ライバルの完璧なレースぶりに脱帽
懸念していた出遅れはなく、好スタートを切ったシャドウダンサー。ゲートに入ったときは少しバタバタしていたのですが、何とか無事にスタートを切りました。そしてその後は、岩田騎手に導かれ「あわや先頭を奪うのか?」という勢いで先団へ。これは、スタート直後に他馬より前へ出て、内側へ切り込んでいく動き。ずばり、体力のロスがない“インコース”を取るのが狙いです。そして、狙い通り最内のポジションを確保しました。終始インコースを回り、直線は最内から抜け出した前走。まるでそのリプレイを見るようなポジション取り。シャドウダンサーも、岩田騎手の指示通りに動きます。馬の様子も、レース中はやる気満々。岩田騎手の背中が丸まり、重心が少し後ろに行っているのは、シャドウダンサーが手綱を通して岩田騎手を少し引っ張っている証拠。それだけ走る気に満ちているのです。
ここまでのポジション取りは完璧。ただ、それ以上にうまくレースを運んでいたのが、スタートから先頭に立って逃げ切ったスズカデヴィアスでした。
レースを引っ張る馬、いわゆる「逃げ馬」は、自分でペースをコントロールできる強みがあります。そのため、昔から「波乱を起こすのは逃げ馬」といわれるほど。スズカデヴィアスもこのレースで、「逃げ」のメリットを最大限に生かしたのでした。
それはレースのタイムを見れば分かります。たとえばシャドウダンサーの前走・鳴滝特別は、前半1000mの通過タイムが61.5秒。これはなかなかのスローペースなのですが、比叡ステークスでスズカデヴィアスが刻んだ前半1000mは、さらに遅い61.9秒。クラスが上がったことも加味すれば、かなり緩いペースといえます。
前半のペースが遅くなればなるほど、前目のポジションにいる馬が有利。終盤まで余力が残っている分、前半のリードが活きるからです。シャドウダンサーはスズカデヴィアスの直後にいましたが、それでもこのリードは大きい。スズカデヴィアスはあくまで実力馬ですから。余力が残った実力馬を最後のスパート合戦でかわすのは、簡単ではないのです。
なお、スズカデヴィアスが「逃げ」の戦法を取ったのはこれが初めて。それでいて、完璧なヘッドワークでした。
最後の瞬発力勝負があまり得意ではないシャドウダンサー。同馬にとっては、もう少しペースが早くなって、持久力を問う展開がベスト。しかし、今回のレースはそうなりませんでした。そういう意味では、スズカデヴィアスにうまく封じ込まれたレースと言えるでしょう。
気を取り直して、再度のチャレンジへ
直線に入ったところにもポイントがありました。シャドウダンサーは、前走のように最内から一気に抜け出すレースをしたかったはず。しかし、スズカデヴィアスがそのコースをきっちり抑えました。そのためシャドウダンサーは、外に進路を確保してからスパート。この一瞬の攻防も、1着と2着を分けた差でしょう。なにせ最初のペースが遅いため、ラストスパートはみな余力がある全力疾走の状態ですから、一瞬のロスが勝敗を分けるのです。ちなみにスズカデヴィアスは、この後に出たG2ステイヤーズステークス(芝3600m/中山競馬場)で4着と健闘。重賞レースのG2で好走しました。となると、その馬に負けたシャドウダンサーも悲観する必要はありません! 比叡ステークスは、強い馬にテクニックで負けた仕方ない敗戦。すぐに順番は回ってくるでしょう。
なんてことを考えていたら、シャドウダンサーの次走予定が出てきました。12月27日のグレイトフルステークス(芝2200m/中山競馬場)です。このレースで、今度こそオープン入りを目指す形。なんとグレイトフルな展開でしょうか。
距離は前走と同じですが、コースは中山競馬場に変わります。とはいえ、中山競馬場は、今年の3月にシャドウダンサーが白星を挙げたコース。私が間近で写真を撮りまくった舞台。そんなゲンの良い場所なら、必ずや勝利を挙げてくれるはずです!
グレイトフルステークスは、12月27日(土)の14時55分スタート。ちなみに翌日は、中山競馬場で年末の大一番、G1有馬記念(芝2500m/中山競馬場)が行なわれます。「来年はシャドウダンサーもこの舞台に……」というのはちょっと話が大き過ぎですが、とにかくここでオープン入りを決めてほしい。シャドウダンサーの走りに注目です!
(リンク)
シャドウダンサー|netkeiba.com
比叡ステークス|レース結果|netkeiba.com
グレイトフルステークス|レース情報|netkeiba.com
スズカデヴィアス|netkeiba.com