まだ完成していない建売住宅やマンションの広告・パンフレット・販売図面などには、たいていその完成予想図が描かれています。新築マンションの工事現場では、工事用のフェンスなどに完成予想図が掲げられている場合もあるでしょう。
この完成予想図については、不動産公正取引協議会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約」および「同施行規則」により、「事実に相違する表示または実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」はできないことになっています。
完成予想図で表される新築建物は、最終的な設計図書などをもとに描かれたものであり、少なくとも建物本体部分については完成後の現物と大きく異なることはありません。
しかし、その外構や植栽など建物以外の部分については、必ずしも完成予想図どおりになるとはいえないでしょう。建物本体についても、意図的な改変がないとはかぎりませんが……。
完成予想図のイメージが完成後の建物と異なりやすいのは、周囲の様子です。たとえば、隣の建物が邪魔だからといって、その代わりに公園を描けば「事実に相違する表示」として禁止の対象になります。
ところが、公正競争規約では「周囲の建物などは描かなくてもよい」とされているため、販売物件の建物本体と外構、敷地内の植栽くらいまでしか完成予想図に描かれていないことが大半で、隣地の建物が半透明の箱のようになっている場合もあるでしょう。
敷地規模の大きなマンションならあまり問題は起きないのですが、中・小規模のマンションでは周囲が描かれないことによって建物の雰囲気は大きく変わるため注意が必要です。
完成予想図では4方向とも開放感に溢れ、日照も眺望も申し分ないイメージだったのに、いざ現地を見ると3方向を他のマンションやビルなどに囲まれ、道路に面した部分しか目の前が開いていないこともあります。
建売住宅の場合も同様で、完成予想図に描かれた複数棟のいちばん端の建物だからといって、横の空間が確保されているわけではありません。
また、建物の前の電柱や電線なども描かれないため、低層階では窓からの眺望のイメージが現実と大きく異なる場合もあるでしょう。それほど広くない道路に面して、ぎりぎりに建てられるようなときは注意が欠かせません。建物の隣が墓地などの場合も同様です。
以前に東京都心のマンションの完成予想図で、キラキラと夜空の星が描かれたものもありましたが、余計なものが描かれていればほとんどの人は気付くはずです。ところが、描かれていないものについては分かりにくく、なかなか想像しづらいものです。
完成予想図は、普通に考えれば現物よりもよく見えるはずですから、これによってイメージを膨らませ過ぎないように注意したうえで、しっかりと建設現場の周辺の様子を確認することが欠かせません。
さらに、最近の完成予想図はCGを使って精巧に描かれ、エントランスホールや部屋の内部などさまざまな図が掲載されていることもありますが、たいていは最も見栄えのする角度を検討したうえで作成されています。日常生活の視点の高さとは違う場合もあるでしょう。
関連記事
不動産売買お役立ち記事 INDEX不動産広告の表示規約に関する改正点を確認