おいしいものを食べることは本能的な欲求で、生きていくために本来そなわった生命活動の本質みたいなものです。そのため、口にした時は誰もが幸福感を感じます。今回はおいしいものを追求する美食の意識について、よい面と悪い面を解説していきます。

おいしいものを食べると免疫が活性化する

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大阪大学大学院人間科学研究科によるラットの実験(参考資料1)をもとに作成


大阪大学大学院人間科学研究科が、2006年にラットによる実験を行いました(参考資料1)。

ラットにノンカロリー甘味料で味付けしたおいしいエサと、体には無害な苦味をつけたまずいエサと、何も入れない普通のエサを食べさせ、その後体の免疫機能の指標であるインターロイキン(多いと免疫活性大)と、ストレスの指標であるコルチコステロン(ストレスが強いと増加)を測定しました。

その結果、ノンカロリー甘味料のおいしいエサを食べた30分後、免疫の指標となるインターロイキンの活性が有意に上昇したそうです。また、苦味をつけたまずいエサの方では、ストレスを示すコルチコステロン値が上昇していたとのことです。

まずいエサを食べた後にストレスを感じることは、ものすごく共感できますが、おいしいエサで免疫が活性化するとは驚きです。

甘いものはメスをとりこにする

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甘いものは女性のラットもとりこにする


また、同じ2006年の大阪大学大学院人間科学研究科の実験(参考資料1)で、ラットを使って甘味嗜好性に性差があるかを調べています。

2つのビンに蒸留水と砂糖水(ショ糖)を入れて一晩置き、次の日によく飲んでいる方をみれば、どちらを好むかがわかるという実験(ニ瓶法という)を行いました。結果として、オスメス共に蒸留水に比べて砂糖水を多く飲むのですが、飲んだ量の割合としてメスの方が有意に多いことがわかったそうです。

これに関連して、脳内の至福感と密接な関係を持つモルヒネ類似物質に対し、オスに比べてメスの方が感度が良いのではないか、と考えられる実験結果も得られたとのことです。

少なくとも甘いものは女性のラットをとりこにすることが証明されました。

食べすぎのメカニズム

人間の食料として精製した砂糖(ショ糖や果糖など)は、長い歴史においてつい最近まで存在しなかったものです。

ラットやヒトを含めた多くの動物において、甘味に対する味覚受容体は砂糖の少ない太古の時代の環境で進化してきました。そのため、高濃度の甘味物質に対して適応できていない部分があります。

現代では日常的になっていますが、砂糖が豊富な食べ物によって味覚が過剰に刺激されると、脳において過剰な報酬シグナルとなります。そして自制のメカニズムを超えてしまい、中毒になってしまうのです。

いくらおいしいからといって、食べすぎは他の要因とも重なり、肥満の原因となります。

まとめ

おいしいものを食べることは本能的な欲求で、生きていくために本来そなわった生命活動の本質です。そう考えれば、快感をもっと欲しいという前向きの姿勢(意欲)は体にもメリットをもたらし、それが免疫の活性化や脳への刺激などの効果として実験で示されつつあります。

しかし、おいしいがゆえの食べすぎは他の要因とも一緒になって、肥満の原因となり健康への逆効果となります。おいしい物を食べ活力をつけながら、しかも、ほどほど感でブレーキ……。全てに通じる極意のような気がしますが、がんばってトライしたいものです。


<参考資料>
1.おいしさの科学:その重要性と脳のしくみ(PDF)
大阪大学大学院人間科学研究科行動生理学研究分野
ネスレ栄養科学会議

2.Intense sweetness surpasses cocaine reward.(強い甘味はコカイン報酬に勝る)PLoS One. 2007 Aug 1;2(8):e698.


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