インテリアデザインは二極分化しています
――最近のインテリアデザインについて、お感じになっていることがあれば教えてください。
「デザイナーの『作家性』の扱いが変わってきたことを強く感じます。かつての奇をてらった、こけおどし的なデザインは見かけなくなりましたよね。経済状況や、お店の賞味期限を考えると、発注者側も『インテリアデザインに投資することは得策ではない』という結論になっているのでしょう」
――たしかに、バブル期によくあった派手なデザインのお店は少なくなりました。
「それはエンドユーザーも、とっくに気づいていることでしょう。インテリアの世界でも二極化が顕著になっています。『DIYやリノベーションなどローコスト化の方向性』と『作家性が薄くなることで逆に高まる本物指向』という対立。特に、後者では、正攻法のデザイン、つまり、マテリアルの高級化や、素材を生かしたインテリアデザインが求めらます。こうしたものは、見た目は地味に感じるかも知れませんが、デザイナーの力量が問われる高度な作業なんです」
インテリアは、環境であり暮らしの一部です
――では、ズバリ、インテリアとは? そして高橋さんは、たくさんの商業空間を手がけられていらっしゃいますが、ご自身がつくったもののなかで気に入っている作品を教えてください。「インテリアは、言い切ってしまうと『環境・暮らしの一部』。過去の作品については、つきあってる異性と同じで、いま進行中のものがフレッシュで一番ですね。思い出すのも大変だし……。って、これは、多すぎて思い出せないという意味ではありませんが……(笑)」
青山で竣工したばかりの「フレッシュ」なチャイニーズレストラン。上の壁紙はヨーロッパ製で、その手前の照明は「パントンチェア」で知られるヴァーナー・パントンの「ファン・シェル・サスペンションランプ」。デンマークデザインが中華な空間にマッチしています。下のペンダント照明はミッドセンチュリーデザインが人気のジョージ・ネルソンのもの。欧米デザインをシノワズリーっぽくなじませるのが高橋クオリティ。
「そうですねー(しばらく考えて……)。きょうの気分では、ル・コルビジュエのダイニングチェア『LC7』です。若いときに見たこの椅子はかたちもモダンでかっこよくて衝撃でしたし、回転するところなど椅子に対する概念が変わりました。建築家・画家としてのコルビジュエ、そして彼のデザインした、さまざまなプロダクトとの出会いは、この業界に入ったきっかけのひとつです」
――好きな建築家は誰ですか?
「まず、思い浮かぶのはフランク・O・ゲーリー。最近はゴージャスな作品が多いですが、昔のローコストでつくっていたころのゲーリーの自邸や、有名な段ボールの家具シリーズ『イージー・エッジズ』は、いま見ても新鮮です」
――建築・インテリアに限らず影響を受けたデザイナーはいますか?
「イームズ夫妻は好きです。映像もやったりして、建築やインテリアデザインばかりしてないところがいい。本当は、建築家やデザイナーは、ほとんどの人が好きなので、嫌いな人を数えた方がはやいです。嫌いなデザイナーは、すぐ言えますが……、ここでは発言を控えておきますね(笑)」
※次のページでは、
「シャクにさわるデザインを見かけたらラッキー!」
という高橋さん独自の考え方を紹介します。