本場スイスのチーズの種類
ベルン州では、放牧地(アルプ)で作られるチーズの種類は、大きく分けると放牧されていた標高によって呼び名が変わります。だいたい標高1500mまででとれたミルクから作られたものがベルグケーゼ、標高2000mを超えるとアルプケーゼと呼ばれます。また、熟成期間を短くして小さ目に作られたものはムッチュリと呼ばれます。マイルドな味で、作り立てのフレッシュは本当にミルクの味がします。それぞれのチーズは、1年もの、2年もの、3年もの、と言って熟成期間で分けられて値段が付けられます。期間が長くなるほど味も香りも凝縮され濃く感じるでしょう。
酪農家によっては、ヤギや羊のチーズも作っています。牛のミルクで作られたものに比べると、香りが個性的で強く感じるかもしれませんが、意外に癖になるかも?ワインや料理に合わせて、お好みの味を探してみて下さい。
ユスティス谷のチーズ祭り
ユスティ谷のチーズ出しバケツリレー
9月後半、山が少しずつ秋色に染まり始めるころ、各地の放牧地(アルプ)で、一夏かけて山小屋で作られて寝かされていたチーズが、各酪農家に分配されるチーズ分配祭りが行われます。
ベルン州最大規模のチーズ分配祭りと言われるのが、スイス中央部のトゥーン湖から北に延びるユスティス谷。ここは普段は展望台も登山列車も走っていない静かな谷間。この日だけは一般客が見にくるために、最寄りのシグリスヴィル村、またはベアテンベルグ村から専用バスが終日運行されるほどの一大イベントにもなっています。
3から5kgの大きなチーズの塊を、新しいものから古いものまで公平に混ざるよう、小屋からバケツリレー方式で出しながら、いくつもの塊に積み上げていき、最終的には預けていた牛の乳量に比例して分配されます。何度見ても、合理的なスイス人気質を表しているなぁ、と感心させられる見ごたえある共同作業です。
この祭りの間、周囲では、人が集まったと思うと白ワイン片手にヨーデルを唄い、スイスアコーディオンが陽気なメロディーを奏で、アルプホルンが谷に鳴り響きます。一夏の仕事を終え、ほっとした瞬間。人々の笑顔も格別です。
祭り終盤になると、やっと主人公のお出ましです。チーズ分配式は一番麓に近い山小屋で行われるのですが、それより高いアルプまで上がっている牛たちが、それぞれの持ち主に率いられて麓へ下りてきます。“牧下り”ドイツ語ではアルプアブツーク、フランス語ではデザルプと呼ばれる伝統行事です。この時に、一番多くミルクを出した牛が、一番大きな花で飾り立てられます。注目を浴びているのを知ってるかのように誇った表情に見えるのは気のせいでしょうか?!
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■ユスティス谷
開催日:9月中旬(2015年9月18日)
開催地:シグリスヴィル
アクセス:シグリスヴィル中心広場、またはベアテンベルグのロープウェイ駅より
例年8:00以降、特別バスが運行開始
その他のベルン州のチーズ祭り
9月半ばから後半にかけて、ベルン州に滞在すると、ユスティス谷以外でもいくつかのチーズ祭りに出会うことができるかもしれません。見ているだけでも面白く、会場形式で一緒に楽しむ雰囲気を作ってくれているものもあるので、機会があれば一日かけて訪れてみたいお祭りを2つご紹介します。■メーギスアルプのチーズ祭り
最寄りの村はスイスのほぼ中央に位置するマイリンゲン。この村から標高2250mまで上がるアルペンタワー展望台までのロープウェイが出ています。その中間駅、なだらかな牧草地が広がるメーギスアルプが祭りの舞台です。ポストカードやカレンダーの表紙を飾るベルナーオーバーランド三山が違う角度から見えて、ただ訪れるにも風光明媚な穴場です。
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開催日:9月中旬
開催地:ハスリベルク
アクセス:マイリンゲンからロープウェイでハスリベルグ ロイティへ。ゴンドラに乗り換えてメーギスアルプへ。所要約20分。
■ウェンゲンのチーズ祭り
グリンデルワルドとメンリッヘン展望台を挟む山の反対側に位置し、ユングフラウヨッホ登山鉄道、シルトホルン展望台へも足を延ばせる便利な観光地の起点。ラウターブルンネンのU字谷を見下ろす日当たりのいいテラスに広がる、ガソリン車乗り入れ禁止の小さな村です。
ここではチーズを作る体験イベントやカウベル隊、ヨーデルクラブなどの催しもあり、観光客として参加しやすい形式になっています。
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開催日:9月下旬
開催地:ウェンゲン
アクセス:インターラーケンオスト駅からラウターブルンネンへ。クライネシャイデック行き登山列車に乗り換え、ウェンゲンまで。所要約45分。