住宅など建物の大きさを制限するために、建ぺい率、容積率、斜線制限、高度地区などいくつもの規定があります。それらの中で最も分かりづらいのが、「天空率」による制限緩和の規定ではないでしょうか。
天空率とは、建築基準法の改正により2003年(平成15年)1月1日から導入されたもので、大まかなイメージとしては「カメラの魚眼レンズで見上げたときに空が占める割合」と考えて差し支えありません。
採光や通風の確保を目的として定められた斜線制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線)に適合する建物よりも、実際に計画する建物のほうが空を覆う割合が少ない(天空率が大きい)のであれば、斜線制限を適用しないことができるという緩和措置です。
天空を水平投射して表した図面が「天空図」であり、新築マンションのモデルルームなどで見たことがあるという人も多いでしょう。
測定点の設定や計算方法に関する実際の規定は細かく、また、手計算で天空図を描くことは困難なため、PCと専用ソフトの普及が天空率の導入を可能にしたという側面もあります。
従来は斜線制限で一律にカットされ、不自然な斜めの部分がある一戸建て住宅や、階段状になったマンションなども都市部には多く見られました。しかし、天空率の考え方が導入されたことで設計の自由度が増し、高さのある建物を建てやすくなったとされています。
また、天空率によって容積率が緩和されるわけではありませんが、斜線制限のためにこれまで容積率を十分に消化できなかった敷地では、その有効利用も可能となっています。
なお、天空率によって緩和されるのは斜線制限であり、日影規制と高度地区については緩和の対象となっていません。
一般の消費者が天空率の規定について細かく知る必要はなく、「天空率によって斜線が緩和される場合がある」ということだけ覚えておけば十分でしょう。
ただし、自らが施主として注文住宅を建てるような場合には一定の注意も必要です。一戸建て住宅での天空率の適用事例はまだそれほど多くないでしょうが、近隣への配慮を欠かすことができません。天空率の適用によって、従来は難しかった大きさの住宅を建てれば、すでに住んでいる隣地からクレームが出ることも考えられるのです。
もし、注文住宅の設計段階で建築士や営業担当者から天空率の話が出たら、隣地などの住宅と比べて違和感がないか確認したり、場合によっては隣地などへの説明を尽くしたりすることも必要です。天空率で認められるからといって、ぎりぎりまで大きな住宅を建てることが良いというわけではありません。
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