか:味は以下の5種類
・青電:ゴマの入った胡麻餡
・赤電:梅肉の入った梅餡
・新電:ゆずの香りのゆず餡
・チョコ電:漉し餡に求肥の入ったもの
・江ノ電:粒餡の求肥の入ったもの

1個130円
10個入り詰合せ 1300円


江ノ電の走る道を歩いて腰越へ

腰越方面に向かって歩きましょう。江ノ島駅から腰越駅までは、江ノ電は路面電車となって、車や人と同じ道を走ります。ちょっとレトロな商店街沿いの、のんびりした風情。
路面電車となる江ノ電とともに道を歩いて

路面電車となる江ノ電とともに道を歩いて


道沿いには、以前の記事でご紹介した、地場の食材を使ったすてきなイタリアンレストラン「クラリタ・ダ・マリッティマ」もあります。

<DATA>
■クラリタ ダ・マリッティマご紹介記事


途中には、地場の魚を売っている魚屋さんもあります。2月ごろは、ちょうどワカメのおいしい季節。やわらかな旬のワカメを、お土産に購入するのもいいですね。

江ノ電腰越駅の前を過ぎ、さらにまっすぐ進むと、道の左手に満福寺があります。この地ゆかりの源義経の腰越状が拝見できるお寺で、お堂に上がってちょっと温まらせていただけるのも、ありがたいこと。


満福寺 ~源義経の腰越状を拝見

江ノ電の踏切を渡り、階段を登りましょう。
江ノ電の踏切と満福寺

江ノ電の踏切を越えてお参りする満福寺


拝観料をお納めして、お堂に上がります。まずは奥のご本尊・薬師如来さまにお参りを。満福寺は、奈良時代、行基菩薩が開いたといわれるお寺です。当時、関東で疫病がはやり、「関東に下って悪い病気を除くように」との聖武天皇の命を受けた行基がこの辺りに来たところ、海と山の景色が大変美しく見えたので、薬師如来像を彫ってお納めしたところ、人々の病も治癒していったそう。そこで建てられたお堂が、この満福寺の始まりといいます。

お堂の中には、鎌倉彫がたくさん飾られており、この地ゆかりの源義経や静御前、弁慶などの襖絵は迫力があります。
腰越状を持つ源義経が描かれた鎌倉彫の襖絵

腰越状を持つ源義経が描かれた鎌倉彫の襖絵


玄関近くに戻り、源義経の腰越状を拝見しましょう。
弁慶が書いた腰越状の下書きとされる書状

弁慶が書いた腰越状の下書きとされる書状

源義経は、平家を滅ぼす手柄を立てたものの、兄・頼朝はその勢力を恐れたこともあってか、鎌倉に入れることを許さず、義経はこの腰越で、兄に許しを請う手紙をしたためました。それが、この腰越状です。義経の想いが、にじんでいます。

また、奥の畳のお部屋には、義経が、海の上で船から船へと飛び移り、敵を倒した「八漕飛び(はっそうとび)」の様子が描かれた浮世絵なども飾られています。
義経が活躍した壇ノ浦の合戦を描く浮世絵

義経が活躍した壇ノ浦の合戦を描く浮世絵


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■満福寺
住所:鎌倉市腰越2-4-8
TEL:0467-31-3612
ホームページ


小動神社 ~海への信仰がいきづく鎮守さま

満福寺を拝観したら車道に戻り、そのまま海方面に正面の道を進むと、小動神社(こゆるぎじんじゃ)の鳥居があります。参道を登っていきましょう。
小動神社

小動神社


階段を上って、お社にお参りしましょう。この腰越のまちの鎮守さまです。漁師町の人々に信仰されてきた歴史を感じる、素朴な趣ある境内。
小動神社より望む江ノ島

小動神社より望む江ノ島


展望台から、海を眺めて。正面に見えるのは、江ノ島です。かつて、江ノ島に、腰越付近にまつられていた仏様の像が流れ着いたことから、江島神社と、小動神社は夫婦神とされています。毎年7月には、両社のお神輿が出会い、まちを練り歩く天王祭が行われます。

社殿の正面には、天王祭で使われるお神輿が収められています。昔から、腰越と江ノ島の漁師さんたちは助け合って暮らしてきたとのこと。そんな人々の想いをほうふつとさせる境内です。

展望台で、ちょっと一息。この地には昔、風もないのに枝葉を揺らし、妙なる音を奏でる「小動の松」があったそう。このことから、小動岬と呼ばれるようになりました。
七里ヶ浜より見た小動岬

七里ヶ浜より見た小動岬


最後に、社殿の向かって左奥を拝見しましょう。大きなカメの石像がまつられています。
漁の神様、竜王さまを乗せるといわれるカメの像

漁の神様、竜王さまを乗せるといわれるカメの像


これは、海の神様である竜王さまの使いといわれ、漁師さんが網で海から引き揚げたものだそう。海に生きた人々の信仰が伝わる境内です。

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■小動神社
住所:鎌倉市腰越2ー9ー12
TEL:0467-31-4566
YAHOO!地図


腰越の海でほっと一息

小動神社を出たら、国道134号を少し鎌倉方面に歩いて、砂浜へ。七里ヶ浜から稲村ヶ崎方面を見晴らす、風光明媚な景色が望めます。広々とした海を眺めて、ほっと一息。
早春の風物詩、ワカメ干し

早春の風物詩、ワカメ干し


2月ごろなら、浜辺でワカメ干しの風景が見られるかもしれません。天然のワカメを、漁師さんが船に乗り、ワカメ切りといわれる長い棒のような道具で収穫して干したもの。腰越辺りのワカメはやわらかくておいしいんだよ、と、地元の漁師さんがおっしゃっていました。すぐそばの漁師小屋で、海の幸を購入できることもあるので、ぜひ覗いてみて。

また、2月ごろ砂浜を歩くと、打ち上げられたワカメを拾えることもあります。根元にメカブといわれる、アコーディオン状のひらひらがついているので、見分けられます。ビニール袋などに入れて持ち帰り、洗ってゆでてみてください。パッと鮮やかな緑色になります。おすすめは、ワカメの刺身。ゆでたワカメを、わさび醤油でいただきます。お味噌汁に入れたり酢の物にしたり、磯の味をたっぷり堪能してくださいね。


海辺の街の散策が済んだら、腰越駅か鎌倉高校前駅から江ノ電に乗って、帰途につきましょう。ふくいくと咲く梅の花を眺めたり、素朴な海辺の街並みを散歩したり。心がほっと温かくなるような散策に、どうぞ出かけてみてくださいね。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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