江戸時代から気取りのない庶民の街、
その面影は南口側に色濃く
錦糸町駅南口。駅ビルテルミナの手前右隅に東京メトロ半蔵門線の出入り口が見える。総武線の錦糸町駅とは多少離れている
総武線、東京メトロ半蔵門線が乗り入れる墨田区錦糸町は本所と呼ばれた江戸時代から下級武士や浪人者の借家、役宅が集まる庶民の街でした。根強い人気を誇る池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」に登場する火付盗賊改の長官長谷川平蔵はこの地で生まれ育ったため、旗本ながら庶民の生活を知っており、それが温情あるお裁きにつながったと言われています。幕末から明治にかけては劇作家河竹黙阿弥や勝海舟親子、落語家の初代三遊亭円朝などの著名人が住んでいましたが、顔ぶれを見るに権威の側でなく、野にあって自己主張をするようなタイプの方々というところ。気取りのない、ざっくばらんな街の雰囲気をしのばせます。
総武線と平行して、南口側を走る京葉道路。通り沿いにはマルイやオフィスビル、飲食店が並ぶ
往時からの、猥雑さのある雰囲気を残しているのは駅の南口側。住所では江東橋というエリアです。駅前のロータリー周辺にはマルイ、スーパー西友を中心とする商業施設LIVIN錦糸町、映画館、温泉などの娯楽関連の複合施設東京楽天地などといった大型ビルが並び、線路と平行しては飲食店街も。
創業60余年という老舗魚寅。南口を出ると常に行列が見えているので、すぐ分かるはずだ
ロータリーに面して2店舗を構える魚寅は魚屋さん業界では知る人のいない有名店で、魚屋さんの子弟が修行にする店。その辺りにもこの街の歴史を感じます。ちなみにこの店の名物はマグロ、たこのブツで行列は必至。個人的には焼き魚の安さにいつも驚かされます。
京葉道路の1本裏手には飲食店、風俗店、ホテルなどが集まるエリアがあり、ちょっと独特な雰囲気がある
ロータリー周辺だけでも十分賑やかな雰囲気ですが、錦糸町らしい猥雑さを感じるのは駅のロータリーの向こう、総武線と平行して走る京葉道路の裏手エリア。ウインズ錦糸町(JRAの場外馬券売り場)が聳え立ち、その周辺には飲食店、風俗営業店が密集、さらに南側にはホテル街が広がる一大歓楽街なのです。ちょうど取材に行ったのが休日で競馬開催日だったせいか、ウインズ周辺はたくさんの人出で、裏の飲食店街には昼から日本酒、ビール片手に予想に余念の無い人たちも。率直なところ、競馬好きというのでなければ、あまり楽しめる雰囲気ではないかもしれません。
タイ料理のランチ。アジアの食であればかなりの種類が揃うので、グルメにはウレシイ街のひとつ
この一角も含めて、錦糸町でここ10年ほど増えているのが韓国、台湾、タイ、ベトナムその他のアジア料理店。もちろん、それはそうした国の居住者がこの街に増えている結果でもあり、京葉通り沿いにはタイ教育・文化センターなる場所も見かけました。
横十間川沿いにそびえる都立墨東病院。左手に見えているのが建設中の東京スカイツリー
また、南側にはこのエリアでは最大規模の都立総合病院である墨東病院があります。ここは東京都が都内3ヵ所に開設した東京ER(総合救急診療科)のひとつで、救急医療体制はもちろん、感染症医療、難病医療、周産期医療などにも高い評価がある病院。近くにあれば安心と思う方もいらっしゃるかもしれません。
首都高速7号線はこのエリアでは堅川上を走っており、川沿いには緑道が設けられている
さらに南には総武線と平行して首都高速7号小松川線が走っており、駅前から伸びる四ツ目通りと交差する場所には錦糸町出入り口も設けられています。車利用にも便利というわけです。
続いて再開発で変化した
錦糸町駅北口側を見て行きましょう。