将来の値上がり益より今の「プレミアム」
毎月分配型の投資信託の一部で採用されている「オプション・プレミアム戦略」、あるいは「カバードコール戦略」と呼ばれる運用手法は、将来のある水準以上の収益機会を手放す代わりに、今確実に受け取れる収益を獲得するというものです。想像してみてください。あなたは時価10,000円のA社株式を保有しています。A社株式はこれから10,500円に上がるかもしれないし、9,500円に下がるかもしれません。1カ月後、順調に上昇して10,500円になった場合、500円の収益を手にすることができます。しかし、あなたは万が一9,500円に下落してしまった場合の損失を少しでも軽減させたいとも考えています。
株価下落時の損失を軽減させたいあなたは、向こう1カ月の間にA社株式が上昇した場合の収益を500円ではなく最高で300円に抑える一方、代償として今50円の「プレミアム」を受け取る契約を結びました。もし1カ月後にA社株式が10,300円を超えて上昇していたとしても、300円以上の儲けを手にすることはできません。ただし、契約を締結した今の時点で確実に50円の収益が確定します。
株価が上昇すると機会損失は増大
では、この契約を結んだ後、1カ月後にA社株価が10,000円から上昇していた場合、変化しなかった場合、下落していた場合それぞれの結果を見てみましょう。
■ 10,500円に上昇した場合 10,300円までの儲けである300円しか受け取れません。プレミアムとして受け取った50円と合わせた350円があなたの収益合計です。この戦略をとっていなければ500円儲かっていたはずですから、残念ながら差引き150円の儲けを逃したことになります。
■ 10,000円のままだった場合
A社株式による損益はありません。しかしあなたには、上記契約のプレミアムとして既に50円を受け取っていますから、この戦略をとらなかった場合に比べて、50円分得したことになります。
■ 9,500円に下落した場合
A社株式の下落で、500円の損失が発生します。ただし、あなたはプレミアムの50円を既に受け取っていますから、トータルの損失は450円に軽減(-500円+50円)され、この戦略をとらなかった場合に比べて「ましだった」ということになります。
こうしたカバードコール戦略を毎月繰り返すことにより、上記の「50円」の「プレミアム」に当たる収益が、毎月安定的に分配金の一部として獲得できます。ただし、この戦略を取ると、株価がある一定水準以上に上昇した場合、その水準以上の収益を受け取ることはできません。値上がり益を諦めた上で、現在の「プレミアム」を受け取っているということを覚えておいてください。