2015年入試の危険な落とし穴
しかしこの「安全志向」が、サンデーショックの年においては危険な罠になりかねないことも忘れてはいけません。つまりみんなが「安全志向」に進むことにより、安全であるはずの学校が、かえって受験生が集中して競争率が増すということも考えられるからです。たとえば、例年2月2日の入試に御三家志望者がたくさん集まる鴎友学園(鴎の正式表記は區へんに鳥)や洗足学園や吉祥女子あるいは大妻・共立などの中学は、いつもの年なら2月1日入試は御三家とバッティングするのに、2015年は女子学院志望者がおさえ校として受験しに来ますので、難易度が上がる可能性があります。では2月2日は大丈夫かというと、今度は桜蔭や雙葉の志望者がおさえ校として受けにくるわけです。つまりこうした学校は、例年に比べて注意が必要になってきます。
また普段は女子学院と入試日程がバッティングするためになかなか受けられない2月1日の頌栄女子も要注意です。頌栄は校風や生徒の雰囲気が女子学院と似たところがあるため、例年ですと成績トップ層は女子学院を、その次の層は頌栄を受験していたのですが、2015年入試では併願が可能となり2月1日の頌栄は難易度が上がる可能性があります。
各校、説明会の時などに、どの学校との併願が多いのかの資料を作っているかと思いますので、それらをしっかりと研究していただき、入試動向をチェックしてみてください。
午後入試が男女問わず、サンデーショック全体に大きな影響を及ぼす
女子に比べ、男子への影響が少ないこともサンデーショックの特徴です。これは男子校にもともとプロテスタント校が少なく、入試日を変更する学校もほとんどないこと、そして共学校の難関である青山学院はもともと入試日が2月2日であることなどがその要因です。例年ですと、影響なくてよかったね、となって終わるところなのですが、最近のもう一つの中学入試のトレンドである、「午後入試の活用」というのが、2015年のサンデーショックをより複雑化させると考えられます。
前回の2009年ころは、まだここまで午後入試が一般化していませんでした。受験できる学校もそれほど多くはなく、選択肢自体が少なかったからです。御三家組は、面接もあるため、物理的に午後入試は受験不可能でした。
ところがサンデーショックの時には、午後入試もからめた併願パターンが可能となってきます。たとえば、2月1日の午前に鴎友学園と国学院久我山STを受験して2月2日は女子学院を受ける、といったことが可能となってきます。国学院久我山はスライド合格制度を採用しており、かつ当日23時に合格発表も行われますので、2月1日に進学先を確保した状態で2月2日の女子学院入試に臨むことができるのです。これは女子学院受験生にとって、精神的に大きなアドバンテージとなりえます。
逆に言えば、それだけ2月1日の午後入試が、し烈な争いとなりうるといことです。男女別で合格基準を設けている国学院久我山のような学校はともかく、男女を混ぜて合否を出す学校の場合、この女子学院志望者の動向が男子受験生にも、少なからず影響を及ぼすということです。こうした傾向は、前回までのサンデーショックにはなかったことです。
中学入試成功のカギは「併願作戦」
こうしてサンデーショックを分析してみると、改めて「併願作戦」の重要性が際立ってきます。今年は例年に比べ、全体的に厳しいことが予想されますので、通塾先の担当の先生としっかりとした作戦を練ってください。この時、塾の先生に丸投げするのではなく、保護者の皆様ご自身が、学校説明会で仕入れてきた情報を元に、しっかりと研究することが大切です。上記に挙げた学校以外にも、影響を受ける学校は決して少なくありません。いわゆる「玉突き現象」が起こるからです。玉突き現象とは、元々女子学院志望者だった人が、吉祥女子を受け、吉祥女子の第一志望者がはじき出されて不合格になってしまうという現象です。それを避けるために今度は吉祥女子志望者が、さらに志望校を下げるという多重玉突き現象も起こりえます。入試倍率などを毎日チェックして、動向を見極める必要もあります。
また最近では、医療の世界では普通におこなわれている「セカンドオピニオンを立てる」という方法が、受験の世界にも徐々に浸透しつつあります。現在小5や小4のお子さんを持つ方は、普段通っている塾以外に、何でも相談できる先生を探しておくと良いかもしれませんね。